念波さんnennpaの「祖母から狐狸に化かされた話を聞かされた夜のことを書いてみよう。」

念波 @nennpa

祖母から狐狸に化かされた話を聞かされた夜のことを書いてみよう。

念波 @nennpa

その晩は山林に繋がった家の裏からしきりに何かの声がしていた。猫の鳴き声のようにも、他の鳥獣の鳴き声のようにも思えたが、なにより幼い私にとって気がかりだったのは、それが赤ん坊の鳴き声にも聞こえたことであった。一度そう聞こえ始めると、どんどん、そう聞こえてくる(続

念波 @nennpa

しかし荒れた竹藪の中、夜更けに赤ん坊が泣いているなどとありえないことは幼い私にも分かった。しかしどうしてもそれは赤ん坊の声に聞こえた。次第に恐ろしくなった私は隣で寝ていた祖母に声をかけた。予想に反して祖母は眠っていなかった。「あれを相手にしてはならない」と、そう祖母は言った(続

念波 @nennpa

「あれは狐の声や。狐の声に誘われて山に入り死んだもんを、今までに何人か知っている」「例えば昭和30年頃だったか、隣の集落の某という子供が深夜に不意に姿を消し、戻らなかった。数日の捜索ののち、子供が分け入ることもできないような山深くで亡骸が見つかった」「狐の声に誘われたのや」(続

念波 @nennpa

「だから夜更けにあのような声を耳にしても決して相手にしてはならない。聞かなかったこととして眠るのがええ」そう祖母が語るうちも、絶えることなくその声は荒れた竹藪の奥から聞こえ続けていた。(完

念波 @nennpa

ほとんど遠野物語みたいな世界だが、そういう環境で育ったのがおれ。祖母は信心深かったが、先ほども書いた通り心霊主義は頑なに受け入れなかった。

dada @yuuraku

夜中にチリーンって鈴の音が近づいてきて去っていくとか、読経の声が不意に聞こえたりすること、いまだあるけどいちいち検証なんかしないし空耳で済ますのが一番ですわな。