Twitter創作交流企画『色彩決闘』――決勝戦

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『色彩決闘』管理アカウント @sikisaikettou

'△')<決勝戦 '△')<赤の国レグナよりフロリーシャ・ラウィーニーア(@flou_siki) '△')<青の国バイスよりシャンシェ=ティパフィス(@Siyayence_siki)

2015-05-23 17:57:49
『色彩決闘』管理アカウント @sikisaikettou

'△')<さあ時間だ!色彩の女神の祝福はもうすぐだ! '△')<勝者には祝福を!敗者には労いを!コロル・レグナの永き繁栄と平和の祈りを込めて—— >△<)<——デュエルッ!スタートッ!

2015-05-23 18:00:01
シャンシェ=ティパフィス @Siyayence_siki

——三度目の光景。 円形の広がる闘技場に、足を踏み入れる。結界を越えて耳を打つ歓声には、ひとつ、苦笑を浮かべて。 そうしてから、青の娘は顔を上げた。この大会に出る以上、これほどまでに無い栄誉が、もう眼前にまで迫っている。

2015-05-23 18:07:50
シャンシェ=ティパフィス @Siyayence_siki

呼吸を、一つ差し挟む。 そうしてから、更に数歩、進んだ。赤の奏者が現れれば、すぐに見えるように。こちらもまた、赤を見逃さないように。 ——赤の術は、一度見ていた。だからこそ、身構えるような心地もあるままで。

2015-05-23 18:07:51
フロリーシャ・ラウィーニーア @flou_siki

細剣を握り締め、その剣身を見つめる。キラリと光を反射する、師匠に貰った愛剣だ。準決勝の際、何処かへとやってしまったのだが、いつの間にか自室へ帰ってきていた。これも、あの色彩妖精がしきりに言う、女神の祝福なのだろうか。 軽く振るう。風を切る音がした。息を吐く。大丈夫、いつも通りだ。

2015-05-23 18:58:07
フロリーシャ・ラウィーニーア @flou_siki

一歩踏み入れれば、其処はもう闘技場。三度目にして最後の決闘。 フロリーシャは足を動かした。一瞬の躊躇。それを無かったことにして、結界を抜けて自身が立つべき舞台へ上がる。赤い髪が揺れる。なんだか気分が浮かないが、気にすることはない。 戦闘の昂揚は、全て潰してくれる。

2015-05-23 18:58:16
フロリーシャ・ラウィーニーア @flou_siki

前へ進み出る。青の姿が見える。立ち止まり、金の瞳で静かに見据える。身体の中をぐるりと巡る、“赤”はじわりと沸き上がる。 「……最後だな」 話しかけたのか、独り言だったのか。フロリーシャにもよく分からない。

2015-05-23 18:58:29
シャンシェ=ティパフィス @Siyayence_siki

赤が見えた。闘技場の向こう側、『赤』と『青』はこうして常に、対岸、決して触れ合う事の無い位置に立つ。 ——不思議と、恐怖も、それに近しい感情も感覚も浮かばなかった。赤い彼女の手の細剣は、昨日には見かけなかったものではあったけれど。 「——……」 赤が零した声は、青の娘にも届いた。

2015-05-23 19:38:38
シャンシェ=ティパフィス @Siyayence_siki

聴こえたそれには——青の娘は、ただ胸元に手を当てて、深く腰を折った。 水で出来た衣が、大きく揺れる。からんからんと氷同士がぶつかる音が響いた。 「『青の貴き血(シャンシェ=ティパフィス)』がお相手致します、フロリーシャ・ラウィーニーア様」 名告り、ゆっくりと顔を上げる。

2015-05-23 19:38:41
シャンシェ=ティパフィス @Siyayence_siki

——同時に、左手の先に氷。 今までのような瓶ではない。丸い輪を成した氷が、合わせて三つ。 手数勝負になるだろう。だから娘も触媒は多く従えている。自然の大気に在る水は、意志を伝えるにも難しい。触媒は『大海(ちち)』の水だ、数も限られるが。 「——宜しくお願い致しますね」

2015-05-23 19:38:43
シャンシェ=ティパフィス @Siyayence_siki

ふわりと、笑んで。 ——氷の更に凍る音が、鳴る。

2015-05-23 19:38:49
フロリーシャ・ラウィーニーア @flou_siki

青の声、氷の音。綺麗だな、素直にそう思った。 再度、剣身を見つめる。細剣の僅かな幅に、それでも自分の姿が見えた。金色の目と、赤い髪。赤の国の代表として立った、自分の姿。 息を吐き出す。そっと目を伏せ、思考が回る。 ——譲れないものの為に来た。 ——自分にとっての一番大切。

2015-05-23 22:54:47
フロリーシャ・ラウィーニーア @flou_siki

——約束した。必ず勝つと、言った。 ——なら、守らないと、ダメだ。 自分に出来ることは何か。意志を持って前進することだ。この場で全力を尽くし、今までに報いることだ。何も迷うことはない。 瞼を持ち上げる。金色の瞳が赤く輝く。赤い髪が揺れた。赤い燐光が溢れ出す。 “赤”が滾る。

2015-05-23 22:55:01
フロリーシャ・ラウィーニーア @flou_siki

「フロリーシャ・ラウィーニーア!」 相手に応えるように声を張った。 「俺は全力でいく!手ぇ抜くんじゃねーぞ、シャンシェ=ティパフィス!」 足を踏み出す。 「赤花奏術一式——」 細剣を振り上げる。 「——『紅蓮』」 それは陽光に煌めいて。 「『赤花』ァ——ッ!」

2015-05-23 22:55:17
フロリーシャ・ラウィーニーア @flou_siki

赤く滾る炎が奔り出す。愚直なまでに直進し、シャンシェを焼かんと向かう、策の無い純粋な炎。 水でも、氷でも。相手の奏術を知っていようと、いまいと。そんなことは、関係無い。策を張るほど賢く無い。 フロリーシャは常に、全力を出すだけだ。

2015-05-23 22:55:35
シャンシェ=ティパフィス @Siyayence_siki

猛る名告りが返って来た。赤い光が揺れる——それが奏力の顕れであるのなら、やはり『青』とは双極だと、思う。 「——《詠以て成す。全て水は此れに諾せよ》」 指先、氷が応える。剣が天を衝くのが、見えた。 被せかけるような声、言葉は、今までとは違う。『これから全ての声が命令となる』宣言。

2015-05-23 23:21:05
シャンシェ=ティパフィス @Siyayence_siki

「《数唄を記すは右指に 三次ぎ五の八——》」 炎が渦巻くのが見えた。向かって来る。見えて思ったところで、青の娘は、動かなかった。ただ手だけを、向かう『赤』へと向けた。 ——それはたとえ青の民であろうと知らぬ域。『シャンシェ』のみの、詠う水。 「《——九待たず零へ 八尋の壁に》」

2015-05-23 23:21:07
シャンシェ=ティパフィス @Siyayence_siki

瞬時に現れたのは分厚い氷の壁だった。来る紅蓮を阻む、蒼楯。 ——手を抜いて勝てる相手でないとは、解り切っていた。だから。 「《全力でお応え致します 死力を尽くし “挫きましょう”》」 左の手首。氷の環が一つ、砕けて。 紅蓮と蒼楯の衝突と同時。赤の足元から、矛が突き出し、捉えんと。

2015-05-23 23:21:09
フロリーシャ・ラウィーニーア @flou_siki

炎と氷がぶつかり合う。消されるだろうか。——そんなことはどうだっていい。 走り出そうとした。その足元から、氷の刃が現出する。当然のように、フロリーシャは避けられなかった。フロリーシャは戦士では無い。兵士では無い。 師匠の弟子だ。たった一人、ただそれだけ。 「……『隔壁血晶』」

2015-05-24 01:00:12
フロリーシャ・ラウィーニーア @flou_siki

呟く。氷に貫かれた右足と、地面の間に硬質化した血の壁を築く。氷は砕かれ、足は地面から解放される。残った氷を引き抜いて、その手で焼いた。 溶けて、消える。後には何も残らない。——それが赤の奏術だ。花は咲いても、散るより先に焼けて逝く。

2015-05-24 01:00:30
フロリーシャ・ラウィーニーア @flou_siki

足が酷く痛んだ。走るのは難しそうだが、出来ないこともない。動かせる。痛みは無視できる。どうせ後で治るのだ。——なら、構うものか。 流れ出る血は“赤”の領域。 「——十二式、『零糸赤花』」 言葉と共に、血で形成されたナイフが飛び出した。数にして四。 果たして氷の壁を抜けて行けるか。

2015-05-24 01:01:00
シャンシェ=ティパフィス @Siyayence_siki

楯は火伏にはならない、ただぶつかり相殺するだけ。 あるいは、赤の彼女は『消えた』と思うだろうか。だが溶け消える瞬間の蒸気と重さを僅かに増した空気が『青』の存在の証拠となる。 ——形が変わっただけ。眼に見えない姿に変わっただけ。『だからこそ』、青の娘はより多くの触媒を持ち込んだ。

2015-05-24 11:55:42
シャンシェ=ティパフィス @Siyayence_siki

——青の民にとって、この大会に臨む為の予選は所詮、血の濃さの証明にすぎなかった。それが奏力に直結する海鱗種にとって、国内に於ける最大の栄誉だった。 「《十二手並べて 網奏で——》」 だから大会に進んだとしても、どこか、安堵があった。——ここまで痛烈に、勝利を望んだ事は、無かった。

2015-05-24 11:55:47
シャンシェ=ティパフィス @Siyayence_siki

「《三手に及び 四を成す》」 右手が踊る。溶け落ちて水に変わった楯、水溜りから飛び出した刃を捉えようとして——逃した一つが、左頬を掠めた。弾き損ねた一つが右肩に突き立った。 「——ッ、」 痛み、痛覚の訴えを無視してどろりと垂れ落ちる前に凍らせる。赤い鱗のように凍る。

2015-05-24 11:55:53
シャンシェ=ティパフィス @Siyayence_siki

肩に刺さった一つは見もせずに引き抜いた。痛い、けれど、『あの時ほど』ではない。 (勝たなきゃ、) 右手に触媒を三つ。瞬時に溶けた水が弾かれたように空に舞い上がった。 「《——二十槍兵 四十軍靴の三十歩》」 凍る音。赤は——焼くか、あるいは避けるか。傷の片脚でも、走るだろうか。

2015-05-24 11:55:59
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