- ElementaryGard
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いつもの話をまたします。手塚の虫プロについて「スタッフには十分以上な賃金が払われていた」と肯定的に論じるのはおかしいと前から考えています。そこはむしろ「労力と報酬の換算体系を作る義務を怠った」と解釈すべきだと思うから。
2015-06-20 06:18:35商業アニメーションの企業体と呼べる日本第一号、東映動画(今の東映アニメーション)の創設時の記録によると、アニメ作りにおける人的労力について完全に読みを誤っていたのがわかる。期待したほどの能率では絵が揃わないことが判明し、経営側も混乱。
2015-06-20 06:20:19やがて労働組合結成運動(1959年。一週間で潰された)を経て現場のスタッフの側から労力と賃金の関係式をはっきりさせる必要が訴えられ、1961年に組合誕生。翌年にはストライキ。これで賃金の大幅値上げを勝ち取った。むろん無い袖は振れないので会社側は長編を年一本から二本に変更を計画。
2015-06-20 06:22:45他にも三年ほど社員として雇って腕を磨かせ、以後は独立させるやり方を模索。大部屋俳優は養ってやるがそれなりに売れてきたらフリーランスにさせる「スターシステム」をアニメ作りに応用する構想でした。
2015-06-20 06:24:16このやり方がもし実現していたらどうなっていたのか、それは何ともいえません。一つ確かなのは、東映アニメがいろいろ暗中模索しているところに、手塚がテレビアニメを始め、アメリカのドルを稼げると世に注目されてしまったことです。
2015-06-20 06:25:43だめもとで手を出したキャラクタービジネス(当時この用語はありませんでしたが)が大成功して、原作者(社長ではなく)手塚のポケットには今にして軽く10億円を超える商品印税が流れこんだ。
2015-06-20 06:26:56労力と賃金の適正な関係を、労使双方で押し合いへし合いしながら模索し落ち着きどころを探るのが本来あるべき姿でしたが、手塚は自分を経営者とは考えておらず、そういうやっかいな作業は嫌がった。それでポケットマネーで社員を黙らせた。金ならあるぞほらやるよ、と。
2015-06-20 06:28:43労力と賃金をどう算定するかというテーマが商業アニメにはあります。ほかの産業よりはるかにシビアに。なぜって絵のうまい下手、早い遅いは個人差があるし、手間のかかるカットでもそうでなくても数字の上では1カットとされるから、労力の算出は難しい。
2015-06-20 06:31:03野球選手なら打率とか防御率とか数字で判定できるし、芸人なら視聴率や出演番組本数や人気ランキングなどの数字が伴う。アニメの絵描きはこういう風に数値化が効かない。
2015-06-20 06:32:28商業アニメーションはヘンリー・フォードの流れ作業式大量生産メソッドの確立と同時に始まった。同じ国、同じ年に、です。
2015-06-20 06:45:52たくさん安く売ってたくさん儲けるアメリカン資本主義は、やがて供給過多で破綻。それが1928年の大恐慌でした。奇しくもこの年に生まれたのがこのひと。 pic.twitter.com/1jfTTFnaul
2015-06-20 06:47:25アメリカン資本主義は一度破綻。ルーズヴェルト新政権はソヴィエト式計画経済に舵を切った。そして組合の設立が国家によって肯定された。こういう風に両極端に傾くのがあの国の伝統。
2015-06-20 06:56:18商業アニメーションを生んだのがアメリカン資本主義だとするならば、労働組合が強力化していったのもアメリカン資本主義(の破綻)が発端だった。日本は前者の技を目で盗んだが、後者は取り入れなかった。そもそも体質になじまなかった。
2015-06-20 07:00:12