鋼屋ジン氏　刀剣乱舞ショートストーリー／『鬼の記憶』

鋼屋ジン @J_hagane

「綺麗とか、言うな」

鋼屋ジン @J_hagane

■回想『鬼の記憶』

鋼屋ジン @J_hagane

爪、突き刺さり。 肌、引き裂かれ。 流れる赤い血、ひとすじ。

鋼屋ジン @J_hagane

傷、刻む。 傷を、つける。 傷物にする。

鋼屋ジン @J_hagane

あいつが、見つめている。 貼りついた厭らしい笑み。 嬲るように睨め回す視線。 それでいて清んだ瞳は、こちらを見透かすようで。

鋼屋ジン @J_hagane

――不愉快な奴。

鋼屋ジン @J_hagane

それがあいつに対する最初の、 そして今も変わらない印象だ。

鋼屋ジン @J_hagane

審神者というらしい。 俺たち刀剣と想いを通わせ、心を目覚めさせ、肉の器を与える者。

鋼屋ジン @J_hagane

審神者は俺たちに云う。 斬れ、と。

鋼屋ジン @J_hagane

斬れ。斬れ。斬れ。 敵を斬れ。斬って、殺せ。

鋼屋ジン @J_hagane

それはそれは、嬉しそうにいう。 大義名分は、すべておれにあるのだと。 闘争の限りを尽くして血に酔うのも。 綺麗どころを集めて淫に耽るのも。

鋼屋ジン @J_hagane

こいつは人間の屑だ。

鋼屋ジン @J_hagane

こいつは純粋に蹂躙することを愛している。 傷つけ、穢すことを愛している。 もしかしたら、その逆も。

鋼屋ジン @J_hagane

犯して、踏みにじる。 心も、肉も。

鋼屋ジン @J_hagane

人の心を持つならば。 肉の器を持つならば。 焦がれ、欲し、妬み、狂う。 それなくして何がひとのかたちか、とあいつは嗤う。

鋼屋ジン @J_hagane

――だが、その逝き着く果ては、鬼、だろう。

鋼屋ジン @J_hagane

精一杯の悪意を込めて、俺はいう。 言の葉を刃として、歯を立てる。

鋼屋ジン @J_hagane

するとあいつは、きょとんと、あどけない顔で惚けて。 やがて、やはり、ひどく嬉しそうな笑顔で、こう告げるのだ。

鋼屋ジン @J_hagane

――その時は、お前が鬼（おれ）を斬ってくれるのだろう？

鋼屋ジン @J_hagane

……俺は。 怒るよりも、ただ呆れてしまい。 だから、ただ、こう言い返すだけなのだ。

鋼屋ジン @J_hagane

「……化け物斬りの刀そのものならともかく。 　写しに霊力を期待してどうするんだ」

鋼屋ジン @J_hagane

廻り廻りて　輪廻を離れぬ 　　　妄執の雲の　塵積もつて 　　　　　山姥となれる　鬼女が有様

鋼屋ジン @J_hagane

（了）

鋼屋ジン @J_hagane

勢いで書いてしまった以上、書ききった。

鋼屋ジン @J_hagane

審神者の性別には一切言及せぬ。