【不自然な弓】福間健二 #2factory82
なにか読むものをさがしている、だと思った。なにか飲むものを、のまちがいだった。死者たち。麦とホップThe Gold を見つけて飲んでいる。生き返ってしまわないように星のなかに星を入れた。ホテルが燃えている。崖をおりる。大きな荷物をもって。(不自然な弓1)#2factory82
2015-02-22 14:49:49下の世界。遠くの赤い炎が近くの青い炎に変わって、朝。家具や食器が見えてくる。壊れたメガネの修理とやけどの手当。でも、たのしそうな様子だ。生きている人、歩く人、大事そうに紙の箱をかかえている。何をしまっているのか。何も入っていないかもしれない。(不自然な弓2)#2factory82
2015-02-23 11:11:13たのしそうな様子。でも見知らぬ親たちだ。下水溝をまたいで入る部屋。でも荷物をおくところはない。一九四九年。みんな急いでいる。波にのまれ、意見を言わされ、ラビリンス。事件の現場に踊った関節が痛い。あたためたほうがいい。お湯をわかさなくては。(不自然な弓3)#2factory82
2015-02-24 11:52:24遠くに見える山々。そのむこうの、絶対に解けない問題。それに向かう態度が試されている。芯まで通らない熱。炎の質がわるいのだ。失格の、温帯の生き物の、皺よる手がくやしそうにつかむ砂とイネ科の雑草たち。たそがれのなかに。だとしても、生まれる、ぼく。(不自然な弓4)#2factory82
2015-02-25 10:23:06カワセミがいた。水色の背にオレンジ色のお腹。チーと鳴いた。雨のなか、その配色とすばやい直線で何を教えにきたのだろう。四分の一、三分の一、半分。歩きだした半透明の発育を征服していくもの。男性でも女性でもない。存在して、素直に伸びない爪をもって。(不自然な弓5)#2factory82
2015-02-26 12:01:16大きな駅のなかの、ひっこんだところ。隠れ場所。迷子になりながら荷物を小さくして、忘れられた傘たちと話した。人は乗るために急いでいる。あるいは、あきらめている。あるいは、するどい目つきの「けだもの」になる。もう立たない。這う。獲物を狙うのだ。 (不自然な弓6)#2factory82
2015-02-27 10:33:42こんなに食べる。資本主義。こんなに棄てる。新しい人間。むさぼって、むさぼって、いつまでも充たされない。黒い犬。見つめあうことになっている。春。風が吹くことになっている。鉄工所の裏の、溝にそった道。降ればいい。雨でも枯葉でも炎でも。ぼくは行く。(不自然な弓7)#2factory82
2015-02-28 10:36:41電車とバス。どこでも眠る人、やってこなくてもいいのだが、使われたい弓が待っている。ひとつの解決と何十本もの弁解する矢。せめて、はずれたとき、浪費的に笑わないでほしい。目と目があった。たしかに。好きなのか。ぼくを何にしたいのか。ぼくはきらいだ。(不自然な弓8)#2factory82
2015-03-01 09:31:55穴があいてなにかふきだした。遅れる反応をおきざりにする積極性と「闇の奥」のまちがった壊れ方。許さないぞという意志と情熱、まだあって、ぼくは眠るきみを見る。きみのたましいは不安な海を渡っている。用意するよ。朝ごはん。そのために島を買いに行く。 (不自然な弓9)#2factory82
2015-03-02 12:46:47星の音。星の歌。愁い顔をつくってとりだしたのはいいけれど、どうしよう。みんなと踊れない。みんなとテーブルにつきたくない。無音の雲をいじりすぎた指たち、この愚かな線をどうはじくのか。むずかしい年頃。曲がりくねった坂道をのぼってやっとここまで。(不自然な弓10)#2factory82
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