- nozakitakehide
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そして「とゆうと――さいわい――いや、目的があつてのことだが――こちらからたずねてみたのである。山本有三さんにである。」と續く。雜誌に印刷されたままである。
2015-05-24 16:40:49「先生、岡本かの子のものをお讀みですか。」 「いや、あまり讀まないね。人間を知つてると、讀みたくなくなるものだ。あの女の趣味わ、おれにわ合わねえな。いちど會つたことがあるが、どうもあんまりケバケバ(※踊り字)しい身なりをしてゐるんでねえ……」
2015-05-24 16:42:00「これでわもう取りつくしまもないわけだ。それでもだいいちに、かの子の居常のはで好みであること、だい二に、そのことが一部の人に反ぱつしんを起させること、この二つの事實を知りえたことで、わたしの質問わあながちみのりのないものでもなかつた、といえよう。」
2015-05-24 16:43:52小林英夫は、ソシュールを日本に紹介した言語學者で、有名な表音主義者。のちに「こばやしひでお」とかなで名前を書くやうになるが、この頃は漢字で署名してゐたらしい。
2015-05-24 16:45:26「このことわ、たとえば、ルスとゆう人の『藝術創作論』のような、動態美學の所説のうらがきすうるところである。ルスによれば、藝術家とゆうものわ、精神のきんこうそうしつにうながされて、その立てなおしに全身全靈を傾けつくすものなのだ。
2015-05-24 16:47:29うらがきすうるところである。→うらがきするところである。
その内部苦惱わ生具の道具をつかうことによつて、醫やすことのできるほど弱いものでわなく、かえつて、なにか外物を破かいし、それを變形することによつてのほかわ、とりしづめることのできないほど、強れつなものなのだ。
2015-05-24 16:48:53「この事は例へばルスと云ふ人の『藝術創作論』のやうな動態美學の所説の裏書するところである。ルスによれば藝術家と云ふものは精神の均衡喪失に促されてその立直しに全身全靈を傾け盡すものなのだ。
2015-05-24 16:51:21その内部苦惱は生具の道具を使ふ事によつて醫す事の出來る程弱いものではなく、却つて何か外物を破壞し、それを變形する事によつての他は取鎭める事の出來ない程、強烈なものなのだ。藝術は單なる技巧ではなく、内部燃燒の外的表現でなければならない、と言ふ訣はここにある。」
2015-05-24 16:52:21かなを漢字に戻せば壓縮出來る文章で、もとの文章も漢語の存在を前提にしてゐるから、かなで書いてあるからと言つて判りやすいものでもない。
2015-05-24 16:53:54「人間」昭和二十一年六月號141ページ。小林英夫「かの子文體論おぼえがき」の一部。 pic.twitter.com/Ui1OcoeGlE
2015-05-24 17:04:36こばやしひでお『言語学通論』改訂第5版。表紙。pp.142-143。 pic.twitter.com/YQGIWkBj4e
2015-05-24 17:22:00