青葉島鎮守府 第四話

鎮守府に押し寄せる敵水雷戦隊。それを第二艦隊が迎撃しますが…… 前の話:http://togetter.com/li/790976
1
跡地 @kkkkkkmnb

【青葉島鎮守府 第四話】 襲撃

2015-03-06 22:32:23
跡地 @kkkkkkmnb

非常ベルが鳴り響いたのは、昼食が終わって直ぐのことだった。そのまま放送で第二艦隊の待機命令が下される。部屋にいた加古は飛び起きて、一階へと走って行った。

2015-03-06 22:35:55
跡地 @kkkkkkmnb

司令室は騒然としていた。水城司令官も、その参謀達も腕を組んでレーダーを睨みつけている。

2015-03-06 22:43:10
跡地 @kkkkkkmnb

敵艦隊は発見した。解析も済んだ。敵は重巡を旗艦とした水雷戦隊で、こちらに最大戦速で向かってきている。しかし、敵の鎮守府を攻撃するにしてはあまりにもお粗末すぎる戦力なのだ。航空機による護衛すらない。

2015-03-06 22:50:06
跡地 @kkkkkkmnb

「敵の意図が読めんな……本当にあれだけなのか?」 水城司令官の問いに、レーダー手がうなずく。すると続けて神通から連絡が入った。 「第二艦隊、配置につきました」 水城司令官が、相手情報を伝えると神通は黙って復唱する。

2015-03-06 22:54:52
跡地 @kkkkkkmnb

「敵は威力偵察程度のつもりだろうが、こちらは全力で迎撃する。一隻たりとも逃がすな!」 「はいっ!第二艦隊、出撃します」 旗艦の神通に続いて、加古、矢矧、那珂、それに谷風と陽炎が次々と洋上に飛び出した。神通の指示で、水上偵察機が一斉に飛び立った。

2015-03-06 23:03:44
跡地 @kkkkkkmnb

「加賀、瑞鶴は直掩隊を。摩耶と秋月は要塞の対空システムとリンクしておいてくれ」  司令官は最後にそれだけ指示を出すと、水上機から送られてくる映像を黙って見つめた。そこには青い海ばかりで、まだ敵艦隊の姿は映っていなかった。

2015-03-06 23:07:30
跡地 @kkkkkkmnb

敵艦隊との遭遇は予定通りだった。まずは直掩隊が敵に襲い掛かる。敵の偵察機をいとも簡単に撃ち落とし、腹に抱えた爆弾を敵に向かって落とす。その隙に第二艦隊は一気に敵との距離を詰める。

2015-03-06 23:20:59
跡地 @kkkkkkmnb

それでも敵艦隊は乱れなかった。リ級と目があった谷風は、その憎悪に満ちた目におもわずたじろぐ。神通の鋭い声と共に一斉に主砲を構える。そしてそのまま反航戦で砲戦が始まった。

2015-03-06 23:31:09
跡地 @kkkkkkmnb

まずは一気に敵のロ級が単艦で突っ込んできた!その大きな口を開いてどんどんと距離を詰めてくる! こちらの応射に全く動じる様子を見せず、見事に的役に徹している。その間に後ろの敵もどんどんと砲弾をこちらに打ち込んでくる。

2015-03-06 23:37:24
跡地 @kkkkkkmnb

「っ……!」  神通の近くで水柱が跳ね上がる。敵は思ったよりも手ごわい。おそらく敵の精鋭部隊ではないだろうか?ようやくロ級を沈めた時にはこちらにも被害が出ていた。まだ新任の谷風の息があがってしまっている。

2015-03-06 23:49:28
跡地 @kkkkkkmnb

ロ級が沈むと、途端に敵は隊列を崩して散開した。すかさず神通がお前の相手は私だ! と言わんばかりにリ級めがけて主砲を撃ち込んだ! リ級の憎しみに満ちた目が神通の方へと向いた。陽炎が援護に駆け寄る。矢矧も軽巡と駆逐二隻相手に果敢に戦っている。

2015-03-06 23:55:30
跡地 @kkkkkkmnb

駆逐艦をすぐに撃沈した那珂が矢矧のサポートに入った。谷風は……ほんの少し気が緩んだ。まだここに着任して日が浅い谷風にはこの緊張状態が相当応えたらしい。自分の周りに敵がいないと思うと、緊張が緩んでしまった。

2015-03-07 00:01:13
跡地 @kkkkkkmnb

しかし、まだ残っている。軽巡が一隻、へ級がまだ残っていた。直掩機によって満身創痍だったが、右腕にくっついた主砲はまだ生きている。よろよろと谷風にむけて照準をあわせる。しかし、谷風はそれに気が付かない。

2015-03-07 00:06:59
跡地 @kkkkkkmnb

へ級からうめき声のような音がしたかと思うと、主砲が発射された。狙いは谷風の顔。谷風が気が付いたときにはもう遅かった。大破したへ級の攻撃といえども練度の低い駆逐艦ならひとたまりもない。嫌な金属音がみるみる谷風に迫っていく!

2015-03-07 00:11:13
跡地 @kkkkkkmnb

ゴキッ! 金属音と共に谷風は派手に吹き飛ばされた! そして突き飛ばした加古がへ級の砲弾を受けるが、こんなことで加古はびくともしない。 「ボサッとするな!」  そう言って、加古が主砲をぶっ放す。加古の一撃を受けたへ級は内部で爆発を起こし、悶え声をあげながら沈んで行った。

2015-03-07 00:17:14
跡地 @kkkkkkmnb

少し離れた場所からも爆発音と共に、次々と敵の断末魔の声が洋上に響き渡った。その金属音なのか人間の苦しみの声が混ざったかのような不快な音に加古は顔をしかめる。そして、硝煙で顔が汚れた艦娘たちは、次々と神通の所に集まった。

2015-03-07 00:22:29
跡地 @kkkkkkmnb

「はい、敵は全滅しました。こちらの被害は殆ど皆無です。これより帰投します」  神通は、通信をさっと司令官への報告を終えると、谷風を方を向いた。ちゃんと見られていたらしい。他のみんなもニヤニヤと笑っている。谷風は困惑した顔で、神通の言葉を待つ、

2015-03-07 00:25:54
跡地 @kkkkkkmnb

「訓練あるのみですね」  それだけいうと神通は帰投します。と笑った。谷風はぽかんとしている。てっきり怒鳴り散らされるものだと思っていたからだ。 「神通はそんなことしないよ」  加古は、谷風を小突いて急かしながらそう不思議そうな顔の谷風に耳打ちしてやった。

2015-03-07 00:30:21
跡地 @kkkkkkmnb

もっとも、鬼神通の異名をもつ彼女の訓練内容を考えると、怒鳴り散らされるだけの方がどれだけましであったか……

2015-03-07 00:32:00
跡地 @kkkkkkmnb

報告を聞いた司令官は、大きくため息をつくと椅子に座りこんだ。肩に力が入りっぱなしだったせいか、すごく痛い。  レーダー手に警戒を怠るなよと気の抜けた声で指示を出す。 「ああ、あと川内にあとで部屋に来るように言っておいてくれ」  そういうと、水城司令官は改めて大きなため息をついた。

2015-03-07 00:35:48
跡地 @kkkkkkmnb

その日の晩、加古は神通の部屋を訪れた。加古が部屋に入ると彼女は探照灯を磨いていた。 「今日も使わなくて済んで良かった……」  神通はそういって加古に向かってほほ笑んだ。加古も簡単に相槌を打ってから、勧められるままに向かいの椅子にこしかけた。

2015-03-07 00:39:51
跡地 @kkkkkkmnb

「今日も聞こえたんだ。やっぱり私はあいつらに呼ばれているよ……」  神通の探照灯を磨く手が止まった。 「お姉ちゃん、お姉ちゃんってずっと聞こえるんだよ……古鷹はもちろん、青葉でも衣笠の声でもない。聞いたことのないこえが私を呼ぶんだ……」  加古が乾いた笑い声をあげる。

2015-03-07 00:44:34
跡地 @kkkkkkmnb

神通が言葉を選びながら口を開いた。 「……加古は水子を知ってますか?」 「死産した赤ちゃんの事だろう?それがどうしたのさ?」  加古が怪訝そうな顔で神通を見つめる。神通の唇は震えていた。 「川内型8番艦……おそらくその娘があなたを呼んでいるのでしょう」

2015-03-07 00:54:39
跡地 @kkkkkkmnb

川内型は当初の計画では8隻だった

2015-03-07 00:56:19