日本軍とドイツ軍の「命の捉え方」の違いについて 《山崎雅弘》

表題に関連するツイートをまとめてみました。第二次世界大戦期のドイツ軍人、特に武装親衛隊(SS)の将兵は、侵攻先での住民虐殺などの戦争犯罪にも多く関わっており、個々の軍人は決して「聖人君子」などではありませんでしたが、それとは別に、軍組織としての自国民の「命の捉え方」については、同時期の日本軍とは大きく異なっていました。 過去の問題を踏まえて、日本が将来再び戦争の当事者となった時、日本国民や自衛隊員はどちらの道を選ぶのか。それを考える材料の一つとして参考にしていただければ幸いです。 また、以下のまとめも関連するテーマを扱っていますので、合わせて読まれることをお薦めします。 続きを読む
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山崎 雅弘 @mas__yamazaki

産経新聞や日本会議をはじめ、第二次大戦における「日本とドイツはやったことが違う」と主張する言説は多いが、確かに日本とドイツでは違う点が数多くある。ドイツ空軍は第二次大戦の末期に一度だけ、戦闘機による体当たり攻撃を実行したが「効果が無い」とわかると二度とその戦法を繰り返さなかった。

2015-03-13 19:33:07
山崎 雅弘 @mas__yamazaki

この「体当たり攻撃」は、ドイツの降伏から1か月前の1945年4月7日に実施され、約150機の戦闘機を連合軍の爆撃機約1300機と戦闘機約700機に突っ込ませるという戦いだった。これによる戦果は、敵爆撃機8機の撃墜のみで、出撃した独軍戦闘機の多くは(玉砕せず)損傷を受けて生還した。

2015-03-13 19:34:24
山崎 雅弘 @mas__yamazaki

敗戦間際(1945年)の日本国民の摂取カロリーは、1933年の6割に落ち込んでいたが、ドイツの場合は逆に、1945年3月のエネルギー消費量は1933年と比べて110〜120%に増えていた。日本軍に投降した米兵捕虜の死亡率は37%だったが、ドイツ軍に投降した米兵の場合は1%だった。

2015-03-13 19:35:27
山崎 雅弘 @mas__yamazaki

最近電子書籍版を出した、ドイツ軍の「春の目覚め作戦」(amzn.to/1EHQGoY)は、敗戦から2か月前の1945年3月に実施された最後の大規模反攻で、攻勢部隊の指揮官は、ヒトラーの身辺護衛部隊長を長らく務めた武装親衛隊(SS)のディートリヒだった。ヒトラーは、最

2015-03-13 19:36:46
山崎 雅弘 @mas__yamazaki

(続き)後の一兵まで戦うようディートリヒに命じたが、ディートリヒとその部下の将校たちは、圧倒的に優勢なソ連軍が逆襲に転じると、部下の兵士を救うため、ヒトラーの許可を得ることなく部隊を撤退・脱出させた。これを知ったヒトラーは激怒し、侮辱的な懲罰を加えたが、ディートリヒは自分が受けた

2015-03-13 19:38:08
山崎 雅弘 @mas__yamazaki

(続き)勲章一式をヒトラーに送り返し、部下をソ連軍ではなくアメリカ軍に投降させる(その方が生き延びられる可能性が高い)ため、指揮下の部隊を全力で西に向かわせた。第二次大戦中のドイツ軍と武装親衛隊将官の多くは、ヒトラーの「玉砕」命令の厳守よりも、部下を生き延びさせることを優先した。

2015-03-13 19:39:26
山崎 雅弘 @mas__yamazaki

首都ベルリンの最終戦(amzn.to/10kjaoh)でも、ドイツ軍上層部はヒトラーの無意味な「玉砕」命令の厳守より、部下を生き延びさせることを優先した。ドイツの軍人は個々が独立した思考で判断し、軍人を含む国民の「命」を守ることを「国家体制との心中」よりも優先した。

2015-03-13 19:40:38
山崎 雅弘 @mas__yamazaki

ベルリン防衛戦におけるドイツ軍の司令官ハインリーチの父は、キリスト教ルター派の牧師で、彼自身も信仰心厚いクリスチャンだった。彼は「自殺的で無意味な死守命令」を拒絶することは「部下に対する私の責任であり、ドイツ国民に対する責任でもある。そして神に対しても」と考え、玉砕戦を回避した。

2015-03-13 19:41:49
山崎 雅弘 @mas__yamazaki

ドイツの将軍が「敗戦後まで部下を生き延びさせる」ことに関心を払っていた頃、日本軍ではどうだったかという一例が『沖縄県民と沖縄戦』amzn.to/1vGaVf5 軍人だけでなく市民にも敵への投降を許さず、洞窟で急に泣き出す赤ん坊を「隠れ場所が敵に露呈する」と殺害した。

2015-03-13 19:43:08
山崎 雅弘 @mas__yamazaki

第二次大戦中の日本軍とドイツ軍の「人命に対する捉え方の違い」を、今の価値判断基準で「裁く」ことには意味がない。重要なのは「将来、同じような状況に直面した時、日本人はどちらの道を選ぶのか」だが、現首相とその支持勢力は次もまた、前回と同じような「道」を選ぶことを自国民に期待している。

2015-03-13 19:44:23
山崎 雅弘 @mas__yamazaki

ディートリヒが戦ったのはハンガリーで、そこからオーストリアに逃れましたが、ドイツ軍の将官は「自分たちだけ」生き延びることを考えたわけではなく、戦線が維持できる限りは維持しました。もちろん戦争犯罪と無縁だったわけではなく、礼賛し過ぎるのも問題ですが。@TOKYOMEGAFORCE

2015-03-13 20:02:05
山崎 雅弘 @mas__yamazaki

硫黄島も戦艦大和の水上特攻も、兵士の生存を考慮外にした作戦で、「命を守るために決死戦(玉砕・特攻)」というのは論理矛盾だと思います。また、関東軍の上層部は牟田口らと同様、ソ連軍の侵攻開始と同時に部下を見捨てて逃亡しており、兵士や居留民の生存を考慮していません。@565nzola

2015-03-16 19:12:33
山崎 雅弘 @mas__yamazaki

戦前戦中の日本軍が「部下の生存を考慮外にした」と書くと、当時の日本軍人を現在の価値判断基準で「裁いている」「貶めている」と思う人がいるかもしれないが、私が言及しているのは「人権や人道、人命を考慮外にすることを当然視した当時の国家体制の価値判断」であって「個々の日本軍人」ではない。

2015-03-16 19:13:54
山崎 雅弘 @mas__yamazaki

「人権や人道、人命を考慮外にすることを当然視した当時の国家体制の価値判断」を批判も否定もせず、それを強力に助長した靖国神社に参拝して手を合わせる人間が首相や閣僚であるなら、現在の「国家体制の価値判断」が日々それに近づいていくのは自然な成り行きだろう。その変化を国民は承認するのか。

2015-03-16 19:15:11