SF小説とプロットについて

まとめました。
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山本弘 『BIS ビブリオバトル部』 @hirorin0015

今日のツイートはちょっと緊張して書く。 下手すると、大多数のSFファンを敵に回しかねない内容だから。でも、どうしても言いたい! これだけは言いたいんだよ!

2015-07-13 09:46:13
山本弘 『BIS ビブリオバトル部』 @hirorin0015

@hirorin0015  ケン・リュウ『紙の動物園』(早川書房)を読んだ。中国出身でアメリカ在住のSF作家の短篇集である。  帯によれば、「日本経済新聞掲載書評にて★5つを獲得!」「異文化の中で生きる孤独と親子の情愛に胸を衝かれる傑作(読売新聞書評)」 とある。

2015-07-13 09:48:05
山本弘 『BIS ビブリオバトル部』 @hirorin0015

@hirorin0015  訳者あとがきによれば、表題作「紙の動物園」は、ヒューゴー賞、ネビュラ賞、世界幻想文学大賞の短編部門を受賞、日本でも星雲賞海外短編部門、SFマガジン読者賞海外部門を受賞。スペインでもイグナトゥス賞海外短編部門を受賞しているという。

2015-07-13 09:48:46
山本弘 『BIS ビブリオバトル部』 @hirorin0015

@hirorin0015  僕は〈SFマガジン〉掲載時に読み落としていたので(なぜなのかは自分でも分からない)、この機会に読んでみることにした。こんなに多くの賞を受賞しているからには、きっと大傑作に違いないと。  そうしたら……。

2015-07-13 09:49:07
山本弘 『BIS ビブリオバトル部』 @hirorin0015

@hirorin0015 何だこれは。  話の構成がぜんぜんめちゃくちゃだ。

2015-07-13 09:49:40
山本弘 『BIS ビブリオバトル部』 @hirorin0015

@hirorin0015 A.主人公の母親は中国人で、折り紙で作った動物に生命を与える不思議な能力がある。 B.母親の死後、折り紙の裏に書き残されたメッセージが見つかり、主人公は母が中国で送った苛酷な半生を知る。  プロットは要約するとだいたいこんな感じ。

2015-07-13 09:50:31
山本弘 『BIS ビブリオバトル部』 @hirorin0015

@hirorin0015  Aの部分のアイデアはすごく魅力的である。Bの部分も胸を打つ。  問題はAとBの要素がまったく有機的に結びついていないということ。単に折り紙からメッセージが見つかったという程度の関連しかない。

2015-07-13 09:52:05
山本弘 『BIS ビブリオバトル部』 @hirorin0015

@hirorin0015 普通、こういう話だったら、こんな能力のせいでひどい目に遭ったとか、逆にこの能力のせいで助かったとか、そういう構成になりそうなものなのに、それがない。  主人公の母がこんな能力を持っていなくても、この話は成立するのだ。

2015-07-13 09:53:34
山本弘 『BIS ビブリオバトル部』 @hirorin0015

@hirorin0015 他の短篇も同じようなものが多かった。 「月へ」は、やはり登場人物の中国での悲惨な体験が語られるのだが、それが月をめぐるファンタジーの部分と乖離している。ファンタジーの部分を削っても成立する話なのだ。

2015-07-13 09:54:04
山本弘 『BIS ビブリオバトル部』 @hirorin0015

@hirorin0015 「太平洋横断海底トンネル小史」は、太平洋戦争が起こらなかったパラレルワールドで、日本軍に捕らえられて強制労働させられた中国人労働者の悲劇が語られる。でも、なぜそれが「太平洋横断海底トンネル」でなくてはならないのかが理解できない。

2015-07-13 09:54:56
NORI“アレックス”65t @nori65t

@hirorin0015 作者がSFを書きたくて書いたのに、 物語は素晴らしくても、SFである必然性がまるで無いと? (・Д・)ノ

2015-07-13 10:01:08
山本弘 『BIS ビブリオバトル部』 @hirorin0015

@hirorin0015 「文字占い師」は1960年代の台湾が舞台で、やはり中国人差別や中国人の登場人物の悲劇が描かれる。  でも、作中で唯一、効果のあった魔法──文字占い師が主人公の少女を助けた魔法が、文字占いじゃないって、どういうことだ?

2015-07-13 10:01:11
SOW龍@猫とヤングとおれふつう @SOW74656

@hirorin0015 おお!確かに私も違和感覚えました!なので折り紙が動いたのはあくまで子供の頃の自分の想像で、メッセージを伝えるために最後に奇跡が起きたと無理やり解釈しました。SFというよりSF的なちょっいい話って印象ですね。

2015-07-13 10:01:47
山本弘 『BIS ビブリオバトル部』 @hirorin0015

@hirorin0015 これも、魔法のくだりを削除しても成立する話だ。

2015-07-13 10:01:59
山本弘 『BIS ビブリオバトル部』 @hirorin0015

@hirorin0015 誤解を招かないように言っておくが、中国系の作者が中国の近代史を題材にしたり、中国人差別の問題をフィクションの形で描くのは、何も悪いことじゃない。  問題は、それがSFやファンタジーである必然性がないというだ。

2015-07-13 10:04:31
山本弘 『BIS ビブリオバトル部』 @hirorin0015

@hirorin0015 上に紹介したどの作品も、SFやファンタジーでなくてもいい話なのに、無理にパラレルワールドにしたり、ファンタジー要素を入れている印象を受ける。  SFやファンタジーである以上は、その要素がプロットとがっちり嚙み合ってないといけないと思うのだが。

2015-07-13 10:05:05
伊東麻紀@インボイスは断固反対 @ItohMaki

ケン・リュウってとても上手な作家だと思うけどなあ。ちょっとSFやファンタジーを特別視しすぎてるんじゃないの。

2015-07-13 10:10:00
山本弘 『BIS ビブリオバトル部』 @hirorin0015

@hirorin0015 若い頃、J・T・マッキントッシュの「メイド・イン・U・S・A」(1953)という中編を読んだ時も、同じような疑問を抱いた。アンドロイド差別を題材にした話で、確かに感動的ではある。  でも、これ、SFである必然性はあるのか、と。

2015-07-13 10:12:38
山本弘 『BIS ビブリオバトル部』 @hirorin0015

@hirorin0015 普通に黒人差別やアジア人差別の話にしてもよかったんじゃないだろうか。  まあ、1953年という時代では、まだSFの世界でも人種差別問題をストレートに描けなかったのかもしれないが。

2015-07-13 10:14:14
山本弘 『BIS ビブリオバトル部』 @hirorin0015

@hirorin0015  ケン・リュウの他の短篇には、いちおうアイデアとプロットが嚙み合ってるものがいくつもあった。ただ、不老不死とかシンギュラリティとか遺伝子操作とか、最近流行のSFによくある要素が多く、「はいはい、また例のあれね」という感じがして、あまり印象に残らない。

2015-07-13 10:15:18
山本弘 『BIS ビブリオバトル部』 @hirorin0015

@hirorin0015  いちばん楽しめたのは、最後の「良い狩りを」。途中で話のタッチががらっと変わるのが面白い。最初の方は伝奇ファンタジーなのに、最後はバカSFなのである。  バカSFが好きだから、これはすごく気に入った。

2015-07-13 10:16:25
NORI“アレックス”65t @nori65t

@hirorin0015 現代の物語では書き難いテーマを扱うのに、SFやホラーに置き換えるといのはよくある話しなのでは?

2015-07-13 10:16:58
山本弘 『BIS ビブリオバトル部』 @hirorin0015

@hirorin0015  ただこれも、冷静に考えてみると、バカSFパートを成立させるスチームパンク要素が、後半になって急に出てきている。  もしかして作者は途中まで書いて展開に詰まって、苦し紛れにスチームパンク要素を入れたのでは……という気がひしひしとする。

2015-07-13 10:17:30
山本弘 『BIS ビブリオバトル部』 @hirorin0015

@hirorin0015  最初の話に戻って、なぜ「紙の動物園」が高い評価を受けたのかというと、Aの部分が魅力的で、Bの部分が感動的だったからではないかと思う。読者の多くは、AとBが嚙み合っていないことが気にならないのかもしれない。  でも僕は気になるぞ。すっごく気になる。

2015-07-13 10:18:42
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