平川哲生さんが語るACTF「ペーパレス作画の現状と未来予想」雑多

数々のアニメの原画・演出などを務めた平川哲生(@bokuen)さんがACTFに参加した雑多をTwitterに投稿しました。
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平川哲生 Tetsuo Hirakawa @bokuen

2月14日に開催されたアニメーション・クリエイティブ・テクノロジー・フォーラム(ACTF)、「ペーパーレス作画の現状と未来予測」に参加しました。これから、そのときの雑感を書きます。

2015-02-19 01:43:51
リンク twitter.com 平川哲生(@bokuen)さん | Twitter 平川哲生 (@bokuen)さんの最新ツイート。アニメをつくっています。だいたい演出家、しばしばアニメーター、ときどき脚本家。きまぐれリプライ、ご容赦ください。メール bokuen@gmail.com
リンク Wikipedia 平川哲生 平川 哲生(ひらかわ てつお、1979年11月13日 - )は、日本のアニメーター、アニメーション演出家。千葉県出身。 マッドハウスに入社し、のちフリーランスとして様々な作品に参加する。 茂木仁史の推薦で長編アニメ『川の光』の監督に抜擢される。同作品で第18回アース・ビジョン地球環境映像祭子どもアース・ビジョン賞、第16回上海テレビ祭銀賞(海外アニメーション部門)、アメリカ国際ビデオ・フィルム祭2010のBest of Awards(エンターテイメント部門)及びGold Camera賞を受賞。テレビ再放送

↑手がけた作品などはこちらから

平川哲生 Tetsuo Hirakawa @bokuen

ACTFの会場は、立ち見や補助席が出るほどの大混雑でした。会社のえらい人たち、制作、演出、キャラデから超ベテラン動画検査までのアニメーター全般をお見かけしました。作画のデジタル化への期待がうかがえます。

2015-02-19 01:44:33
平川哲生 Tetsuo Hirakawa @bokuen

ポイントは「会社のえらい人たち」と「制作」が多かったことです。ペーパーレス作画はアニメーターのあれこれが話題になりやすいんですけど、パソコンを買ったり、タブレットを買ったりの経営的な判断と、制作管理の問題が、実際かなり重要なのです。

2015-02-19 01:45:21
平川哲生 Tetsuo Hirakawa @bokuen

制作的には、ペーパーレス作画をどう管理するか、がポイントになるようです。上がりはデータになるので、カット袋の場所で把握していたチェック段階が、データのみになる。すると、いまカットはどの段階にいるのか、演出・作監・総作監・監督のどこでチェックされているのかの把握がむずかしくなる。

2015-02-19 01:46:12
平川哲生 Tetsuo Hirakawa @bokuen

ちなみに私が監督したOVA『堀さんと宮村くん#3』では紙とデジタルのふたつの作画があり、制作管理はタツノコデジタル部のやり方を参考にさせてもらいました。たとえばファイル名のつけ方に工夫があります。『堀さんと宮村くん#3』のC-100の場合でいうと……

2015-02-19 01:46:43
平川哲生 Tetsuo Hirakawa @bokuen

hm_03_100(原画レイアウト上がり) E_hm_03_100(レイアウト演出チェック済み) S_hm_03_100(レイアウト作監済み) G_hm_03_100(原画上がり) GE_hm_03_100(原画演出チェック済み) GS_hm_03_100(原画作監済み)

2015-02-19 01:47:04
平川哲生 Tetsuo Hirakawa @bokuen

このように上がりのデータを「チェック段階_タイトルの略称_話数_カット番号」のファイル名にします。こうすれば、ファイル名でソートするだけで、カットがどの段階にいるかが把握しやすいわけです。この管理方法を考えたタツノコの方々は賢いですね、ほんと。

2015-02-19 01:47:58
平川哲生 Tetsuo Hirakawa @bokuen

上がりのファイルはDropboxの共有フォルダに、日付つきのフォルダをつくって入れてもらう。その後のファイル移動は担当制作のみが行なう。制作がローカルフォルダに保存したら「査収済み」という別のフォルダに移動する……などなど、ここでは書ききれないですが、管理方法が工夫されています。

2015-02-19 01:48:53
平川哲生 Tetsuo Hirakawa @bokuen

各社の制作さんは、ペーパーレス作画の制作管理に関して、ぜひタツノコにヒアリングしてください。なんとなく友達づてに訊く、じゃなくて、正式に。実際に勉強になりますので。

2015-02-19 01:50:07
平川哲生 Tetsuo Hirakawa @bokuen

いまからデジタル作画をおぼえようというアニメーターさんへ。作画アプリケーションはいくつかありますが、どれも高価ですよね。私のおすすめは、今年実装される予定のアニメーション機能を追加したCLIP STUDIO PAINT。これ業界的なスタンダードになる確率は高いです。

2015-02-19 01:51:18
平川哲生 Tetsuo Hirakawa @bokuen

いまのところ、これが安全牌。しかし、ACTFでも話題になりましたが、ひとつのアプリケーションに特化してしまうと、もし使えなくなった場合に困ります。できれば2つ以上のアプリ習熟がベターです。みなさんご存知の「特殊化の果てにあるのはゆるやかな死よ」ってやつです。

2015-02-19 01:52:16
平川哲生 Tetsuo Hirakawa @bokuen

CLIP STUDIO PAINT以外のアプリは自由に、好きなものを選んで大丈夫だと思います。どうせ美術チェック等で使わざるを得ないAdobe Photoshopのエクステンション機能で作画するも良し、タツノコに知り合いがいるならAdobe Flashもいいかもしれません。

2015-02-19 01:53:42
平川哲生 Tetsuo Hirakawa @bokuen

Adobe Flashを作画アプリケーションとして使う場合、りょーちもさんが開発した機能(Flash上ではコマンドと呼ばれます)が必須です。これがないと、はっきり言ってFlashは作画しづらい。りょーちもさんのお仕事を手伝うなどして、ぜひ手に入れましょう。

2015-02-19 01:54:42
平川哲生 Tetsuo Hirakawa @bokuen

アニメーション機能を追加したCLIP STUDIO PAINTが業界的なスタンダードになる確率が高い、と書いた理由は、以下のとおりです。

2015-02-19 01:55:15
平川哲生 Tetsuo Hirakawa @bokuen

また、われわれは職務上、映像作品を安定して供給する必要がある。その供給がアプリケーション的なトラブルで妨げられることはあってはならない。その点でCLIP STUDIO PAINTは、国内開発、日本語対応可能、トラブルシュートが容易という地理的な面がとても大きい。

2015-02-19 01:56:07
平川哲生 Tetsuo Hirakawa @bokuen

いまのところTVPaint、Harmony、Photoshop、Flashなどの作画アプリには、これらのアプリを横断する共通フォーマットがなく、どれかを選ばなくてはならない。各社の連携が取れるアプリケーションがベストであることは言うまでもない。

2015-02-19 01:56:46
平川哲生 Tetsuo Hirakawa @bokuen

さらに、セルシスには日本のアニメーション制作に関するノウハウの蓄積が充分にある。使用者が多くアップデート時に要望が聞き入れられる可能性も高い。

2015-02-19 01:57:18
平川哲生 Tetsuo Hirakawa @bokuen

制作会社にとって作画のデジタル導入は、コスト面でも、環境整備に関しても、負担が大きい。となるとやはり、各社は安全牌のアプリケーションを選択するであろう。

2015-02-19 01:57:52
平川哲生 Tetsuo Hirakawa @bokuen

私はすでにAdobe Flashの使い方を習熟していますし、また個人的にTVPaintの描き味が好きで応援したいんですけども……CLIP STUDIO PAINTの優勢に変わりないかな、と思ってます。

2015-02-19 01:58:22
平川哲生 Tetsuo Hirakawa @bokuen

ACTFの会場に来ていた、会社のえらい方々にヒアリングしたんですが、みなさんとても冷静でしたね。デジタル化による大幅なコスト減は期待してませんし、楽になったらなっただけ時間を他のことに使うからスケジュール改善もあまり期待してませんでした。アニメーターの性質をよくご存知で……。

2015-02-19 02:01:54
平川哲生 Tetsuo Hirakawa @bokuen

ペーパーレス作画の制作管理に関してもうひとつ。ねこまたやさんが口をすっぱくおっしゃっているとおり、「紙→データ」と「データ→紙」に変換するスペシャリストがどうしても必要になります。この変換専用スタッフを用意できる会社が、これから生き残る会社であると断言してもいい。

2015-02-19 02:07:05