ジ・アイランド・オブ・ドクター・ベップ #3

更新五分前に忍殺が始まりました
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劉度 @arther456

◇◇◇◇◇◇◇ ←九十一式徹甲弾

2015-04-17 21:00:34
劉度 @arther456

(これからSSを投下します。TLに長文が投下されますので、気になる方はリムーブ・ミュートなどお気軽にどうぞ。投下中はTLを余り見ないので、感想・実況などを #ryudo_ss に書いて頂けると、後でチェックして小躍りします。では、宜しければ暫くの間お付き合い下さいませ)

2015-04-17 21:01:30
劉度 @arther456

※注意※ 今回のSSにはホラー、スプラッター要素が多分に含まれます。苦手な方は明日まで本アカウントをミュートしておくことを推奨します。

2015-04-17 21:02:41
劉度 @arther456

【ジ・アイランド・オブ・ドクター・ベップ】#3

2015-04-17 21:03:31
劉度 @arther456

無数の腕と足が、肉塊から生えていた。肌色の肉塊から生える手足はウニのようで、それぞれが勝手に動いている。手足は、どれも全く違うものだ。爪の長い手、黒人の足、女性の腕、傷だらけの足、熊の前足、イカの触腕、それら全てを、一つの胴体が受け入れている。 1

2015-04-17 21:06:07
劉度 @arther456

「予想以上だ。素晴らしいな、君は」白衣を真っ赤に染めて、異形の肉塊の傍らに立つのは、白髪の少女だった。「一通りのサンプルを継いでみたが、拒絶反応が全くない。人間どころが、爬虫類や魚類でもだ。脳機能さえ拡張すれば、君はどんな体にでもなれるよ」 2

2015-04-17 21:09:21
劉度 @arther456

白髪の少女は、後ろに控えた給仕に顔を向ける。「チカ、コウ。新しい腕の調子はどうだい?」「はい」「全く問題ありません」「他人への移植も問題なしだ。おめでとう」少女は再び前を向く。そこには、拘束衣を着せられ車椅子に縛り付けられた囚人がいた。 3

2015-04-17 21:12:31
劉度 @arther456

「ふざけんな!こんなことして、何が楽しいんだ!何が……ッ!」囚人の声には、怒りと怯えが混ざっている。その口元には、拭き残した吐瀉物が残っていた。「楽しみでやっているんじゃない。実験だよ、これは」少女は澄ました顔で、しかし声音には興奮を交えて語り始めた。 4

2015-04-17 21:19:25
劉度 @arther456

「人体移植は難しいんだ。ただ血管と神経を繋げればいいわけじゃない。血液型や拒絶反応を考慮しないといけない。それに厄介なのは免疫だ。後天的な免疫はクローンじゃ対応できない。お陰で今までの実験はコピー頼りだったよ。だけどこれでようやく、私の研究は次のステージに移れる」 5

2015-04-17 21:22:34
劉度 @arther456

「次の……?」「ああ。君は、人を人たらしめるものは何だと思っている?」突然投げかけられた、禅問答のような問い。囚人に答える気はない。この少女と話すのが、ただただ不快だった。「……まあいい。私はね、人の本質は肉体ではなく、精神、魂と呼ぶべきものだと考えている」 6

2015-04-17 21:25:43
劉度 @arther456

「何、宗教?科学者が何言ってんの、バカバカしい」「実験結果がそれを示しているんだよ。例えば、ある双子の片方に薬品を注入し、眼球の色を変化させる。すると一ヶ月後、双子のもう片方も眼球の色が変わり始めたんだ」「……え?」「三ヶ月後には、双子の瞳は同じ色になっていたよ」 7

2015-04-17 21:28:55
劉度 @arther456

「ならば双子を一つの生命体にしたらどうか。シャム双生児を参考にして、私は双子を結合させた。結果は大成功だったよ。不完全な魂同士が互いを補い、認識能力や魔力が飛躍的に上昇したんだ。ただ、肉体の感染症と拒絶反応で死んでしまったのは、本当に残念だったね」 8

2015-04-17 21:32:05
劉度 @arther456

滔々と語る、余りにも常軌を逸した実験。だが、彼女の語るテーマに、囚人は心当たりがあった。「待ってくれ……双子の研究、魂の解明……まさかお前、別府博士、なのか……?」囚人が口にした名前は、かつて日本海軍で艦霊のメカニズムを研究していた博士の名前だった。 9

2015-04-17 21:35:18
劉度 @arther456

日本は艦娘を中心として深海棲艦に対抗しているものの、艦娘の全てが解明されているわけではない。特に艤装のコアとも言うべき艦霊は、20年前にようやく再発見された魔法同様、ブラックボックス状態だ。別府博士はその艦霊のメカニズムの研究における第一人者だった。 10

2015-04-17 21:38:28
劉度 @arther456

だが、彼の目的は艦霊ではなく、霊や魂そのものだった。そのための冒涜的な実験が露見したのは、彼が設計した翔鶴型の艤装が暴走した時だ。憲兵が踏み込んだ時、研究所には体を繋ぎ合わされた多くの双子の死体が残っていただけで、博士は既に行方をくらませていた。 11

2015-04-17 21:41:41
劉度 @arther456

「私を知っているのか。なら名前の呼び方ぐらい、ちゃんとしたものにして欲しいが」「やっぱり……!いや待て、その格好、どういうこと!?」少女はあっさり自分を別府博士だと認めたが、それは逆に囚人を混乱させた。なぜなら囚人の知る別府博士は、70歳過ぎの男性だからだ。 12

2015-04-17 21:45:01
劉度 @arther456

「ああ、これかい」別府博士は、自分の細い両腕を見下ろし、事も無げに言った。「クライアントの要望だ。響の艦霊を宿した艦娘の体だよ。中々使い勝手がいい」「どういうこと……?」「これも一つの魂の証明だよ。肉体は3つ目だが、私の魂は、意識は、150年前から連続している」 13

2015-04-17 21:48:16
劉度 @arther456

「150年……」なら、囚人の知る別府博士の姿すら本当の姿とは違うというのか。体を次々乗り換える、まるで人間離れしたその精神は、一体何から来ているのか。理解できない事象を何とか把握しようと、囚人が問い詰めようとしたその時、部屋が大きく揺れた。 14

2015-04-17 21:51:52
劉度 @arther456

少女も囚人も、この揺れ方を知っていた。地震ではない。何かがぶつかり、爆発した揺れ。「砲撃……!?」少女は訝しみ、囚人は目を輝かせた。「チカ、コウ、上の様子を見に行ってくるんだ。場合によっては、交戦も許可する」「畏まりました」「ドクター」 15

2015-04-17 21:55:04
劉度 @arther456

後方に控えていた給仕が、階段を昇っていく。「来た来た来たぁ!いよいよ日本海軍様のご到着だ!」一方囚人は、車椅子をガタガタ揺らして喜んでいた。拘束衣がなければ、手を打ち鳴らしている勢いだ。「どうだろうね。はぐれた艦娘かもしれないよ?ならチカとコウで十分だ」 16

2015-04-17 21:58:18
劉度 @arther456

それだけ言って、白衣の少女は肉塊に向き直る。手に握るのは医療用電動ノコギリ。「……何する気?」「手術の続きさ。言っただろう?脳機能さえ拡張すれば、君は何にでもなれると」ノコギリが頭蓋に差し込まれた。聞くに堪えない叫び声が、肉塊の口から漏れる。 17

2015-04-17 22:01:34
劉度 @arther456

「脳はもう複製してある。まずこの手を自分の意志で自由に動かせるよう、一次運動野を増やしてみようか」何かのクラシックのメロディを口ずさみながら、少女が自分と同じ顔をノコギリで切り開いていく様子を、囚人は青ざめた顔で見ていることしかできなかった。 18

2015-04-17 22:04:46
劉度 @arther456

別府博士の研究所は海岸近くに建っている。周囲の海には対深海棲艦用機雷や防潜網が敷かれ、陸には多くの怪物たちが這いずりまわっている。通信のための電波塔や、監視塔などの施設は建っているものの、普通の人影はまるで見当たらない。まさに化物の巣窟であった。 20

2015-04-17 22:08:06