#トラ泊神戸支部~激闘の本土近海決戦編⑦

Twitter上で書いている、自分のところの鎮守府をモチーフにしたSSのまとめとなります。 4月25日更新。
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ですか @desuka_desuyo

慌ただしい司令室に、艦隊帰投の知らせが届く。先遣隊は誰も欠かすことなく帰ってきたようだ。俺は皆が帰って来てくれたことに少し安堵した。が、喜んでばかりもいられない。彼女らが得た情報はかなり厳しい現状を物語っているのだ。 #トラ泊神戸支部

2015-04-25 23:43:32
ですか @desuka_desuyo

数分後。執務室に先遣隊の六人が現れた。俺は先程の戦闘についての報告に耳を傾ける。戦闘の様子は彼女たちと共に出撃させたドローンによってリアルタイムで見ていたが、戦っている彼女たち自身が感じたことも重要な情報で欠かすことは出来ない。 #トラ泊神戸支部

2015-04-25 23:48:17
ですか @desuka_desuyo

一通りの報告を聞いた俺は、ドックに行くよう指示した。。 「まだまだ作戦は始まったばかりだ。しっかり休んで次に備えてくれ」 「ハーイ!お風呂お風呂~」 そう言って元気よく返事をして、そそくさと執務室を出て行ったのは鈴谷だ。横を見ると熊野が額に手を当て呆れている。 #トラ泊神戸支部

2015-04-25 23:53:09
ですか @desuka_desuyo

他の娘たちもそれに続いてドックに向かう中、青葉だけが俺の方へとやってきた。それに気付いたのか古鷹も続いてやってくる。 「司令官、すみません」 俺の元へ来て早々、しょんぼりとした表情で青葉が謝った。 「なんのことだ?」 #トラ泊神戸支部

2015-04-25 23:58:38
ですか @desuka_desuyo

「さっきの戦いのことです。青葉が自分で偵察に志願したというのに、何も結果が得られなかったので…」 そう言って俯く青葉に声をかける。 「気にするな。俺も一緒だ。相手の力を見誤っていた」 「司令官…」 顔を上げた青葉の目には自らの不甲斐なさからか、涙で滲んでいた。 #トラ泊神戸支部

2015-04-26 00:05:27
ですか @desuka_desuyo

「いいえ。気にして下さらないと困りますわね」 横からそう言って声をかけてきたのは、熊野だ。 「うぅ。すみません、熊野さん」 熊野にも謝る青葉に対し、彼女はさらに言葉を続けた。 「青葉。どうしてこの戦闘で負けたのか分かりますか?」 #トラ泊神戸支部

2015-04-26 00:10:57
ですか @desuka_desuyo

「え~っと、なぜ負けたかですか?う~ん…」 熊野の問いかけに、青葉が唸る。その様子を見て答えが出ないだろうと感じたのか、熊野が話し始めた。 「先程の戦い。私もこちらから見させていただきました。ハッキリ言いますと、見ていられなかったですわね」 #トラ泊神戸支部

2015-04-26 00:18:18
ですか @desuka_desuyo

「すみません」 「謝るぐらいならもっとしっかりしてくださいませ。これはお遊びじゃないんですわよ。重巡の中でもトップの練度だというのに」 「そ、そこまで言わなくても…。青葉だって頑張って…」 「貴女もですわよ、古鷹」 熊野の言葉に古鷹がビクリと肩を震わせる。 #トラ泊神戸支部

2015-04-26 00:27:45
ですか @desuka_desuyo

「では、貴女にも聞きますわ。なぜ、撤退しなければならなかったのか」 「それは、敵の力が強かったから」 「本当に?」 「本当に?ってそれは熊野も見ていただろ?」 「提督は黙っていてくださいまし」 熊野の剣幕に気圧され、俺はとりあえず見守ることにした。 #トラ泊神戸支部

2015-04-26 00:33:30
ですか @desuka_desuyo

「確かに敵は強敵でしたわ。でも、本当にそれが理由でしょうか」 「どういう…ことですか?」 古鷹が不安そうな顔で熊野に聞き返す。熊野は少しだけ目を閉じ、なにか決心したかのように口を開いた。 「はっきり言いますわ。今回の敗因。原因は貴女ですわ、古鷹」 #トラ泊神戸支部

2015-04-26 00:39:44
ですか @desuka_desuyo

「な、何言ってるんですか熊野さん」 青葉の言葉に見向きもせず、熊野は古鷹をまっすぐに見つめている。 「私が…ですか?」 原因と名指しされた古鷹は、声を震わせながら熊野に問いかけた。 「えぇ、そうですわ。自分のことなら分かるでしょう?なぜ被弾したのかを」 #トラ泊神戸支部

2015-04-26 00:44:21
ですか @desuka_desuyo

「なぜって、それは…」 「自分の口から言えないのであれば、私が代わりにお応えしてあげますわ。古鷹、貴女は戦闘中でありながら余所見をしていた。そうでしょう?」 熊野の言葉に古鷹がゴクリと唾を飲み込んだ。青葉の方はというと、熊野の言葉に顔を青くしている。 #トラ泊神戸支部

2015-04-26 00:55:36
ですか @desuka_desuyo

「誰を見ていたか…そこまで私が答えてあげなければいけないのですか?」 黙りこんだ古鷹に熊野が言い放つ。それに観念したのか古鷹がか細い声で答えた。 「青葉を…見ていました」 しばしの沈黙が執務室に流れる。周りの皆も熊野たちのやり取りを静かに見守っているようだった。 #トラ泊神戸支部

2015-04-26 01:01:59
ですか @desuka_desuyo

「べっ、別にそれだけじゃ…。そんなの古鷹一人に押し付けすぎですよ!」 最初に口を開いたのは青葉だ。確かに青葉の言うことは良く分かる。今回の撤退は誰か一人の原因ではないだろう。 「えぇ、それはそうでしょう。でも、確実に流れが変わったのは、古鷹の被弾からですわ」 #トラ泊神戸支部

2015-04-26 01:09:30
ですか @desuka_desuyo

「でも、被弾することなんて誰にだって…」 「貴女たちはこの泊地の中でもトップに立つ練度を持っているのですよ。格下の相手にあんな一撃を食らうだなんて、油断していたにも程があるでしょう!」 熊野の言葉に青葉が唸る。古鷹はというと黙って熊野の言葉を聞いていた。 #トラ泊神戸支部

2015-04-26 01:15:05
ですか @desuka_desuyo

そんな古鷹に向かって、熊野が言葉を投げかけた。 「仲良し小好しをするのは結構。でも、戦闘中ですら相手を見続けるのは、相手を信頼出来てないということではなくて?そんな生半可な気持ちで来られても困ります。ハッキリ言って邪魔ですわ」 古鷹が突然扉の方へと駆けだした。 #トラ泊神戸支部

2015-04-26 01:19:23
ですか @desuka_desuyo

「古鷹!」 「ぼさっとしてないで早く後を追いなさい青葉!」 熊野にそう言われ、慌てて青葉も走り出した。青葉の背中を見送って、熊野がふぅとため息を吐く。 「見ているだけではやきもきしてしまいますわね」 「言いすぎじゃないのか?」 #トラ泊神戸支部

2015-04-26 01:24:02
ですか @desuka_desuyo

そう声をかけると、熊野は肩をすくませて答えた。 「時には厳しさも必要ですわ。それにフォローは用意してますし」 そう言って二人が去っていった扉を少しの間見つめ、熊野はこちらに向き直った。 「ぼさっとしてはいられませんわよ。作戦はまだ始まったばかりなのでしょう?」 #トラ泊神戸支部

2015-04-26 01:33:09
ですか @desuka_desuyo

「そうだな。まぁあいつらのこと、これからも気にかけてやってくれ」 俺の言葉に熊野はもう一度ため息を吐いて答えた。 「…まぁ、良いですけれど」 なんだかんだ言いつつ世話を焼く辺り熊野らしい。そう思いながら俺は執務室の全員に声をかけた。 「よし、次の編成を決めるぞ」 #トラ泊神戸支部

2015-04-26 01:37:51
ですか @desuka_desuyo

古鷹を追って懸命に走る。泣きながら走っているのか、時折ふらつくのが心臓に悪い。が、なかなか追いつけない。古鷹が建物の外に飛び出すのを見て、慌てて私も後に続いた。突然の陽の光に一瞬目が眩む。サッと手で陽を隠すと、立ち止まった古鷹ともう一人の姿が目に入った。 #トラ泊神戸支部

2015-04-26 01:44:18
ですか @desuka_desuyo

「チーッス。二人ともそんなに走ってどうしたのさ?」 棒付き飴をくわえた鈴谷が手を振って話しかけてくる。とりあえず私は立ち止まった古鷹のもとまで駆け寄った。へらっとしていた鈴谷も様子がおかしいと気付いたのか、俯く古鷹の顔を覗き込んでから口を開く。 #トラ泊神戸支部

2015-04-26 01:48:43
ですか @desuka_desuyo

「んん?さては熊野になんか言われたな~?ほんっと熊野ってば頭堅いんだから~。どうせなんか難しいこと言われたんでしょ?気にしなくていいんだよ、そんなの。気楽にいこうよ、気楽に。そうだ、飴食べる?」 そう言って無理やり私たちに飴を手渡してくる。 #トラ泊神戸支部

2015-04-26 01:53:53
ですか @desuka_desuyo

「鈴谷さん。質問しても良いですか?」 古鷹の問いかけに鈴谷が景気よく答えた。 「なになに~?」 「熊野さんのこと信用してますか?」 「唐突だね~。うん、してるよ」 「じゃあ一緒に出撃することは?」 「それは全然」 やれやれというように身振りを加えて鈴谷が答える。 #トラ泊神戸支部

2015-04-26 01:59:32
ですか @desuka_desuyo

「それはどうして?」 「えーっとねぇ。なーんか二人で出撃するとどっちか被弾しちゃうんだよねぇ。で、熊野が別々にしてくれ!って」 鈴谷の答えに古鷹が目を丸くする。正直私もビックリだ。あぁ言っていた熊野さんだって一緒だったのだ。 #トラ泊神戸支部

2015-04-26 02:06:58