#完全ノープラン艦これ与太話 【イン・ザ・ファイナル・デイ・オブ・オミナント】１２２５０４３０【アンフェア・カルマ・バランサー】#3～#4

春魔解丼 @vespiking

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#完全ノープラン艦これ与太話 【イン・ザ・ファイナル・デイ・オブ・オミナント】１２２５０４３０【アンフェア・カルマ・バランサー】#3 #KZNPLN

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（これまでのあらすじ：おそるべきニンジャ軽巡・由良を相手に、旧オキノトリ古戦場で無慈悲なサヴァイヴァル戦闘を開始した羽黒。怒涛の猛攻を逃げ延びた羽黒であったが、由良はその状況から、羽黒がヒサツ・ワザの多くを封じられている事に感付いた。圧倒的劣勢！カラテで打破せよ） #KZNPLN

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由良は速やかに単装砲に消火弾を装填。煉獄めいて燃えさかる密林に向け発砲した。炎は闇夜のとばりを裂く探照灯であるが、同時に動きを制限する障壁でもある。兵器は炎に弱い。火達磨になれば使い手のほうが死ぬからだ。由良はニンジャだが、武装はオミナント製、一般艦娘用のそれだ。 #KZNPLN

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如何にして羽黒は消えたのか？その問いはナンセンス。敵は深海棲艦に変容するバケモノだ。何らかのジツを用いたのだろう。燃料の爆発メカニズムを完全に理解して自動車を運転する人は実際少ない。重要なのは、アクセルを踏めば車が進む事。インプットに対する、アウトプットの規則性。 #KZNPLN

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「伊良湖＝サンを殺害し、さらにその１時間後に望月＝サンを殺害。望月＝サンは手負いとはいえ、両艦とも易々と沈むニンジャではない。消耗。変容していない。逃走時に消滅。アンブッシュでは逃走せず。切り札。あの一瞬で？外的要因」由良は焦げた大木を見下ろした。「熱、かしら」 #KZNPLN

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由良は左手首の単装砲から砲身パーツを取り外し、砲塔部分を展開。かわりに無反動シリンダーをセットし、前腕に沿わせるように肘部分を固定。HEAF（対艦成形炸薬弾）を装填し、脇を締め、警戒歩行の構えに移行した。戦況は優勢。逃げる相手は撃ち殺す。攻めてくるなら、迎え撃つ。 #KZNPLN

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「オゴーッ！オゴゴーッ！」火災発生地点から2km。羽黒は地面に四つん這いになり、力を振り絞って泥をかき分け、できた窪みに激しく嘔吐した。ドス黒い吐瀉物。たんなる胃液や廃油ではない。艦霊と機械の混ざり合った、ヘドロ状の体液。内部への尋常ならざる負荷を物語っている。 #KZNPLN

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ハエ・ジツ。かつて軽巡矢矧が用いた、己の全身をハエめいた粒子に変え、熱源から半自動的に退避するジツだ。矢矧の死後、深海棲艦となった浜風にジツのみが宿った。そして、浜風を羽黒は喰らった。言うなれば、借り物の又借り。羽黒の船体はハエ・ジツを使う為に最適化されていない。 #KZNPLN

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羽黒は震える手をどうにか動かし、吐き出した黒いヘドロを地面に埋めて処理する。簡易的な処理だが、これが限界だ。羽黒はバタリと船体を横たえる。眩暈と頭痛がひどい。無理な体勢で、辛うじてチャドー呼吸を行って回復をはかる。視界のブレが徐々に収まる。呼吸が安定する。 #KZNPLN

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コンクリートの壁に船体を預け、羽黒は足を引き摺りながら歩く。今成すべき事はふたつ。カラテの回復と、敵戦力の漸減。これは艦隊決戦だ。羽黒と由良、艦艇の身を捨て、艦娘の身すら捨てた、邪悪なオバケに成り果てた巡洋艦同士の、たった2隻の艦隊決戦。まだ、砲戦の距離ではない。 #KZNPLN

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由良の注意が迎撃と追撃に向いたのは、羽黒にとって僥倖であったが、彼女にそれを知る術はない。彼女の現在地は、中央要塞区画。旧オキノトリ古戦場で、最も堅牢強固な城跡。鬼が出るか蛇が出るか。羽黒は赤錆びたドアを蹴破り、時の止まった廃墟へと忍び込んだ。 #KZNPLN

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自然の侵食に負け、罅割れた防弾ガラスの下を匍匐移動し、羽黒は廊下を進む。錆びた固定火器。クモの巣が張った砲身。遺棄後に暴発したと見える、散らばった榴弾の破片。科学弾薬から溶け出し、シミになった重金属。ジツひとつで倒れる自分自身。兵器は脆い。 #KZNPLN

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反動はおおかた収まったが、二度目などあるまい。あのようなブザマな状態を、由良に晒せばすぐに死ぬ。上等だ。先の攻防で完全に理解した。由良を相手に、ジツなど所詮は目くらまし。逃走用のケムリ玉でしかない。ならばどうする？答えは極めてシンプルだった。 #KZNPLN

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「砲。魚雷。カラテ。砲。魚雷。カラテ」衣擦れのように小さな声で、羽黒はうわ言のように反復した。重巡洋艦の三要素、即ち砲、魚雷、カラテ。接近戦における基本であり、奥義でもある。由良の懐で、これらを解き放つ。確実に、息の根を止める。カラテで殺す。 #KZNPLN

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重巡洋艦は第二の戦艦。戦艦が動けぬとき、重巡がかわって大将となる。水雷戦隊が切り開いた戦線を、重巡のカラテが叩き潰す。ならば、水雷戦隊がおらぬ時は？羽黒は立ち上がり、ガラリと大扉を開いた。光を失ったモニタ群が、彼女を出迎えた。彼女の、大切な仲間が。 #KZNPLN

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羽黒は帝国軍人のライセンスキーを取り出し、電源装置に突き刺した。半世紀近く眠っていた非常発電装置が、モニタ越しに光の咆哮をあげた。「起こしてしまって、ごめんなさい。本当は、貴女達に頼らずに、戦うつもりだったのだけれど」要塞中の防衛火器が、自己調整を開始する。 #KZNPLN

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「最後に少しだけ。私に力を、貸してくれますか？」先の大火と、羽黒の最後のジツ。それによって到達できた、中央要塞区画。眠れる兵器たちは、電熱音の歓声でもって旗艦を出迎えた。兵器は脆い。羽黒も兵器だ。彼女らも。そして、由良も。「大丈夫。貴女たちの背中は、私が守ります」 #KZNPLN

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旧世紀の発電装置たちが強く鼓動し、火花の血を隅々まで巡らせる。そして未だ陽の昇らぬ暗黒の空に、一発の照明弾が打ち上げられた。それは誇示であった。灯を消した由良。嚆矢を上げた羽黒。勝っているのは、我々だ。 #KZNPLN

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#完全ノープラン艦これ与太話 【イン・ザ・ファイナル・デイ・オブ・オミナント】１２２５０４３０【アンフェア・カルマ・バランサー】#3終わり。 #4に続く。 #KZNPLN

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#完全ノープラン艦これ与太話 【イン・ザ・ファイナル・デイ・オブ・オミナント】１２２５０４３０【アンフェア・カルマ・バランサー】#4 #KZNPLN

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（これまでのあらすじ：オミナント警備社の幹部に名を連ねる邪悪なニンジャ艦娘らを惨たらしく殺害した羽黒は連戦の消耗から、一転して由良に狩られる立場となる。だが幸運にも、羽黒は迎撃兵器の集中した中央要塞区画へと逃げ込むことに成功した。サイオー・ホース！反撃開始だ！） #KZNPLN

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未だ陽の昇らぬ暗夜に上がった、鮮烈な光を放つ照明弾。鎮火し、焦げ付いた密林の先に、光を湛えた水平線が揺れる。ここまでヘイキンテキを維持してきた由良のニューロンに、初めて苛立ちの感情が芽吹く。これは誇示である。優勢を示す勝鬨だ。感情の芽を摘み、由良は砲を構える。 #KZNPLN