二日目、逢魔時 - 今様に落つる怪奇譚

2015/04/11から2015/04/14までの、人間とあやかしの語らいの様子です。
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蓮田 颯丞 @hasterMissing

最近、夕暮れが迫るのが早い気がする。 窓の外を見ていた夕奈は、そんな事を考えた。 時間が飛んだような錯覚、いや、あるいは錯覚などではないのかもしれないが。 そういった違和感自体は昨日からあった。あったところで、どうしようもないのだけれど。

2015-04-12 04:35:34
蓮田 颯丞 @hasterMissing

…ここはあやかしの長、今様なるものがいるところ。 そんな場所に時間などあってないようなものなのかもしれないし、自分がどうにかできるとも思えない。 ただ、何がしたいんだろうとは思ってしまう。 いくつもの昼と夜を経過させ、浦島太郎にしてしまうつもりだろうか。

2015-04-12 04:36:27
蓮田 颯丞 @hasterMissing

……有り得ない話ではない、と思ってしまった。 少なくともとうかを始め、彼等は信用できる相手ではあるが、今様とやらは分からない。 あるいはあやかしの事しか考えてなくて、私達をここに閉じ込めるつもりなのかもしれない。 そうでなかったとしても、あやかしの長が、人間を帰すという保証はない

2015-04-12 04:37:59
蓮田 颯丞 @hasterMissing

殻に籠る思考。まず疑いの目を向ける生き方。 夕菜は内気なだけでなく、臆病だった。臆病ゆえに不安がらなければ生きていけない。不安に思わず行動するという事ができないのだ。 故に彼女はあやかしを疑い、信用し、そして次は今様へと疑いの目を向ける。

2015-04-12 04:40:39
蓮田 颯丞 @hasterMissing

「……誰か、いないかな」 しかし、それを探る手段は誰かに聞く、以外にない。 それを聞きたくて、夕陽差し込む寺の中をとてとてと歩き回る。

2015-04-12 04:41:15
白堀之水藤 @sirafji

蓮はねぶるを追いかけ本堂へ。 またどこか出掛けると言う黒いのには遊灯華を遣った。 故に残るのは…己と彼女。 暮れていく日。 鍋をつついた後各々好きに過ごしていたが、いつの間にかこうやって日が暮れる。 どう考えても暮れるのが早い。此処が今様の作り上げた空間というのなら納得はいくが。

2015-04-12 10:46:34
白堀之水藤 @sirafji

其れは、寺の濡れ縁に腰掛けていた。 煙管を咥えつつ、うろうろする彼女を見遣っていた。 …この姿で驚かせてしまったものだから、どうも声をかけづらい。 蓮にはふざけて驚かせたものの、彼女の場合そんなことしたら深刻な溝ができる気がする。 悩んだ末。

2015-04-12 10:47:04
白堀之水藤 @sirafji

「…そろそろ日が暮れるし、散歩は打ち切りにしたらどうだ」 と夕日の中、こっちに来いと言わんばかりに己の隣をトントンと叩く。 …このまま声をかけない方が、ふと視界に入った時に驚かれる気がした。

2015-04-12 10:47:25
蓮田 颯丞 @hasterMissing

声を掛けられれば、びくりと竦み上がるようにして動きを止める。 それから声を掛けられた方向を見て、少しの沈黙。 気を遣ってくれている、というのは伝わるものの、それですんなり気を許せる程に夕奈は勇敢ではなかった。

2015-04-12 18:42:16
蓮田 颯丞 @hasterMissing

かといって、声を掛けられて堂々と無視して立ち去る事もできない。 何より彼女は、他の誰よりもあやかしというものを知っている気がした。 自分の聞きたい事の答えを、知っているかもしれない。 夕奈は少し躊躇った後、ゆっくりと水藤の隣へと向かい。手前でやはり少し躊躇った後、隣に腰掛ける。

2015-04-12 18:43:55
蓮田 颯丞 @hasterMissing

「…………」 隣、とはいっても20㎝程の距離はあった。それは夕奈の水藤に対しての心の距離でもある。 ちらちらと顔を伺い、俯き。また少ししたら伺い、また俯く。 聞けば答えてくれそうだと思うものの、萎縮したように彼女は口を開こうとしない。

2015-04-12 18:49:10
蓮田 颯丞 @hasterMissing

水藤が苦手なわけではない。それは、水藤が強い故である。 弱い人間の中でも、殊更に弱い夕奈にとって水藤の強さは究極の異質、究極の未知だった。 堂々とした振る舞いも、冷静な思考も、自信に満ちた言動も。 雀が鷹の気持ちを理解できないように、弱い夕奈は水藤の強さを理解できない。

2015-04-12 18:53:49
蓮田 颯丞 @hasterMissing

別格。別次元。雲の上のひと。夕奈にとって水藤は、そういった遠い存在なのだ。 同じ地上に立ち、同じものを見ているなど夢にも思わない。 弱い自分には彼女の事が理解できない。理解できるわけがないと、最初から目を閉じてしまっている。言動の一つ一つに萎縮しきっている。

2015-04-12 19:00:40
白堀之水藤 @sirafji

近いような、遠いような距離。 拒まれなかっただけ幸いと言うべきなのだろうか、はてさて。 先程から何度かチラとこちらを見ているのは気がついているものの、其れが何だと口開くことはない。 死にかけているあやかしとはいえ、悠久を生きたもの。人間より何倍も長く生きる其れは待つことを知る。

2015-04-12 19:42:55
白堀之水藤 @sirafji

幾らでも、どれほど長くなろうと急かすことはない。それだけの時間があるのだから。 ただ沈みゆく夕日の中、空を見続ける。 建物が変わろうと、人が変わろうと、それでこそ長く生きる其れ以上に変わらぬであろう景色。 だから、

2015-04-12 19:43:24
白堀之水藤 @sirafji

「…お、あれ見てみろ。あれあれ。あの雲、猫みたいじゃないか?……っふふ、」 クスクスと笑み空へ指差す。 この娘は出会ってからずっと、横か下しか見てないものだから。 同じ地の元、同じ高さの元。 少しぐらい上を見たって良かろうに。

2015-04-12 19:44:20
蓮田 颯丞 @hasterMissing

「? ……どれですか?」 指さされて、首を上げて夕暮れの空を見る。 朝と夜の間。空を呑み込むような橙色に浮かぶ白い雲は、どこか寂しくて綺麗だった。 懸命に目を凝らして、水藤が示したのとはまったく違う雲を指さして。 「あの…ビルの影にあるものですか?」

2015-04-12 22:41:40
白堀之水藤 @sirafji

「あ?…違う違う、あの…何か変なアンテナあるビルの斜め上!」 全く別のものを差していると気づき、片側…彼女側へ床についていた腕をずらし目線を合わせ指を指す。

2015-04-12 23:08:09
蓮田 颯丞 @hasterMissing

「…………」 触られた腕を、少し驚いた表情で見る。 が、すぐに目線は己の指先に向かい。じい、と目を凝らして。 「…………猫、ですか…?」 眉をハの字にする。 「私には、犬に見えました」

2015-04-12 23:56:41
白堀之水藤 @sirafji

「いや絶対猫だろ!猫!……いや、犬に見えんことも…」 うーんと唸りつつ凝視。 だが雲は己のように待ってはくれない。風に流され形を変えていく。 「…あー、……あ、隣!あそこ!あれは狐!狐だろ!」 と、また別の雲を差してはそんな事。 闇が迫り星もちらほら輝き始めた空。

2015-04-13 00:26:50
白堀之水藤 @sirafji

本格的に日が沈み夜が訪れたのなら、今度は星を指差しどの星と星を繋げば何の星座かなんて知ってることを隣の彼女へ自慢げに話しかけてやる。 己自身でも少し子供っぽいなとは思った。 ただ隣に座る彼女には上を向いて欲しくて、あやかしも人間も見ているのは同じだと知ってほしくて指を差し続ける。

2015-04-13 00:27:40
白堀之水藤 @sirafji

彼女色々抱えているのは簡単に察することができた。 何となく、己からそれを聞き出してはあまり意味がない気もした。 正直人間と話すことは殆どなく、昨夜の蓮とはまた違う彼女への接し方がよくわからないと言うのもある。

2015-04-13 00:28:40
白堀之水藤 @sirafji

でも今は彼女が少しでも心を開いて同じものをみて、自分から話してもらうのを待つべきだと感じた。

2015-04-13 00:29:11
蓮田 颯丞 @hasterMissing

「狐…それは見えますね。あ、あの雲。アレ、飛行機の形してません?」 言い合って夕の空。 陽が沈み、星座の話を聞く夜の空。 水藤の語る星座の話を興味深そうに聞き、たまに聞きかじったギリシャ神話の話をする。 臆した様子はなく、対等の相手として接していた。

2015-04-13 01:11:30
蓮田 颯丞 @hasterMissing

遠い遠いと思っていた距離も、結局のところはその程度のものでしかないのだ。 あやかしと人間、強いものと弱いもの、年長者と年少者。 水藤が気を遣ってくれたのも大きいが、それでも話してみればなんだ、こんなものかと思うほどあっさりと。

2015-04-13 01:14:02
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