ヒヅメ】外はやはり雨だった。濃紺のレインコートのフードを被り、随分と閑散とした夜の街に一人佇む自分の姿は、一体周囲にどう写るのだろう。 使う予定もないのに、帷から持ってきたネクタイトは、ズボンのポケットに入れてある。
2015-07-29 20:16:11桐生】「……」 けれど同じようにゴルゴタを登った主には、少なくとも瑕疵は無かった。この世には咎を犯さずとも、罰を科せられる者が確かに存在する。 『貴方が"そう"なるべきだったのですよ』 ロベリアの亡霊がまたもや囁く。近頃、"増えて"きた。
2015-07-29 20:18:32ヒヅメ】冷たい雨の中、目的のデパートへと辿り着く。既に閉店しており、正面玄関にはシャッター。屋上へ向かうにはどうすれば良いだろうかと考えながら、デパートの周囲をとりあえず回ってみようと歩き出す。
2015-07-29 20:18:55桐生】昏闇《ソラ》を仰ぐ。屋上まで続く非常階段。己はともかく、彼女もまた、これを登らなければならないことこそが、既に許しがたい理不尽なのだ。
2015-07-29 20:19:55ヒヅメ】自分の指定した遊園地ではなくデパートの屋上を指定してきた彼の言うことを、もはや顧みることはない。自分の終着地はもうすでに、心に決めているのだ。冷たい雨が降りしきる中、アスファルトの路上に照る照明の中、彼女は歩を進めていく。
2015-07-29 20:21:16桐生】「――存外に、落ち着いてますね」 濃紺のレインコートを着た彼女が横に立つ。そちらに目は向けず、仰いだまま呟いた。 @kankyoizon2
2015-07-29 20:29:30@KiryuTouya ヒヅメ】「……自分のやるべきことが、決まっているので」 冷んやりと心は冷える。罪の意識は既に無い。 「この階段から、上に上がれますか」
2015-07-29 20:31:53@kankyoizon2 『可哀想に。貴方が不甲斐ないから、こうなる』 桐生】「やるべきこと、ですか」 己にしか聞こえない幻影の声。耳は傾けず、続く問いに肯定を示すように登りはじめよう。
2015-07-29 20:35:45@KiryuTouya ヒヅメ】桐生に続いて、階段を登り始める。背姿から目を逸らすように視線を落とす。 「……はい」 肯定。雨はざあざあと降り続き、自分の声すらも消してしまいそうだと思う。
2015-07-29 20:41:01@kankyoizon2 桐生】桐生にレインコートはない。雨ざらしとなり、髪を、バンダナを、スーツを濡らしている。 「……どうしてこうなってしまったのでしょうね」 雨音と共に、カンカンと靴音が響く。
2015-07-29 20:43:01@KiryuTouya ヒヅメ】デパートの屋上までは、だいぶ時間がかかりそうだと思う。 「……貴殿は、何故チョークを処分出来なかったのですか?」 理由を純粋に問う。恨みなどの感情は一切こもっていない声で。
2015-07-29 20:48:19桐生】「状況が良くなかったから。人質の確保がまだだったという事もありますが、一番の理由はいずれも"それを望まない"者が居たからです」 一度目は彼女も知っているだろう。狭間駿。警察官でないにも関わらず、ビルでの主導権を常に握っていた青年。 @kankyoizon2
2015-07-29 20:53:12@KiryuTouya ヒヅメ】「そう、なのですね」 この人は変わってしまった。正義ではなくなってしまった。ただの人間になってしまった。……確かめたそれを、頭の隅に置いたまま。 「殺すなという人がいれば……貴方は殺すのを止めますか。それが如何に社会、人々に危害を加えようと」
2015-07-29 20:57:45@kankyoizon2 桐生】「いいえ?殺します。チョークは害悪であるがゆえに、排除します」 即答する。 「望まない者を尊重したのは、そうする価値があるかどうか確かめる為でした。考えてみれば私、排除以外の処置を下した事がありませんでした」 →
2015-07-29 21:01:09@kankyoizon2 → 妙見纏、源風香、多くの者から、思想の"違い"をぶつけられてきた。この身を濡らす雨粒のように。 「結果として、排除を良しとしない者の言い分は確かに"正しい"のだと理解しました。何せ人の命は替えが利かない」 口元に微笑を湛え、振り向かずに歩を進める。
2015-07-29 21:03:39@kankyoizon2 桐生】「ですが皆さん、殺生を拒否した先の事は考えられていませんでした。期待した結果、チョークはまたもや被害を出した。皆さんが殺生を嫌うのなら、やはり私がやろうと結論付けたわけですね」 はたと足を止めて、初めて彼女に振り返る。 →
2015-07-29 21:13:01