ア・クルエル・ナイト・ウィズ・レイジング・フォース・フロム・ソー・サイレント・フィアフル・レルム #3

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ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

【ア・クルエル・ナイト・ウィズ・レイジング・フォース・フロム・ソー・サイレント・フィアフル・レルム】#3

2015-01-12 22:01:23
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

(これまでのあらすじ:他者の精神をハックするユメミル・ジツの使い手、シルバーキーは、ドラゴン・ニンジャとともに、現世とオヒガンの狭間に浮かぶキョート城へ潜入した。シルバーキーの身体は失われており、他者に寄生せねば生きられない状態だ。この状態を脱し、己の身体を取り戻したいのだ)

2015-01-12 22:05:05
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

(キョート城には滅びたはずのザイバツ・シャドーギルドの残党組織がいまだ在った。そしてその頭目はダークニンジャだという。ナムサン!ダークニンジャは暗黒の闘争の果てに、今や一国一城の主となっていた!ザイバツのニンジャ達が城へ潜伏したドラゴン・ニンジャを追う!)

2015-01-12 22:07:37
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

(ドラゴン・ニンジャは城の深部に身を隠し、追跡を逃れた。では、シルバーキーは?彼の精神は、死亡したザイバツ・ニンジャ、エンブレイスの中に囚われてしまった。エンブレイスとして蘇った彼は、ザイバツの戦士として振る舞わねばならないのだ。脱走の機会を伺う彼だが、早速スパイ疑惑がかかる)

2015-01-12 22:10:20
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

(身の潔白を証明する成り行きから、彼は城内の反乱軍を制圧する斥候部隊に立候補せざるをえなかった。これから彼はザイバツの精鋭とともに反乱軍と戦い、隙を見てザイバツから脱走し、ドラゴン・ニンジャと合流し、己の身体を取り戻す方法を発見せねばならない。無理では?)

2015-01-12 22:13:23
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

ところどころ破砕し、蜘蛛糸や埃にまみれた巨大ステンドグラスのニンジャ神話絵図が、小休止を取る二人のニンジャを見下ろしていた。荒れ果てたこの礼拝堂跡にあって、彼らはいかにも頼りなく、打ちひしがれて見える。一人は両腕をサイバネ置換した男のニンジャ。もう一人は赤い装束の女ニンジャだ。1

2015-01-12 22:21:54
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

サイバネ腕のニンジャ……即ちドモボーイは、携帯食料をボソボソと噛み、傍らの女ニンジャを盗み見る。女ニンジャはアグラ・メディテーションの最中だ。目を閉じ、深い呼吸を繰り返している。彼女こそがドラゴン・ニンジャ。平安時代に既にこの世に在り、今も在る、伝説的ニンジャその人なのだ。2

2015-01-12 22:26:19
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「スウーッ……ハアーッ……」ドラゴン・ニンジャのアグラ呼吸は、ドモボーイの知らぬ風変わりなザゼンだった。その背からは寒空の下の焼け石じみた薄い煙が立ち昇り、深い一呼吸一呼吸が重なるほどに、彼女の内なる輝きが増していくかのように思われた。ドモボーイは落ち着かなげに周囲を見渡した。3

2015-01-12 22:32:42
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

一介の新米ニンジャにすぎぬドモボーイが、ドラゴン・ニンジャの伝説的チャドー呼吸を知らぬのも無理はない。それでも、この呼吸がもたらす驚異的な治癒力の一端は、いやでもわかった。「その……ドラゴン・ニンジャ=サンよォ」ドモボーイは畏怖を振り払い、声をかけた。4

2015-01-12 22:36:04
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「ギルドへの帰還手段を失いましたね?」ドラゴン・ニンジャは目を開いた。ドモボーイは狼狽えた。「そんな事は」「見ていれば、わかります」「なんていうか……城の構造がだな」「責めてはいません」ドラゴン・ニンジャはアグラを解き、立ち上がった。「この地は捻れていますし」「まあ、そうだよ」5

2015-01-12 22:41:19
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「責めてはいません。捻れているとはいえ、この城の構造について、私は貴方よりも詳しい筈です」「何だよ?それじゃ、アンタが俺を案内したってよかったろ」「言うに事欠いて……」「だってよォ」「どちらにせよ、私も、まだあなたについてギルドへ向かうと決めたわけではありません」 6

2015-01-12 22:45:45
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

ユカノはニンジャステンドグラスを一瞥し、歩き出した。ドモボーイが慌てて続く。「そうなのか?俺達はもうバディだぜ。一緒に戦ったんだ。イクサを乗り越えた!お前がギルドに来りゃあ、俺はあるじから認められて、イサオシが……オイ!逃げたら承知しねえ」「まあ」ドラゴン・ニンジャは苦笑する。7

2015-01-12 22:49:20
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「何処に行く気だ。許さんぞ」「大人しく貴方に付き合っていても、同じ区域を堂々巡りするだけだとわかりました」「何だと」「望み通り、私が先導します」ドラゴン・ニンジャは振り返らず言った。「ついてらっしゃい」「ギルドがわかるのか」「ギルドは後です」「何だと」「聞き返すのをやめなさい」8

2015-01-12 22:54:57
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「そんな事言ったってよォ」「ここからならば、ギルドよりも、あちらの方が近い」とドラゴン・ニンジャ。「実態を知る価値がある」「オイまさか」ドモボーイは鼻白んだ。「メイルシュトロムのアジトに行くッてのか?ふざけるな、俺はアンタを……」「イクサ自慢なのでしょう?その力を見せればよい」9

2015-01-12 23:02:51
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「簡単に言うんじゃねえ!せっかくさっき追手を撒いたッてのに!勇気と蛮勇は違うぞ!ミヤモト・マサシ曰く……」ドモボーイは足を速めるドラゴン・ニンジャを追う。「冗談です」彼女は壁の隅で身を屈め、床の窪みに指を差し入れた。「正面から戦いを挑んでどうします」ガゴン……壁の奥で駆動音。10

2015-01-12 23:07:28
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「オイ。何しやがった」「ここ数日、私はあなた方やメイルシュトロムとやらの追跡をやり過ごしながら、この城の歪みの構造を調べていました。城内の仕掛けの中で、いまだ無事に動くものも」ゴリゴリと石臼めいた音が響き、突き当りの壁が沈み込んだ。奥には「松の木」とショドーされたノレン! 11

2015-01-12 23:13:27
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「何だと?」ドモボーイは息を呑んだ。ドラゴン・ニンジャはノレンを押し上げ、くぐり抜ける。「いわば隠し通路。有事に備え、こうした通路が設けられています」「アンタ、詳しいじゃねえかよ」「そのようですね」彼女は肩をすくめた。狭い通路の先、床に縦穴あり。鉄棒が真っ直ぐに降りている。12

2015-01-12 23:21:27
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「畜生……オイ、是非ともアンタはギルドに連行しなきゃならンぜ」ドモボーイは呻いた。「こういうショートカットの情報はよォ……まだまだ完全じゃねえから……こういう通路を使えば奴らにアンブッシュが……」ドラゴン・ニンジャは鉄棒に掴まり、スルスルと降り始めた。「オイ!下に何があるか」13

2015-01-12 23:24:24
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「それを確かめるのです……」闇の下から声が返った。ドモボーイは舌打ちし、多少の躊躇の後、彼女に続いた。ドラゴン・ニンジャをむざむざ逃す訳にはいかぬ。そもそも彼自身、あまり先の事をくよくよ思い悩むたちでもないのだ。せいぜい彼女の知識を利用し、重大な情報を持ち帰り、イサオシだ!14

2015-01-12 23:27:25
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

シルバーキーはスパルトイの後ろ姿を憂鬱に見ながら、闇に浮かぶ階段を注意深く一段一段降りてゆく。朽ちた階段の幅はタタミ一枚分も無く、手摺も無い。下には見通せぬ闇が広がり、唸り声にも似た風の音が聴こえてくる。(どうなってやがるンだ、ここは)「何か?」すぐ後ろでディミヌエンドの声。16

2015-01-12 23:37:53
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

シルバーキーは狼狽をこらえた。(さっさと進めッてんだろ?わかっているッての)振り向いて悪態をつくことができれば、どんなにか良いだろう。前方、スパルトイはどんどん階段を降り、闇の中に消えてゆく。隊長のミラーシェードは、もっとずっと先だ。(慣れてねェんだ!俺は。慣れたくもねえし)17

2015-01-12 23:40:31
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

彼が決してしんがりに置かれないのは、やはり用心からという事だろう。脱走を試みようとしたり、不審な行動を取ったりすれば、ディミヌエンドが動き、すぐさま首を刎ねるというわけだ。まずは信頼を勝ち得ねばならない。(なんて事をしてくれたんだ。キャプスタンといい、このエンブレイスといい)18

2015-01-12 23:45:10
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

努力して少しでも速く降りようとしながら、シルバーキーは呟いた。「この闇。浮かぶ階段。いかなる力によって、こうしたケオスが生み出されたか、考えを巡らす事はないか。ディミヌエンド=サン」「あまり」「うむ」シルバーキーは食い下がる。「あまり、という事は、多少はある。オヌシといえど」19

2015-01-12 23:49:46