【第四部-五】浜風と龍鳳と親愛のキス #見つめる時雨

浜風 龍鳳
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浜風視点

とある舞鎮の艦娘たち @S_side_story

「…ねぇ、浜風。私って…重く考え過ぎかな…」 ここは龍鳳の部屋。時雨と春雨は夜間演習を行っていて不在。今この空間には私と龍鳳の二人だけ。夕食の時妙に元気のなかった龍鳳が気になり、私は声をかけた。「話を聞いて欲しい」。私はそう言われた。

2015-03-30 22:31:18
とある舞鎮の艦娘たち @S_side_story

「私ね、キスってすごい特別なものだと思ってたの…」 龍鳳が大きな鯨のぬいぐるみを抱きながら、ぽつり、ぽつりと声を零す。私は彼女の隣に座り、耳を傾けた。…龍鳳は無意識なのか、私に肩を密着させてくる。きっと、誰かの温度を感じていたいんだろう。

2015-03-30 22:33:52
とある舞鎮の艦娘たち @S_side_story

…龍鳳は恋愛に対してとても綺麗なイメージをもっているみたいで、キスの一つにしても、今みたいに特別視をしているよう。いつも磯風に軽率にされている私はとうにそんなイメージはなくなってしまったのだけれど、かといって龍鳳の価値観を変に思うことはなかった。龍鳳らしいって、そう思う。

2015-03-30 22:37:30
とある舞鎮の艦娘たち @S_side_story

また時雨が何かしたのだろうか。でも、あのコが龍鳳のキスに対するイメージを壊すようなことをするとはあまり思わない。山城への想いを捨てられない癖に龍鳳の気持ちを受け止めるという酷いコではあるけれど。…でも龍鳳がそれでいいと言っているのだから、それについては私は何も言えなかった。

2015-03-30 22:40:23
とある舞鎮の艦娘たち @S_side_story

「浜風…私、雲龍にキスされちゃった…」 「…は!?」 …思わず声が出た。予想だにしない言葉だったから。 「ど、どういうことですか?」 「…そのままの意味。私…」 …困惑する私に、龍鳳が少しずつその時の状況を話し始めた。

2015-03-30 22:42:34
とある舞鎮の艦娘たち @S_side_story

雲龍と共に出撃した日の夜、労いも兼ねて料理をご馳走したところ、お礼にハグされたと思ったら次の瞬間にはキスされていた。…何か一行でまとめるとすごい内容ね…。 「…それは、戯れというわけではないのですか?」 「わかんない…。でも、雲龍は私のこと好きって…」

2015-03-30 22:45:39
とある舞鎮の艦娘たち @S_side_story

雲龍とは何度か任務を共にしたことがある。しかし、どこかふわふわしてて何を考えているのかいまいちわかりづらいというのが第一印象だった。…雲龍のことならきっと時雨が詳しいと思うけど、生憎彼女は演習中。…どうしようかしら。

2015-03-30 22:49:07
とある舞鎮の艦娘たち @S_side_story

…龍鳳が自分の唇を指でなぞっている。…雲龍は本当にどういうつもりでキスをしたのかしら。…正直なところ、話を聞く限りそんなに深い意味はないように思う。雲龍は見返りを求めていない。一方的に好きって言って去っていったようだし。

2015-03-30 22:52:15
とある舞鎮の艦娘たち @S_side_story

口にされたから龍鳳はショックを受けたみたいだけど、幼い子どもがする親愛のキスとそんなに変わらないのでは?それが私が話から受けた印象。…さて、どうしようかしら。もしそうだとしたら、あまり深く悩んで欲しくはないのだれど。

2015-03-30 22:55:17
とある舞鎮の艦娘たち @S_side_story

「…龍鳳。それって親愛のキス…じゃないですか」 「親愛…?」 「ええ。貴女と雲龍は最期の機動部隊を共にした僚艦。大切な仲間。それに御飯のお礼も合わせて、親愛の証としてキスをくれたんじゃないかって、そう思います」 龍鳳が、鯨のぬいぐるみをきゅっと抱いた。

2015-03-30 22:58:15
とある舞鎮の艦娘たち @S_side_story

「…私ね」 龍鳳が呟く。その声のトーンが低かったので、私は注意深く龍鳳に耳を傾けた。 「…気持ちよくなっちゃってたの」 「…え?」 え…何を言っているんですか、龍鳳…。 「私、雲龍にキスや耳を弄られて、気持ちよくなっちゃってたの…。私…軽い女なのかな…」 …え、えーと。

2015-03-30 23:01:41
とある舞鎮の艦娘たち @S_side_story

「…龍鳳が悩んでいたのはそこだったんですか?」 …龍鳳が鯨のぬいぐるみに顔を埋める。 「…そんなことないですよ。相手が心底嫌でない限り、身体は多少反応してしまうものです」 …私は磯風にされているのを想像しながら言った。 「…そうなの?」 「ええ。だからそんなに気にしないで下さい」

2015-03-30 23:05:54
とある舞鎮の艦娘たち @S_side_story

龍鳳が顔をあげ、少し涙が浮かんでいる瞳を私に向ける。…少しだけ、私の胸が跳ねた。 「…本当に?貴女の言う親愛のキスで…そうなった私は変じゃない…?」 「…はい。変じゃない…です。だから、大丈夫です」

2015-03-30 23:11:09
とある舞鎮の艦娘たち @S_side_story

「…龍鳳?」 龍鳳の視線が私から離れない。ずっと…寂しそうな瞳が私を捉えていた。…私の胸に、龍鳳の掌が置かれる。そして、ゆっくりと、龍鳳が…。え? 「龍鳳…あの…っ…」 …視界が暗くなる。龍鳳で、電灯光が遮られた。…私の口が、塞がれた。

2015-03-30 23:15:50
とある舞鎮の艦娘たち @S_side_story

「…私からの、親愛のキスだよ」 私は今の状況が把握できず、思考が数秒止まった。龍鳳の潤んだ瞳が間近にある。…龍鳳の熱い吐息が私の唇に吹きかかる。…私は霞がかかりそうになる頭をなんとか叩き起こし、思考を回す。そして龍鳳が求めているもの、それを察した。

2015-03-30 23:21:29
とある舞鎮の艦娘たち @S_side_story

…唇を割って、龍鳳の舌が入ってくる。彼女の舌は私の舌を探り当てると、何かを求めるように突いてきた。…私は龍鳳の舌をすくう様に私のそれを絡ませる。 「ぁ…んっ…あむ…」 私と龍鳳の唾液が混ざり、溶け合っていく…。

2015-03-30 23:26:50
とある舞鎮の艦娘たち @S_side_story

「んっ…ふ…ぁ…」 私が舌を動かす度に、龍鳳はその身体を小さく震わせた。同時に、彼女の味が私の頭を痺れさせる。…やがて、徐々に龍鳳の身体の力が抜けていくのを感じ、私は彼女の華奢な肩に手を回して支えることに必死になった。

2015-03-30 23:32:15
とある舞鎮の艦娘たち @S_side_story

「あっ…んっ…んん…っ!」 …龍鳳が、私の腕の中で身体を強張らせた。私は彼女の震えが落ち着くのを見計らって、ゆっくりと唇を離す。…唾液の橋が、私達を繋いでいた。 「ぁ…は…」 龍鳳は、そのまま口を僅かに開けたままぼんやりとしていた。…その姿は、とても淫靡だった。

2015-03-30 23:39:09
とある舞鎮の艦娘たち @S_side_story

…私の胸の上で脱力している龍鳳の頭を、優しく撫でる。龍鳳は少しずつ本来の呼吸を取り戻しながら、私の手にその身を任せていた。 「…ねぇ、浜風…」 「…はい」 「浜風は…どうなっちゃった…?」 「…気持ちよかった…です」 「…そっか」

2015-03-30 23:45:13
とある舞鎮の艦娘たち @S_side_story

「…浜風は、私のこと…好き?」 「私は…かつての僚艦として、そして今を共に歩む仲間として…大切に想っています」 「…親愛?」 「…はい」 …私の言葉に、龍鳳は満足そうに微笑んだ。 「…ありがとう、浜風…」

2015-03-30 23:52:58
とある舞鎮の艦娘たち @S_side_story

「私もね、気持ちよくなっちゃった…」 私は身体が震えた。龍鳳が突然、私の腹部に指を這わせてきたから。…龍鳳はそんな私にお構いなしに、甘えるように肌の上で指を回しなぞる。…正直、きついものがあった。これ以上、変な気持ちにさせられたら…。

2015-03-30 23:59:31
とある舞鎮の艦娘たち @S_side_story

「…そろそろ時雨達が戻ってくると思います。ですので…」 「…うん」 私はそう返事をした龍鳳が、自分から離れてくれるのを待った。しかし、動く気配が感じられない。…私はゆっくりと肩を押し、龍鳳に離れてもらった。 「…そんなに寂しそうな顔しないで下さい」 龍鳳の髪を撫でる。…綺麗な髪。

2015-03-31 00:05:57
とある舞鎮の艦娘たち @S_side_story

…最後に、私は龍鳳の額にキスをした。意味は…「親愛」。 「…おやすみなさい、龍鳳」 「うん…おやすみ」 …私は龍鳳に気づかれない程度に、足早に部屋を後にした。

2015-03-31 00:10:54
とある舞鎮の艦娘たち @S_side_story

…廊下の陰。私はそこに座り込んでいた。…今になって、今になって色んな感情が押し寄せてきた。胸が激しく鼓動する。呼吸が乱れる。…頭が、ぐちゃぐちゃになってしまっていた。 「は…ぁ…龍鳳…私…」 首を振る。感情を振り払う。私は、私は龍鳳を傍で支え、護る。それが使命。こんな想いは…。

2015-03-31 00:17:50