青葉島鎮守府 第二話

護衛船団の艦娘と、鎮守府の艦娘たちの久しぶりの再会 前の話(http://togetter.com/li/788341
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跡地 @kkkkkkmnb

青葉島鎮守府 第二話

2015-02-28 00:41:01
跡地 @kkkkkkmnb

その会議場には多くの艦娘がいたが、鉛筆の音や定規を動かす以外の音は、全くしなかった。  中央には大きな図面が敷かれ、図面上には艦名の書かれた模型が、輪形陣と単縦陣で並んでいた。

2015-02-28 00:47:12
跡地 @kkkkkkmnb

「時間です。紙を提出してください。」  神通の声が部屋の中に響いた。担当の駆逐艦娘が、赤と青のそれぞれのチームに駆け寄って紙を回収する。紙は運営役である提督の所に集められ、提督が計算をしているうちは、またしばらく沈黙が続く。

2015-02-28 00:53:55
跡地 @kkkkkkmnb

提督が立ち上がった。 「水上打撃部隊、索敵失敗。強襲部隊、取り舵一杯」  会場内にどよめきが走る。水上打撃部隊と呼ばれた陣営は、苦虫をかみつぶしたかのような顔をしていた。

2015-02-28 01:00:55
跡地 @kkkkkkmnb

提督は続ける 「強襲部隊が魚雷発射、三本命中。水上打撃部隊被害なし、その護衛艦隊、初風小破、不知火中破です。これより1833に移ります」  提督は横にある黒板に状況を簡単に書いてから、提督は席に着いた。

2015-02-28 01:07:53
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両陣営、相談を始めるが、先手を取られた打撃部隊の旗色は悪かった。げんなりとした顔の艦長役の衣笠が、司令官役の比叡にどう声をかけるか考えあぐねている時だった。 「出来ました」  まるで追い打ちをかけるかのように、強襲部隊は紙を提出してしまった。提督は少し面白がりながら紙を受け取る。

2015-02-28 01:16:17
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衣笠が相手を睨みつけると、加古が心の底から楽しそうな顔をしながら椅子に座っていた。衣笠の鉛筆を握りしめる手がわなわなと震えるが、打開策は一向に思い浮かばなかった。

2015-02-28 01:20:11
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結局、水上打撃部隊は海の藻屑と化した。提督からの講評は、打撃部隊の初動について多くの時間が割かれた。それを衣笠はうなだれながら聞いていた。加古はよっぽど楽しいのだろう。二時間にも及んだ図面演習中、一度も眠らなかった。

2015-02-28 01:26:31
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提督が解散号令をかけると、艦娘たちは一斉に立ち上がってぞろぞろと会議場から退出していった。衣笠も帰ろうかと思ったが、加古の余裕綽々な顔を思い出すと、無性に腹が立って仕方がないので、文句を言うためにまだ片づけをしている加古に大股で歩み寄った。

2015-02-28 01:33:28
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しかし、ものすごい勢いで加古に駆け寄る艦娘に衣笠は突き飛ばされた。 「かーーーこーーーーー!」  振り向いた加古と激突した。中腰だった加古は派手に尻餅をついてうめき声をあげる。しかし、相手はそんなのお構いなしに加古に馬乗りになって加古に迫る。

2015-02-28 01:37:28
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「ねぇ、さっきの夜戦凄かったねぇ! 距離の詰め方なんか最高だよ! あんな風に複雑な艦隊運動をして相手を焦らすあたり嫌らしいというか陰湿というか、水雷戦隊の高い機動性を理解できている証拠なんだけど、それに照明弾を落とすタイミングも場所も見事だったよね、あれを実際の夜戦で応用するな」

2015-02-28 01:43:37
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川内はさっきの兵棋演習の夜戦について加古にまくしたてるが、加古は襟元を絞められているので顔がみるみるうちに真っ青になっている。神通が止めに入らなければ、加古は死んでいただろう。荒い息をする加古の背中を神通がさすっていると、また加古の名を呼ぶ大きな声がした。

2015-02-28 01:48:52
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「かーーこーー!」  会議場の入り口で、その可愛らしい眉をつりあげて加古の方を睨みつけている。それをみた加古はまたか、とげんなりとしている。そんな反応が卯月の癪にさわった。 「なんでうーちゃんの帰りを出迎えないんだぴょん!? 遠路はるばる加古の元に帰ってきたというのに全く……」

2015-02-28 01:53:19
跡地 @kkkkkkmnb

卯月のお説教というかわがままを加古は、げんなりとした顔で聞き流す。神通がフォローに入ろうとするが、その度に卯月がぴしゃりとはねのけてしまって、全く聞き入れてはくれなかった。結局、加古が卯月におやつを買ってあげることで和解した。

2015-02-28 01:57:23
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この後、加古は神通と一緒に今回の兵棋演習について話し合う予定だったが、そっちを優先すると卯月がどんな反応を示すかくらい、卯月と長い付き合いの加古でなくてもわかる。卯月に引っ張られながら、会議場を出てゆく加古を神通は、複雑そうな顔で見送った。

2015-02-28 02:00:34
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叢雲は水上機関車の護衛艦隊に所属していた。

2015-02-28 02:01:45
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古鷹は、この青葉島鎮守府の第一艦隊に所属している。 故に、二人が会うのは水上機関車がこの島に停車している間の数日だけだが、その間中は、一緒にいることが多かった。

2015-02-28 02:03:52
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今回も叢雲は、自由時間になると真っ先に古鷹の部屋へと向かった。ノックをすると、あの少し高い声が返ってきた。叢雲が部屋に入ると古鷹は、とても嬉しそうな顔をした。

2015-02-28 02:06:41
跡地 @kkkkkkmnb

「叢雲、おかえりなさい!」 「た、ただいま……」 「お茶入れるね」 「ありがとう」  古鷹の勢いに押されながら、叢雲はいつも通り、ベッドに腰掛ける。 古鷹は鼻歌を歌いながらティーカップをカチャカチャいわせている。

2015-02-28 02:09:34
跡地 @kkkkkkmnb

「今回はどうだった?」 「いつも通りね、大した戦闘もなかったわ。一番大きい相手で軽巡が二隻混じった水雷戦隊を相手にしたくらい」 「なら、足柄さんは面白くなかっただろうな」 「飢え死にしかけたわ」  足柄は護衛団での激しい攻防と期待して鎮守府勤務から護衛団へと自ら転属を願い出ている

2015-02-28 02:15:28
跡地 @kkkkkkmnb

「最初の方なんか酷かったわよ。一日に五連戦くらいあるって信じてたみたいで、凄く張り切ってたんだから。そんなに戦って保つわけないでしょうが!」  叢雲の愚痴に古鷹はくすくすと笑う。その後も他愛のない日常話が続いた。

2015-02-28 02:18:22
跡地 @kkkkkkmnb

「そういえば、これ預かってるんだった。姉さんからよ」  そういって、叢雲が一枚の手紙を取り出した。差出人は少し前にトラック泊地に転属となった叢雲の姉である吹雪からだ。吹雪と古鷹は青葉島に居た頃から姉妹の様に仲が良く、今でもこうして叢雲を介して手紙でやりとりを続けていた。

2015-02-28 02:25:10
跡地 @kkkkkkmnb

古鷹の目にまた別の喜びの色が浮かぶ。 「まぁ! いつもありがとうね! 吹雪ちゃん元気だった?」 「白雪姉さんたちと仲良くやっていたわよ」 叢雲の反応は特に興味がないと言わんばかりだった。

2015-02-28 02:28:48
跡地 @kkkkkkmnb

「そっかー、良かった―」  それを聞いた古鷹は満足そうな顔する。そして叢雲に勧められるがままに、封を切って吹雪からの手紙を読み始めた。

2015-02-28 02:31:39