【不自然な弓】福間健二 #2factory82

自分が生まれる前のことから書こうと思った。ぼくは一九四九年に生まれた。日本では、迷宮入りになる不可解な事件が次々におこっていた。ところが、いきなり1で失敗。そんなころに発泡酒の「麦とホップThe Gold」なんてあるはずがない。それでも、なんとか4で「生まれる」をやった。そして、10を書く前の夜、碧衣スイミングさんのライヴで彼女の「むずかしい年頃」という曲に出会った。そうだ、その年頃にたどりついて終わろうとその場で彼女の許可をもらった。 音楽は、1949年のヒット曲、高峰秀子の「銀座カンカン娘」。実は、1950年代の高峰秀子について、という注文の原稿やりながら、後半を書いたのです。 https://www.youtube.com/watch?v=NrxuwLJztHM
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福間健二 @acasaazul

なにか読むものをさがしている、だと思った。なにか飲むものを、のまちがいだった。死者たち。麦とホップThe Gold を見つけて飲んでいる。生き返ってしまわないように星のなかに星を入れた。ホテルが燃えている。崖をおりる。大きな荷物をもって。(不自然な弓1)#2factory82

2015-02-22 14:49:49
福間健二 @acasaazul

下の世界。遠くの赤い炎が近くの青い炎に変わって、朝。家具や食器が見えてくる。壊れたメガネの修理とやけどの手当。でも、たのしそうな様子だ。生きている人、歩く人、大事そうに紙の箱をかかえている。何をしまっているのか。何も入っていないかもしれない。(不自然な弓2)#2factory82

2015-02-23 11:11:13
福間健二 @acasaazul

たのしそうな様子。でも見知らぬ親たちだ。下水溝をまたいで入る部屋。でも荷物をおくところはない。一九四九年。みんな急いでいる。波にのまれ、意見を言わされ、ラビリンス。事件の現場に踊った関節が痛い。あたためたほうがいい。お湯をわかさなくては。(不自然な弓3)#2factory82

2015-02-24 11:52:24
福間健二 @acasaazul

遠くに見える山々。そのむこうの、絶対に解けない問題。それに向かう態度が試されている。芯まで通らない熱。炎の質がわるいのだ。失格の、温帯の生き物の、皺よる手がくやしそうにつかむ砂とイネ科の雑草たち。たそがれのなかに。だとしても、生まれる、ぼく。(不自然な弓4)#2factory82

2015-02-25 10:23:06
福間健二 @acasaazul

カワセミがいた。水色の背にオレンジ色のお腹。チーと鳴いた。雨のなか、その配色とすばやい直線で何を教えにきたのだろう。四分の一、三分の一、半分。歩きだした半透明の発育を征服していくもの。男性でも女性でもない。存在して、素直に伸びない爪をもって。(不自然な弓5)#2factory82

2015-02-26 12:01:16
福間健二 @acasaazul

大きな駅のなかの、ひっこんだところ。隠れ場所。迷子になりながら荷物を小さくして、忘れられた傘たちと話した。人は乗るために急いでいる。あるいは、あきらめている。あるいは、するどい目つきの「けだもの」になる。もう立たない。這う。獲物を狙うのだ。 (不自然な弓6)#2factory82

2015-02-27 10:33:42
福間健二 @acasaazul

こんなに食べる。資本主義。こんなに棄てる。新しい人間。むさぼって、むさぼって、いつまでも充たされない。黒い犬。見つめあうことになっている。春。風が吹くことになっている。鉄工所の裏の、溝にそった道。降ればいい。雨でも枯葉でも炎でも。ぼくは行く。(不自然な弓7)#2factory82

2015-02-28 10:36:41
福間健二 @acasaazul

電車とバス。どこでも眠る人、やってこなくてもいいのだが、使われたい弓が待っている。ひとつの解決と何十本もの弁解する矢。せめて、はずれたとき、浪費的に笑わないでほしい。目と目があった。たしかに。好きなのか。ぼくを何にしたいのか。ぼくはきらいだ。(不自然な弓8)#2factory82

2015-03-01 09:31:55
福間健二 @acasaazul

穴があいてなにかふきだした。遅れる反応をおきざりにする積極性と「闇の奥」のまちがった壊れ方。許さないぞという意志と情熱、まだあって、ぼくは眠るきみを見る。きみのたましいは不安な海を渡っている。用意するよ。朝ごはん。そのために島を買いに行く。 (不自然な弓9)#2factory82

2015-03-02 12:46:47
福間健二 @acasaazul

星の音。星の歌。愁い顔をつくってとりだしたのはいいけれど、どうしよう。みんなと踊れない。みんなとテーブルにつきたくない。無音の雲をいじりすぎた指たち、この愚かな線をどうはじくのか。むずかしい年頃。曲がりくねった坂道をのぼってやっとここまで。(不自然な弓10)#2factory82

2015-03-03 12:11:56