中国文豪、老舎のアンチユートピア小説『猫の国(猫城記)』について

滝季山影一(@ETakiyam)氏のつぶやきをまとめました。
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リンク Wikipedia 老舎 老舎(ろうしゃ)は中華人民共和国の小説家、劇作家。本名は舒慶春、字は舎予。老舎とはペンネームで、苗字の「舒」の字の偏をとったものとされる。北京出身。満州族(正紅旗)。北京の町と人々をこよなく愛し、「北京之花」「人民芸術家」「語言大師」と称された。文化大革命で犠牲となった代表的な著名人でもある。 代表作に小説『駱駝祥子』『四世同堂』『正紅旗下』(遺作)、戯曲『龍鬚溝』『茶館』。 以後、新しい人民生活を反映する作品を中心に創作活動を続けた。 「1968年(もしくは1966年)にノーベル文学賞候補となるが、本人
滝季山景介(影一改め) @ETakiyam

老舎『猫の国』(原題『猫城記』)超久々に再読。魯迅と並ぶ中国文豪が1932年に書いた空想ディストピア小説。今回読んでるのは図書館で借りた学研の老舎全集ですが、サンリオSF文庫にあったのを覚えてる方もいらっしゃいましょう。これ、装丁・挿絵が和田誠だったら知名度がもっと高かったかも?

2015-05-25 07:27:45
瀬川深 Segawa Shin @segawashin

@ETakiyam 恥ずかしながら存在すら知りませんでした。これは興味ある!

2015-05-25 07:33:01
滝季山景介(影一改め) @ETakiyam

@segawashin 内容についてはこれから何日かでちょっとづつご紹介します。導入部だけいきなり「どSF」なのですw。

2015-05-25 08:10:22
滝季山景介(影一改め) @ETakiyam

老舎『猫の国』(原題『猫城記』)超久々に再読。魯迅と並ぶ中国文豪が1932年に書いた空想ディストピア小説。今回読んでるのは図書館で借りた学研の老舎全集ですが、サンリオSF文庫にあったのを覚えてる方もいらっしゃいましょう。これ、装丁・挿絵が和田誠だったら知名度がもっと高かったかも?

2015-05-25 07:27:45
滝季山景介(影一改め) @ETakiyam

老舎『猫の国』は、中国の飛行士を乗せたロケットが、猫から進化した猫人間の惑星に墜落するところから始まる。落ちたのはその世界で最も封建的で後進的な猫人間の国。当時の中国の現実がモデルとされるが、中国が本当にロケットを飛ばした今から見ると、逆に途方もないフィクションのようにも見える。

2015-05-26 06:20:18
滝季山景介(影一改め) @ETakiyam

【これが猫の国の住民だ!】・短毛に覆われている ・服は着ていない ・帝政である ・覚醒剤と同じ効果と中毒性をもつ「迷い葉」が主食 ・外国人(文明的な猫人間)の目と、脅しに弱い ・強く脅すとショックで死ぬ ・なにかと体面を気にするが、住環境は不潔で不衛生 ・命の価値がとても軽い

2015-05-26 06:24:14
滝季山景介(影一改め) @ETakiyam

@ETakiyam 【これが猫の国の住民だ!②】・猫の国の歴史は猫国人同士の虐殺と掠奪の歴史 ・女は男の従属物 ・病気も迷い葉で治すので医者がいない ・都の建物は万里の長城みたいに、ある線上に一直線に並んでいて、その場所以外にはない ・金持ちでも泥で固めた不潔な家に住んでいる

2015-05-26 06:32:40
滝季山景介(影一改め) @ETakiyam

@ETakiyam ロケットが粉々になったが助かった主人公は、迷い葉の大農園を経営する猫人間の地主オッサンに拾われて農園の収穫を手伝わされ、さらに都へ同行して、猫の国の退廃的な人物や絶望的な制度をあれこれ見ることになる。「どこに行っても、あるのは疑心と卑小と利己と残忍ばかりだ」

2015-05-26 06:34:28
滝季山景介(影一改め) @ETakiyam

猫の国の大学進学率は惑星ナンバーワン。学齢期に達した子どもがいきなり入るのが「大学」で、その日のうちに卒業証書を貰うからだw。高等教育を受けても社会のどこにも受け皿がないところへ、反知性主義や教育経費の大幅削減が絡んでこうなったらしい。1932年の作品だが、なぜか古さを感じない。

2015-05-26 12:08:47
滝季山景介(影一改め) @ETakiyam

@ETakiyam 猫の国では、服従精神を叩きこむことだけが「教育」で、学問は家庭教師を雇える金持ちの子弟だけが受けられる。その学問も「新しい」ものは、反逆者を生むからダメ!なんだって。高等教育機関のパロディは風刺文学の定番だが、1932年の作でここまで予見的なのは珍しい?

2015-05-26 12:19:01
滝季山景介(影一改め) @ETakiyam

@ETakiyam 「予見的もなにも、昔それに近い現実があったって話でしょ?」まあそうなんですが、この大学制度を導入するまでの猫国の歴史の中で言われてたことが、まんま今の日本の一部でも称揚されてる!と思いあたりまして。全文引用したいとこですが長すぎてムリなんですw。

2015-05-26 13:01:26
滝季山景介(影一改め) @ETakiyam

封建社会の猫の国も、昔は腐った立憲君主制だったが、共産主義政党ぽいものが出現、まず皇帝を殺害。次いで農民と労働者を解放しようとしたが、この国の農民は元々全く働かず、「労働者」に至っては概念すらなかったので、内ゲバ以外やることがなくなり、何だかんだで党の長が現・皇帝になったという。

2015-05-26 21:28:53
滝季山景介(影一改め) @ETakiyam

@ETakiyam 老舎『猫の国』、1932年の作品ですがあちこち突き抜けています。ちなみにこの国の経済は、おもに掠奪と外国への盗品売却で成り立っているそうです。

2015-05-26 21:31:29
滝季山景介(影一改め) @ETakiyam

ディストピアものといえばたいてい、規律・監視・統制で民衆を締めあげる世界を想像するが、ナチスドイツ以前に書かれた『猫の国』には、それとは逆の「あらゆる物事が極限まで弛緩した世界」が描かれている。80年代の初読では「動物農場のほうが面白いな~」と思ったが、今読み返すととても斬新。

2015-05-27 14:02:08
滝季山景介(影一改め) @ETakiyam

@ETakiyam というわけで『猫の国』ツイート、もう少し続きます(他に大したネタもないもんで)。終盤に急展開があるんですけどそこまで書こうかなどうしようかな~w

2015-05-27 14:05:18
滝季山景介(影一改め) @ETakiyam

@ETakiyam 老舎先生ご本人は、これを「ユーモアが足りない失敗作」と評したようですがどうしてどうして。絶望的な現実の反映とはいえ、逆に「グロテスクすぎて爆笑する」描写が随所に出てきます。様々な謎と回答の提示のタイミングや、小道具の使い方なども、文豪の仕事だけに巧いのです。

2015-05-27 14:59:27
滝季山景介(影一改め) @ETakiyam

@ETakiyam 老舎先生は本作を「風刺も辛辣ではない」と評してますが、辛辣でないどころか文化大革命時代には故国で発行禁止になり、80年代にも再評価されなかったとか。しかし本作を、単なる主張や皮肉の羅列とするのは大間違い。むしろ現実と空想世界の融合を試みた先駆的作品と思います。

2015-05-27 16:47:19
滝季山景介(影一改め) @ETakiyam

老舎『猫の国』、漫画化するならぜひ手塚先生で(断言)。猫人間の佇まい、惑星の自然の描写から、シリアスとコメディタッチの使い分け、政治風刺的要素まで、手塚先生なら本作のすべてを漫画で表現できると思うわー。主人公がヒョウタンツギの顔で「なんだって!?」と驚くとこまで想像できるよw。

2015-05-28 05:57:23
滝季山景介(影一改め) @ETakiyam

@ETakiyam 『猫の国』の主人公は、最初は奇妙な世界をただ眺めていたが、猫国人の怠惰や無責任を我慢できなくなり、中盤から最後まではずっと怒り、嘆いている。「ちゃんとしようよ!」と主張する数少ない猫人と交流したりするが、彼らは偽善者扱いされ非業の死をとげる。どこでも同じね!

2015-05-28 06:00:45
滝季山景介(影一改め) @ETakiyam

@ETakiyam そして終盤、それまであって無いようなものだったドラマが大きく動きだす。なんと外国軍の侵攻が始まったのだ。惑星には20ほどの国があるらしいが、今回の敵は最も残忍な種族の国。猫国人との違いはやや背が低いことと、どんな仕事も怠けず、迅速・正確無比にやりとげること。

2015-05-28 06:02:33
滝季山景介(影一改め) @ETakiyam

@ETakiyam 彼らは電気警棒のような武器を使い、投降者も含めた猫国人を無慈悲に大量殺害していく。目的は一切不明。モデルは勿論あのお国w。猫の国には外務省もあるが、仕事は「抗議」の二文字が彫られた石板を相手国に送るだけで、これが外交活動のすべて。これではとても戦争は防げない。

2015-05-28 06:06:06
滝季山景介(影一改め) @ETakiyam

@ETakiyam 対する猫の国の軍隊は高官たちが自前で組織したもので、労働者がいないぶん数はやたらと多い。富と権力を独占する上層部がわざと経済を破壊して、下層の者は兵隊になる以外食えない社会を作りあげたのだ。武器は木製の棍棒だけで、それも専ら同胞を殴りつけるのに使われている。

2015-05-28 06:09:05