高橋源一郎氏による「イスラム国邦人殺人事件」と「寛容論」のおはなし

まとめました。
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高橋源一郎 @takagengen

①もう遅くなりましたが、今日は月に一度の論壇時評の日でした。今日は、「人質事件」で亡くなった後藤健二さんのことといわゆる「イスラム国」のことを中心に書きました。お読みになった方、ありがとうございます。

2015-02-26 23:03:51
高橋源一郎 @takagengen

②後藤さんの本を読みました。家族を虐殺されたのに、虐殺した人たちと共に暮らしてゆくしかない国に生きる人々、麻薬をうたれて敵を殺し続けた少年兵、そんな過酷な、戦時下の物語を、後藤さんはあえて少年・少女向けに易しく書いていました。大人たちは見向きもしないと感じていたからかもしれません

2015-02-26 23:06:07
高橋源一郎 @takagengen

③いわゆる「イスラム国」についての論評が溢れました。多くは、彼らを「狂信的テロ集団」と呼び「非人間的」と糾弾しています。けれど、ほんとうに彼らは「怪物」なのでしょうか。田原牧さんは「彼らは決して怪物ではなく、私たちの世界がはらんでいる病巣の表出ではないか」と書いています。そして、

2015-02-26 23:07:53
高橋源一郎 @takagengen

④「彼らがサディストならば、ましだ。しかし、そうではない。人としての共感を唾棄し、教義の断片を無慈悲に現実に貼り付ける「コピペ」。この乾いたゲーム感覚ともいえるバーチャル性が彼らの真髄だ。この感覚は宗教より、現代社会の病的な一面に根ざす」とも。ぼくもこの田原さんの意見に同意します

2015-02-26 23:09:38
高橋源一郎 @takagengen

⑤「他者への共感」の排除が、彼らの特徴なら、「怪物」は、遠くにではなく、わたしたちの近くに、日常的に存在しています。自分と異なった考え方の持ち主は、いくら攻撃してもかまわない、という非寛容な気分や空気の中で、「怪物」は、日々成長しているように思えるのです。

2015-02-26 23:11:31
高橋源一郎 @takagengen

⑥いまから250年前、フランスでひとりの新教徒が冤罪で処刑されました。宗教的な狂信が産んだこの事件を知ったヴォルテールが「人間をより憐れみ深く、より柔和にしたい」と願って書いたのが「寛容論」でした。いま読むと、ヴォルテールが見ていた世界は、驚くほどわたしたちの世界に似ています。

2015-02-26 23:13:15
高橋源一郎 @takagengen

⑦「寛容論」の最後、ヴォルテールは、どんな宗教の神にでもなく、世界を創造したと彼が信じる「神」に祈りを捧げています。その祈りは、残念ながら、いまもかなえられてはいません。ヴォルテールの祈りを、ここに書き写します。

2015-02-26 23:14:32
高橋源一郎 @takagengen

⑧「あなたはお互いに憎み合えとして、心を、またお互いに殺し合えとて、手をわれわれにお授けになったのではございません。苦しい、つかの間の人生の重荷に耐えられるように、われわれがお互い同士助け合うようにお計らいください…」

2015-02-26 23:16:04
高橋源一郎 @takagengen

⑨「われわれの虚弱な肉体を包む衣装、どれをとっても完全ではないわれわれの言語、すべて滑稽なわれわれの慣習、それぞれ不備なわれわれの法律、それぞれがばかげているわれわれの見解、われわれの目には違いがあるように見えても、あなたの目から見ればなんら変わるところない、われわれ各人の状態」

2015-02-26 23:17:39
高橋源一郎 @takagengen

⑩「それらのあいだにあるささやかな相違が、また「人間」と呼ばれる微小な存在に区別をつけているこうした一切のささやかな微妙な差が、憎悪と迫害の口火にならぬようお計らいください

2015-02-26 23:18:35