Purple ーBirthday－

pe-ko @Peko8_m

【ハッピーバースデー信五】❶ 誕生日の前夜に、彼女からメールが入ってん。 信ちゃん、お仕事お疲れ様。 明日は33歳の誕生日ですね。 そんな信ちゃんの願いごといっぱい聞いてあげたいから、願いごと考えといてね。 「はぁ？願いごとぉ？」 ワガママ聞いたるって認識で、えぇんかな？

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❷ うーん。いざそう言われると、出てこぉへんし、俺…多分、なんでもえぇよって普通に言ってまうからなぁ。 多分、それをわかってて、あいつ、今メールして来たんやろ。 「なぁ、チー？願いごとやって。何がえぇかな？」 「ニャーッ」 「はい、はい、お前に聞いてもわからへんよな？」

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❸ うーん。今、特にあいつに叶えてもらいたいようなこともあらへんし。 むしろ、俺が叶えてやりたいあいつの願いごとの方が多いくらいやのに。 とりあえず、明日会うまでには、なんか思いつくやろ。 そんなこと思いながら、眠りについた。 pic.twitter.com/ym3gScs1bn

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❹ 翌日、彼女に会うと、真っ先に… 「誕生日おめでとう。メールの考えてくれた？」 「んー。何も思いつかんかったゎ」 「えー。だから、わざわざ前持って聞いたのに！」 って、ふくれっ面。 最近、お前もようするようになったなソレ。 pic.twitter.com/tOSh77JHMQ

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❺ 「お前さぁ、そんなんしても、可愛ないで？」 って思わず笑ってしまう。 「信ちゃんの真似だもん、普段こんなことしないもん」 「はい、はい、わかりましたよ…」 「そんなこと言って、全然、わかってないでしょ？」 「わかっとるがな？ホンマ、お前、可愛ないゎ。ほな、行くで？」

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❻ あいつの手を握って歩きだす。 「あ、そうや！思いついたゎ」 「何？なに？」 嬉しそうに俺の顔を覗き込んでくる。 「今日、1日、俺の言うこと、すること、文句言わずに付き合う」 「えっ？無理」 「そないなこと、ないやろ？」 pic.twitter.com/Ub9tHiZuSi

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❼ 耳元で… 「ベッドの上やったら、俺の言うことばっかり、聞いとるんやから、無理なことないやろ？行くで！」 「ちょ…っと、し、信ちゃん！」 赤い顔して反論出来へん彼女の手を引く。よく考えてみたら手を繋ぐの久々やなとか。 でも、結局、俺が彼女の言うことばっかり聞いとって。

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❽ 俺の願いごと叶えるって張り切ってたのに、肩透かしくらってる彼女。 しつこいくらいに、本当にないの？って聞いてくる。 きっと、いろいろ、こんなこと言われたら、どうしようとか考えてたんやろな… とか思うと、流石に1つくらいは願いごと言ってやらんと、あかんよなって思ってくる。

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❾ 気づけば、もう夜で… あいつが作っておいた料理を片手に改めて、お祝い。お酒も入って、それなりに、いい雰囲気で。 「ねぇ、本当にないの？」 と言う彼女に出した答え… 「来年の誕生日まで、待ってや、1年掛けて、じっくり考えとくゎ」 「それじゃ、プレゼントにならないよ！」

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10 また、俺の真似やっていうてる、ふくれっ面。 尖らせた唇を啄ばむようにキスをして、その膨れた顔もキスが深くなる度に何時ものあいつの顔に戻っていく。 唇を離して、眼をジッと見つめて… 「強いて言うなら…今日は、お前が上な？」 pic.twitter.com/KgJywt1SDs

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1 あれから、どれくらい経ったんだろう。仕事が忙しくなって、私の隣じゃなくて、TVや雑誌で見かけることの方が増えて、すれ違ってばかりで。 気がついたら、連絡も取らなくなっていて……。多分……、自然消滅したと思う。 向こうはどう思ってるのか、私にはこれっぽっちも分からないけれど……

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2 もしかしたら、自然消滅したと思ってるのは私だけで。いきなりまた、現れるかもしれない。 なんて、無駄な期待してるから、誕生日にケーキを買ってしまう。 ｢すみません、これでお願いします｣ ｢彼氏さんの誕生日ケーキ……ですよね？｣ ｢……あ、え……はい｣ と思わず返事をしてしまう。

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3 違うかもしれないけど。 ケーキを買ってるこの瞬間だけはいいよね？ ｢毎年、可愛い彼女に祝ってもらって、羨ましいなぁ。結婚とかしないの？｣ ｢どうなんですか…ね｣ ｢そんなこと聞かないの！お父さん｣ ｢や、でも、気になるだろ？｣ って言うケーキ屋さんの会話に苦笑いしかできない。

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4 ｢そういえば、あなたと同じ日に誕生日ケーキを買いに来る男の人がいるのよね｣ ｢あぁ、あの男前か……。たまにお昼の番組に出てる芸能人に似てる……｣ ｢そうそう、目がクリっとしてて、八重歯で……｣ ま、さか、ね…… ｢いらっしゃい｣ ｢すみません、ケーキ……｣ 声がする方を見る。

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5 ｢信ちゃん……？｣ ｢なんで、居るの？しかも、それ、ひとりで食うん？相変わらず体型に合わずよぅ食うよな｣ って顔をしわくちゃにして、ガハガハ笑ってる。やっぱり、信ちゃんだ……って思うと、胸の奥が何だろう。キュってなる。 ｢なんでって……｣ ｢あら。2人とも知り合いだったの？｣

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6 ｢俺の……彼女なんですゎ。ただ、なかなか会えなくて。ホンマに俺、ここのケーキ好きやから、会えへん誕生日の時に買いに来とって。今年は久々にケーキ1こで済みそうですゎ！｣ ちょっと待って？別れたんじゃないの？私たち…… 驚いた顔をして、信ちゃんを見るけど、そんな私にお構い無しで。

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7 お店のおじさんとおばさんが信ちゃんと話してる姿をボーッと見てると、 ｢ほな、帰んで？｣ 帰るって何処に？どちらかの家？ それとも、お互いの家の間あたりで別れるのかな？もう少し一緒にいたいな…… いろんなことを考えながら、店を出て無言のまま、信ちゃんの後ろを付いて、只管歩いた。

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8 気がつくと、昔よく2人で来ていた公園の近くで。私の方を振り向いた信ちゃんの顔が街灯に照らされる。 ｢寒いけど……。話しせぇへんか？｣ ｢……う、うん｣ 公園のベンチに腰掛けるとお尻から、寒さが伝わってくる。 よく見ると信ちゃんの鼻先も赤くて、息も白い。 ｢このケーキ、俺の？｣

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9 ｢うん、信ちゃんの｣ ｢店のおっちゃんらが、彼氏へのやって言うてたけど、｣ ｢会わなくなってから……連絡取らなくなってから……かなり経つけど。私はそう思ってた。迷惑だよね。わけのわからない一般人が彼女気取り｣ ｢……そんなことは、あらへんよ？せやけど……なんで、いきなり……｣

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10 ｢連絡くれなくなったん？｣ ｢……じゃあ、聞くけど、なんで、信ちゃんは私に連絡してくれなくなったの？｣ ｢……お前も同じ理由やろ？｣ 慣れない仕事が忙しくて、お互いの時間があっても、私はあの時、愚痴ばかり零してた。それは、信ちゃんも同じで。 一緒に居たいけど、辛くなって……

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11 居心地の良かったはずの場所が、気づいたら、居心地悪くなってた。 だから、少しずつ距離が出来て……。 でも、いつもTVや雑誌で観ていたはずなのにこうして会うと、やっぱり恋しく感じる…… ｢辛い時に、傍にいてやれなくてごめんな｣ そう言って、信ちゃんに頭をクシャっと撫でられた。

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12 ｢なんで、信ちゃんが謝るの？それは私だって同じなのに……｣ ｢何でやろ……？ちょっとは丸くなったんとちゃう？それに、お前の好きなとこまで、嫌いになりたなくて、少しだけ離れた言うのもあったしな｣ 信ちゃんもまだ私のことを好きでいてくれてるのかな？なんて、淡い期待をしてしまう。

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13 ｢距離置こうとしてたら、段々となんか、連絡しづらなってってん。やから、偶然装って、お前が好きやって言うてたあのケーキ屋行ったら、もしかしたら、会えるんとちゃうかな？って期待して、行ってた部分も正直あったって言うたら、どうする？俺、計算とかでけへん割には一生懸命考えてん……｣

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14 ｢それって……好きでいてくれてる……ってこと？｣ 答えを聞くのは、少し怖いけど…… ｢あぁ……まぁ、そういうことやんな？お前はどうなん？俺の誕生日ケーキ買ってくれとる時点で、いい返事しか、聴ける気しかせぇへんけどな｣ ｢どっからくるの？その自信（笑）｣ ｢えぇやんか。別に｣

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15 ｢せやけど……ホンマに俺のこと好きなら、また、やり直さへんか？｣ そう言って、私の顔を覗き込んでくる。 ｢私も信ちゃんと一緒に居たい｣ ｢よっしゃ！じゃあ、俺ん家行くか。ほんで、俺の誕生日祝って｣ そう言って、信ちゃんに繋がれた手。この手が2度と離れることありませんように。