「企業最大の費用は人件費ではありません」樋口耕太郎氏のツイートから

トリニティ株式会社代表取締役社長、樋口耕太郎氏の「企業最大の費用」に関するツイートをトゥギャりました。
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樋口耕太郎 @trinity_inc

企業最大の費用は人件費ではありません。経営者のエゴです。 RT @northfox_wind 元友人の上場企業の社長に聞かせてやりたいな~ RT @trinity_inc: たった一回の・・資本調達のために・・莫大な費用を払い続ける・・株式上場ほど高価なお金は存在しない。

2010-12-09 11:25:50
樋口耕太郎 @trinity_inc

企業最大の費用(経営者のエゴ)が、一般的な企業金融論で全く語られていないのは、とても不幸なことです。例えば、私が04年に買収したサンマリーナホテルは、当時築20年。建物躯体の経済耐用年数が仮に40年とすると、ホテルとして経営できるのはその時点であと20年ということになります。

2010-12-09 11:51:09
樋口耕太郎 @trinity_inc

当時の取得額は約30億円。単純計算で、この投資額を経済耐用年数で回収するためには、少なくとも年間1.5億円(30億円÷20年)の税引後利益を生み出さなければ、事業そのものが持続性を持ちません。

2010-12-09 11:55:13
樋口耕太郎 @trinity_inc

したがって、事業再生の第一のハードルはこの利益水準をいかに確保するかということでした。実質的に10年以上赤字経営だったサンマリーナは1年そこそこで2.3億円のキャッシュフローを生み出すようになり、巡航速度を取り戻し、「本当にいい会社」になるための第一歩を踏み出します。

2010-12-09 11:58:48
樋口耕太郎 @trinity_inc

ところが、資本の原理に基づくと、2.3億円のキャッシュフローを生む「金融資産」は、とてもいい値段で転売可能です。私はホテルの売却に反対したため、臨時株主総会で解任され、サンマリーナは買収から僅か2年、60億円で外資系に転売されました。問題はその顛末よりも、その後の従業員です。

2010-12-09 12:02:13
樋口耕太郎 @trinity_inc

同じ部屋数、同じ従業員、同じレストランで同じ顧客にサービスを提供し続けることに全く変化はありませんが、60億円で売却されたその日から、投資家が回収しなければならない資本の額は倍増します。すなわち年間3億円の利益を回収しなければ、いずれどこかで持続性を失うということです。

2010-12-09 12:04:57
樋口耕太郎 @trinity_inc

年間1.5億円を稼ぐための売上が20億円だとすると、年間3億円を稼ぐために売上を40億円にすることは不可能ですので、当然にして人件費が徹底的に削られます。資本家にとっての事業再生は、従業員にとっての悪夢以外の何者でもありません。

2010-12-09 12:07:49
樋口耕太郎 @trinity_inc

資本家は、30億円の利益を何の疑いもなく、「事業再生」の対価として自分の懐にするのですが、その本質は、250人の従業員が今後20年、(年間14万人として)280万人のお客様にお仕えすることの対価を現在価値にしたものだという真実は全く語られることはありません。

2010-12-09 12:12:32
樋口耕太郎 @trinity_inc

事業が成功するほど(回収するべき)簿価が上がり、従業員の負担が増す。とても皮肉なことですが、ホテルの従業員は(ホテルに限りませんが)、自分と仲間の報酬と職を減らすために、日々相当な努力を強いられるという構造の元におかれているのです。

2010-12-09 12:14:34
樋口耕太郎 @trinity_inc

ホテルの事例はとてもわかりやすいのでよく引用するのですが、企業の株式上場における企業金融的なメカニズムはこれと全く同じです。株式上場は経営者の夢かもしれませんが、従業員にとっては「仕事のハードルが著しく高められる恣意的なイベント」以外の何者もありません。

2010-12-09 12:18:12
樋口耕太郎 @trinity_inc

新規上場の注目株、高い初値、盛んな出来高、飛躍的な利益成長予想。これらはすべて、30億円のサンマリーナホテル(未公開企業)を60億円で売却(株式上場は実際、自分の会社を株式市場を通じて他人に売るということです)する経済効果と全く同じです。

2010-12-09 12:22:42
樋口耕太郎 @trinity_inc

経営者は創業者「利得」を手にして、成功者として讃えられ、車を買い替え、銀座に繰り出し、自分の写真が表紙になった本を出し、雑誌のインタビューに頻繁に登場しますが、この人のエゴを満たすために何百という従業員が負担している莫大なコストを自覚するべきでしょう。

2010-12-09 12:25:11
樋口耕太郎 @trinity_inc

経営者のエゴが企業にとってどれだけ大きな費用であるか、簡単に計算できます。例えば、5億円の当期利益の企業がPER20倍、益利回り5%(当期利益÷時価総額)で上場すると、時価総額は100億円。

2010-12-09 12:29:19
樋口耕太郎 @trinity_inc

投資家がこの会社に求める総合利回りが10%だとすると、経営者は(自覚しているか否かに関わらず)毎年5%の成長(5%成長+5%益利回り=10%総合利回り)を株式市場に約束して上場していることになります。

2010-12-09 12:30:56
樋口耕太郎 @trinity_inc

この経営者のナイーブな「約束」によって、従業員が将来30年間で生み出すことを運命付けられた利益の合計額は、332億円。経営者が恣意的に決めた「5%成長」の一言には332億円の値札が付いているのです。

2010-12-09 12:33:01
樋口耕太郎 @trinity_inc

さて、時間の針を1月戻します。上場を控えたこの経営者に、証券会社の担当者が「アドバイス」しています。「社長の実力を持ってすれば、5%成長なんて余りに弱気じゃないですか。御社のビジネスは時流に乗っていますし、他社よりずっと競争力があります。もっといい値段で上場しましょう。」

2010-12-09 12:36:04
樋口耕太郎 @trinity_inc

「社長、それよりもなによりも、社員が上場を決断したのは、従業員のためだとおっしゃっていたじゃないですか。懸命にがんばっている従業員に報いるためにも、彼らがこの会社を誇りに思うためにも、この程度の株価ではだめです。」

2010-12-09 12:38:31
樋口耕太郎 @trinity_inc

かくして、この経営者は企業の事業計画を強気に修正して、成長予測を2.5%に書き換えます。

2010-12-09 12:42:00
樋口耕太郎 @trinity_inc

同じ企業、同じ経営者、同じ従業員、同じ顧客。投資家の期待利回りが同じ10%(成長率7.5%+益利回り2.5%)だとすると、上場株価は実に200億円(5億円の当期利益÷益利回り2.5%)と評価されます。社長は創業者利得を増やし、証券マンは社長から感謝され、社内では出世して行きます。

2010-12-09 12:43:11
樋口耕太郎 @trinity_inc

さて、この経営者が「従業員の誇りのために」行った利益予測の「上方修正」によって、従業員が将来30年間で生み出すことを運命付けられた利益の合計額は、332億円から、実に517億円に上昇します。「誇り」のコストは185億円。

2010-12-09 12:46:22