- dairokusendai
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蒸気機関車が一両。何両にも連なった貨物列車と、一両だけ客車をけん引して、青葉島鎮守府へと向かっていた。ガタンゴトン、ガタンゴトン、と船とはまた違った列車独特なリズムで客車にいる川内たちを揺らしながら海の上を走っていた。
2015-02-26 21:49:19蒸気機関車が海の上を走る。別にそれは珍しい事ではなくて、艦娘の為に開発された海上走行技術が、蒸気機関車に転用されただけである。と言っても、不思議なことにまだ蒸気機関車にしか転用は成功していない。
2015-02-26 21:54:16この蒸気機関車を護衛団の団長である川内は、真昼間だというのに、いや、真昼間だからだろうか? 座席に丸まってすやすやと眠っていた。向かいの席では副団長の大井と夕張がそれぞれ好き勝手に本を読んでいる。駆逐艦娘たちは、一つに固まってじゃれあっていた。
2015-02-26 21:58:45卯月は、その駆逐艦の集まりの中でもど真ん中に陣取って、得意げな顔で自慢話を披露していた。その内容は専ら、今向かっている青葉島鎮守府にいる加古の事であった。卯月は少し低い声で、格好つけながら 「ふふふ、愛しのハニーがうーちゃんの帰りを待ちわびているぴょん」 なんて言っていた。
2015-02-26 22:04:40しかし、さっきからずっと同じようなことを繰り返し言っているので、周りの反応は薄い。しかし卯月はめげない、くじけない、黙らない。 「このうーちゃんは郷にあいつを残してきたぴょん、だから……」 「もうすぐで到着だな」 「なんで長月はそうやって邪魔するぴょん!」
2015-02-26 22:07:37卯月は長月を揺さぶって長月に問いただすが、長月はなんでだろうなーととぼけて答えようとしない。そのまま話の流れも卯月の願いとは全く別のほうへと行ってしまったので、卯月は頬を膨らませて拗ねてしまった。
2015-02-26 22:10:56青葉島鎮守府はトラック泊地管轄下の前線基地で、要塞島でもあった。鎮守府内には水上機関車が止まるための駅が整備されており、ここの司令官は、駅長さんも兼任している。 水上機関車が、駅に完全停車すると同時に、鎮守府中の艦娘数十名が一気に列車へと駆け寄った!
2015-02-26 22:19:45ある艦娘は護衛船団のメンバーとの数か月ぶりの再開を喜ぶために、またあるいは彼女たちが護衛してきた物資を少しでも早く開封するためにであった。この数か月に一度やってくる機関車だけで、この鎮守府の物資の殆どはまかなわれているのだから、当然と言えば当然だろうか……いや、それにしても凄い。
2015-02-26 22:22:45「……加古はどこだぴょん?」 卯月は近くにいた秋月をとっ捕まえて、問い詰めた。すると事情を知っている秋月は凄く気まずそうに 「たぶん第二艦隊の会議ではないでしょうか……」 秋月としては全力で濁したつもりだったが、駄目だった。
2015-02-26 22:28:19「加古がまーた浮気してるぴょん! この卯月がいながら、加古は神通にうつつを抜かしているぴょん! 許せないぴょん!」 そう言って、卯月は会議室の方へと走っていった……
2015-02-26 22:32:33