富山大学人間発達科学部の林衛先生に学ぶ科学

富山大学人間発達科学部 林衛准教授の科学に関する初歩的な間違いの指摘です。 よくある間違いから、正しい知識を得ることもできます。それぞれ参考サイトへのリンクも貼っておきます。
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核物理学

励起、共鳴

分子にシンクロする」と書かれていますが、
「励起」や「共鳴」の概念がゴッチャになっているようですね。

リンク www.st.hirosaki-u.ac.jp 光を吸収するとは?
リンク Wikipedia 共鳴理論 化学における共鳴理論(きょうめいりろん)とは、量子力学的共鳴の概念により、共有結合を説明しようとする理論である。 1929年にライナス・ポーリングはハイトラーとロンドンによる水素分子の共有結合の描像から、共有結合が量子力学的共鳴に基づくものという描像を提唱した。すなわち水素分子の全電子の波動関数Ψ(1, 2) = c1φHa(1)φHb(2) + c2φHa(2)φHb(1) を水素原子Haに電子1が所属し水素原子Hbに電子2が所属する状態と、水素原子Haに電子2が所属し水素原子Hbに電子1が所属する状態

本人から補足説明がありましたが

「電離放射線であるX線、γ線と比べて、非電離放射線である電波、マイクロ波では、同じ光子1粒が担うエネルギーの大きさが断然低いのだけど」と書けば、言いたいことが明確に伝わると思います。
ただ、「同じ光子1粒」の「同じ」は意味不明です。

電子レンジではマイクロ波によって伝えられた熱エネルギーを利用する」という説明では、どこかに熱源があって、それがマイクロ波で物質に伝わっているかのように読めるので、適切とはいえません。
電子レンジにおいては、電磁気のエネルギーを水分子に共振させて熱エネルギーに変換しています。

いずれにせよ、このような現象を「シンクロする」と表現するのは林氏独自のスタイルであって、通常は「共鳴、共振 resonance」が使われます。「通じていませんね」という原因は、情報の受け手に問題があるからではなく、林氏の文章がわかりにくいうえ、慣習と異なる用語を使っているからではないでしょうか。

イオン化

分子を破壊」「分子を壊す」と書かれていますが、
「イオン化」のことなのでしょうか。

リンク Wikipedia イオン化 イオン化(イオンか、英語: ionization)とは、電荷的に中性な分子を、正または負の電荷を持ったイオンとする操作または現象で、電離(でんり)とも呼ばれる。 主に物理学の分野では荷電ともいい、分子(原子あるいは原子団)が、エネルギー(電磁波や熱)を受けて電子を放出したり、逆に外から得ることを指す。(プラズマまたは電離層を参照) また、化学の分野では解離ともいい、電解質(塩)が溶液中や融解時に、陽イオンと陰イオンに分かれることを指す。 イオン化過程の一例をあげると、ある中性原子が電子(1個あるいは数個の

統計学

有意水準

検定においては、有意水準は事前に決めるか慣習に従います。通常、0.05、0.01、0.001が用いられます。
慣習から外れる有意水準を用いると、結論の信頼性に疑義を抱かれることになるだろう。それこそ「恣意的だ」と批判を受けてもおかしくありません。
なお、後付けで有意になるように水準を決めるのは、そもそも何のために検定をしているのか意義が問われることになるでしょう。林先生に言われるまでもないことです。

リンク aoki2.si.gunma-u.ac.jp 検定
リンク aoki2.si.gunma-u.ac.jp 有意水準

第1種の過誤、第2種の過誤

第1種の過誤を「ねらって空振り」、第2種の過誤を「ねらいもせずに見落としてしまう」という譬えは、わかりにくいですね。後者を「見落とし」というのはまだわかりますが、前者を「空振り」というのは、まったく理解できません。

第1種の過誤(偽陽性)は、帰無仮説が正しいにもかかわらず棄却する誤りです。例えば「病気であるとは言えない」という帰無仮説を誤って棄却すると、本当は病気でないのに「病気である」という結論になってしまいます。

第2種の過誤(偽陰性)は、帰無仮説が誤っているにもかかわらず採択してしまう誤りです。例えば「病気であるとは言えない」という帰無仮説を誤って採択すると、本当は病気なのに、「病気であるとは言えない」という結論になってしまいます。なお「病気でない」とまでは言えません。

一般に、偽陽性と偽陰性はトレードオフの関係にあり、偽陰性を減らそうと思ったら、偽陽性が増えます。病気な人を漏れなく見つけ出そうと思ったら、検査にひっかかる基準を低くします。すると、本当は病気なのに病気でないとする偽陰性が減る一方で、本当は病気でないのに病気であると診断されてしまう偽陽性の人が増えます。一方に注意を払い、一方を忘れる、などというバランスを欠く運用はされません。
例えば、陽性と判定された人に対して方法を変えるなどして再度検査し、本当に病気なのかどうかを調べます。健康診断で疑いがあったら精密検査をする、というようなものです。こういう運用を指して「第1種の過誤には注意を払うが、第2種の過誤への注意を忘れる」とは言うのはおかしいでしょう。

リンク aoki2.si.gunma-u.ac.jp 第 2 種の過誤
リンク Wikipedia 第一種過誤と第二種過誤 第一種過誤(だいいっしゅかご、英: Type I error)または偽陽性(ぎようせい、英: False positive)と第二種過誤(だいにしゅかご、英: Type II error)または偽陰性(ぎいんせい、英: False negative)は、仮説検定において過誤を表す用語である。第一種過誤をα過誤(α error)、第二種過誤をβ過誤(β error)とも呼ぶ。なお「過誤」とは、誤差によって二項分類などの分類を間違うことを意味する。 過誤は次の2種類がある。 統計学において、証拠を無に帰するよ

平均値の差の検定

平均値でみて増えている」というためには、2つの集団の間の平均値に差があることを検定する必要があります。
平均が少し違うからといって、ばらつきが大きければ、たまたまそうなったという偶然を排除しきれないからです。
つまり、「統計的に有意」でなければ、「平均値でみて増えている」などと胸を張って言うことはできません。

リンク aoki2.si.gunma-u.ac.jp 二群の平均値の差の検定(t 検定)