ロンゲスト・デイ・オブ・アマクダリ10101517:ニチョーム・ウォー #3

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ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

【ロンゲスト・デイ・オブ・アマクダリ10101517:ニチョーム・ウォー】 #3

2015-06-05 22:45:49
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「ハイデッカーは無敵の戦士達だ。やったぜ!今日も治安維持!」「ビョウキトシヨリヨロシサン」「あなたの隣人をしっかり見よう!悪ければ通報!それが隣人愛」「ビョウキトシヨリヨロシサン」「来て!ナショナルタクティクスマン=サン!キョート共和国のスパイよ!」「イツデモヨロシサン」……。1

2015-06-05 22:52:06
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

政府による集中キャンペーンの音声はさながらイッキ・ウチコワシのプロパガンダ放送めいて、ネオサイタマのブロックからブロックへさざ波めいて反響している。その中で、とりわけこの区画はヨロシサン製薬の馴染みのスローガンがユニゾンしている。立体駐車場に集まったヨロシ救急車両がその理由だ。2

2015-06-05 22:54:02
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「ハイ、並んで、並んで」「アイエエエ……ありがてえ」「ヨロシサン製薬設立の理念をご存知ですか?温かいミールを幾らでも」「アリガトゴザイマス……アリガトゴザイマス……」白衣にマスク姿の炊き出しスタッフは、負傷者や病院を受け入れるのみならず、浮浪者に食事を振る舞い、奥に連れていく。3

2015-06-05 22:59:13
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

ID所持の市民らは所属社会クラスによって別々の救急車両に案内され、適切な治療を受けたのち、安全な地域まで送られる。オナタカミ・トルーパーに似た完全武装のチームによる護送であり、実際安心だ。「さすがです」NSTV取材スタッフがヨロシ広報担当に賞賛の眼差しを向ける。「無償とは!」4

2015-06-05 23:05:25
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「無償の善意とは、時としてもっとも経済的なのです」広報社員は頷いた。「我々社員一同はニチョームの暴徒が市民を殺傷する悲惨な状況に大変心を痛めております。これは国家の損失であり、特に現在は戦時下ですから……我々の奉公により結局は株価が上がり、WIN-WINという」「なるほど」 5

2015-06-05 23:08:40
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

そうしたやり取りが行われる背後の救急車のタイヤとタイヤの間で、狂熱を帯びた油断ならぬ眼光がきらめいた。「シューッ……」フォレスト・サワタリは細い息を吐いた。彼は身体の向きを変える事すらままならぬ狭い穴で夜を明かしたナムのイクサを思い出していた。いや、敵が穴に居たのだったか? 6

2015-06-05 23:13:08
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

ディスカバリーは身体に蜜を塗られ、不潔なジャングルに放置される。すると、すぐに羽虫が集まってくる……羽虫が!不快な甲虫が肉を削ぎ血を啜る。奴は悲鳴を上げる気力すらもはやあるまい。敵はそれをただ楽しみの為に行うのだ。奴にとっての救いが安楽死しかなくなる前に、状況を進めねばならぬ。7

2015-06-05 23:17:50
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

彼の呼吸は極めて静かだ。そうして彼はニンジャ聴力を発揮する。身体の上の救急車両の中でかわされる会話を聞き取るのだ。(アー、これは剥離骨折ですね。痛み止めを出しておきます)(ありがとうございます)(誰にやられましたか?)フォレストは機を見て車の下からしめやかに這い出し、隣に移る。8

2015-06-05 23:24:38
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白く塗られエンブレムがペイントされた装甲車両の数はおよそ2ダースにも及ぶ。それら一台一台を確かめねばならない。ディスカバリーは恐らくそれら医療装甲車両のどこかの中に居る。そして樹にくくりつけられ、放置されている。沼の中で。「何か見えましたか?」「いえ、何も」巡回守衛の会話!9

2015-06-05 23:30:11
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「本当ですか?」「どうしましたか?」ナムサン。あれら巡回守衛は実際のところヨロシサン製薬のクローンヤクザだ。緑のバイオ血液からくる土気色の肌色をもったヨロシサンの兵士達……ヨロシサンの罪。「念のため確認をします」「クリアをしてください」「はい、そうします」足音が近づいてきた。10

2015-06-05 23:34:50
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「あれ?こっちじゃないのか?」さらにそこへ別の声と別の足音。「ドーモスミマセン!あの、俺、薬をもらいに来たんですけど」クローンヤクザの足音が止まる。「どうしましたか?」「IDを提示してください。制限エリアです」「ヤバイ!やっぱりこっちじゃねえんだ!あの、教えてください」11

2015-06-05 23:42:08
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「IDを提示してください」「市民、制限されています」「アイエエエ?あ、IDですか?ちょっと待ってください!ある、あります!」「IDを」「しかしアンタら、ガタイすごいっすねえ……給料幾らですか?」フォレストはしめやかに車両の下から這い出し、スーサイドを詰問する二人の背後に立つ。12

2015-06-05 23:44:12
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「ここに確か……ハハッ、ねえや!」「スッゾコ……」クローンヤクザの口をフォレストは素早く塞ぎ、逆の手で首筋を横に掻き切った。その時、もう一方のクローンヤクザの顔面をスーサイドが鷲掴みにしていた。「アバッ……アバッ」白い光がヤクザからスーサイドの腕に移り、ヤクザは痙攣死した。13

2015-06-05 23:47:25
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

二人は無言でクローンヤクザの体を救急車の下に隠すと、車両の陰にしゃがみ込んだ。(状況はどうなんだ、これは)スーサイドが囁いた。(ヤバくなったのか。それとも、敵が片付いて良くなったか)(ゼロだ)サワタリは囁き返し、別の車両の底に潜り込んだ。(引き続き、囮をやれ)(わかったよ) 14

2015-06-05 23:50:11
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

実際、彼らの努力は無益ではない……これら物々しきヨロシ救急車両コンボイの一角、他と変わらぬ一台の中で、恐るべきバイオニンジャ、サブジュゲイターが、拘束されたディスカバリーの覚醒を見下ろしていたのである。「ドーモ。ご無沙汰しています。サブジュゲイターです」「アバッ……畜生……」15

2015-06-05 23:55:49
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「顔突き合わせて会話するのも初対面のあの時ぶりです。プロトタイプ」金の渦巻テキスタイルの緑装束を着たニンジャは無感情な眼差しをディスカバリーに向けた。「俺を殺さないと実際後悔するぞ」ディスカバリーは言った。サブジュゲイターは頷く。「その返答も懐かしいが、表情は違いますね」16

2015-06-06 00:03:44
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

車載UNIXがチカチカと瞬き、ノーティスが入る。『キュア=サンがそちらへ向かいます』「そうか。それはまた大層な事です」『伝達事項がもしあれば』「状況に変化はありません。カンゼンタイは?」『空輸にて多少移動させる事になりました。実戦投入は未定です』「必要ないでしょう」『ハイ』17

2015-06-06 00:09:29
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

サブジュゲイターはディスカバリー捕獲について明言せず、通信を終えた。ディスカバリーは身じろぎした。「何か考えてやがるのか」「何がです?」「カイシャに何か隠してるのか」「貴方の脳に、ニューロンに用がある。個人的にね」サブジュゲイターは低く言った。「貴方は私の枷を外す鍵になる」18

2015-06-06 00:14:02
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

ディスカバリーは敵の吐いた言葉を吟味した。「なら俺の事は丁重に扱うべきだ。心臓発作で死んだら全部パアッてわけか。いいこと聞いたぜ」「イヤーッ!」「グワーッ!」サブジュゲイターはディスカバリーの顔面を押さえつけ、車内タタミにめり込ませた。「グワーッ!」「屑め!分相応になさい!」19

2015-06-06 00:22:10
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

ディスカバリーは己のニューロンが白く焼けるような感覚に陥る。ホワイトアウトした視界に、見下ろす人影が滲む。サブジュゲイターの姿か?違う。すぐにわかる。これは記憶だ。この視界はサブジュゲイターの記憶であり、見下ろすそのニンジャは……もはや人間の身体を所持せぬそのニンジャ……。20

2015-06-06 00:27:42
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

(その野心は時に好ましい。しかし……)ダビデ像めいた超然たる顔、その唇は動いておらず、何らかのバイオスピーカー機構から発せられた音声であるが、その機構も彼の肉体と同様バイオクリスタル製である為、詳細は窺い知れない。(ヨロシサンCEOとは君が考えるそれとは……) 21

2015-06-06 00:31:09
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「「グワーッ!」」二者はジゴクめいて絶叫した。サブジュゲイターは誤って焼けた鉄に触れた職工めいて身をよじり、憎悪の目でディスカバリーを睨みながら手を離した。ナムサン!ニューロン信号の混線!その性質の源を同じくする二者であるがゆえの突発的インシデントか! 22

2015-06-06 00:34:24
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「ヌウーッ!」さらに憤懣やるかたないサブジュゲイターは、UNIX装置に関係しない、破壊しても問題の無い鉄板部分を力任せに殴りつけた。KRASH!それをやや置いて、今度は車両のドアが外から繰り返し叩かれた。「大変です!大変ですサブジュゲイター=サン!お願いします!」「何です!」23

2015-06-06 00:41:50
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

この時の彼は用心を欠いていたと言わざるを得ない。だが同情の余地はあろう!「急ぎの事案なんです!」「所属と名を名乗れ!なぜIRC通信せぬか!」怒鳴りながらサブジュゲイターはスライドドアを引き開けた。そこにアフロヘアーの見慣れぬ若者が立っていた。拳が飛んできた。「イヤーッ!」24

2015-06-06 00:45:53
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