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新国立競技場問題はなぜ起こったか?建築家の言ってることややってることが「さっぱりわからへん氏」達におくる、建築経済学。「ゲーム理論で考えてみよう」シリーズ。 pic.twitter.com/jh9CD80F95
2015-08-09 20:30:50建築で使える経済学的ロジックを検討してみたい。まずは「ゲーム理論」である。 ゲーム理論とは、ノイマン型コンピューターで有名なフォン・ノイマンが戯言で思いついた?とされる『ゲーム理論と経済行動』で口火を切った。このゲーム概念を説明するのによく使われるのが「囚人のジレンマ」
2015-08-09 20:05:44「囚人のジレンマ」と呼ばれるモデルとは以下のようなものだ。 それぞれ別々に収監されている囚人Aと囚人Bがいる。 囚人は以下の条件をつきつけられる。 もし、君が自白すれば司法取引により1年の刑、相手は10年の刑 もし、君が黙秘を続けたものの相手が自白した場合、君は10年の刑
2015-08-09 20:06:55もし、君が黙秘し相手も黙秘した場合は双方2年の刑に処す この場合囚人の戦略として最適なものは自白か黙秘か・・ この場合共に黙秘して2年を選ぶという(これがパレート最適)ことにならず、 共に自白して10年の刑になってしまう(これがナッシュ均衡)というのがゲーム理論の真骨頂である。
2015-08-09 20:08:25※「パレート最適」ヴィルフレド・パレートが提唱した資源配分の均衡点を見出す概念。「一般均衡」と呼ばれる。 ※「ナッシュ均衡」ジョン・F・ナッシュによる。どのプレーヤーも戦略を変更する誘因を持たない状態のことその半生は、映画『ビューティフル・マインド』を見てください。
2015-08-09 20:11:06このことは、各個人が自分にとって「最適な選択」をすることと、全体として「最適な選択」をすることが同時に達成できないことを示している。 これを施主対建築家とみるか、建築家どおしと見るか、建築作品対建設物とみるか、建設産業対建築家とみるかという思考実験をやってみようという趣旨である。
2015-08-09 20:09:50「ゼロ和二人ゲーム①」2人のプレイヤーが互いに勝ち負けを争うケースのことを、「ゼロ和二人ゲーム」といいます。このプレイヤーは必ずしも一人の個人を現すわけでなく、スポーツで2チームが争う場合や、2国間戦争、経営者と労働者の賃上げ闘争などもそうです。
2015-08-09 20:12:30「ゼロ和二人ゲーム②」 「ゼロ和」の意味は、勝ちを+1、負けを-1,引き分け0の「利得」という数値に置き換えて、2つのプレイヤーの「利得」の和がゼロとなっていることを定義するものです。 施主VS建築家をこのゼロ和二人ゲームと仮定できるケースはどのようなモデルとなるでしょうか?
2015-08-09 20:14:17お互いの「利得」が相反していなければなりません、またある部分は合意形成ができていて、ある部分はできていない、といった複雑なケースについては「協力n人ゲーム」などを検討したのちに考えたいと思います。つまり、施主が勝てば建築家が負ける、逆も真といった状況のことを想定します。
2015-08-09 20:15:19極端ですが、たとえば「施主の利得」の定義を「ダサイが住みやすさ=コタツの置ける和室8畳間をもつこと」とし、「建築家の利得」の定義を「かっこいい新奇性=空間がガラスの多面体で床もガラスであること」とした場合、このような「ゼロ和2人ゲーム」において最適なプレイの仕方があるかどうか
2015-08-09 20:16:48「ゼロ和2人ゲーム」についてフォン・ノイマンは「ミニ・マックス定理」という解答を見出しています。「ミニ・マックス定理」とは、「一方のプレイヤーは最小利得を最大化する戦略、すなわちマックス・ミニ戦略をもち、他方は最大損失を最小化する戦略、すなわちミニ・マックス戦略をもつ、
2015-08-09 20:18:23その場合これらの戦略は同じ値をもたらす」としています。(この「同じ値」を「ゲームの値」という)単純な勝ち負けを争うという「ゼロ和ゲーム」において、当然と思われる行動原理『そのままの「利得」の最大化』「マックス・ミニ戦略」ではなく、最悪の場合でも保証できる『大丈夫な利得の最大化』
2015-08-09 20:21:19『大丈夫な利得の最大化』という行動原理「ミニ・マックス原理」によって、ゲームの解決に導かれるとするものです。 これを先ほどの施主VS建築家例に当て嵌めると、両者の戦略は次のようになります。
2015-08-09 20:22:42施主住みやすさ優先「最悪でもコタツが置けて、畳が敷いてあること」 建築家新奇性優先「最悪でも一部多面体で一部ガラスが使用されていること」 となることがわかります。 これが「木造による多面体表現にガラスが嵌っており、畳が敷いてあってコタツが置けて生活できる」家を生成させるわけです。
2015-08-09 20:25:28「協力n人ゲーム」 いよいよゲーム理論の真骨頂である「協力n人ゲーム」に移ります。プレイヤーが3人以上かかわる場合を「協力n人ゲーム」といいますが、そうなってくると各プレイヤーは互いの立場が有利に、「利得」を増やすように「結託」という行動を取るようになります。
2015-08-09 20:40:01この「結託行動」の分析が非常に面白く、経済学で需要と供給の量だけにとどまらないライバル企業の行動やカルテルなどの市場行動を考察したりするわけです。 まず、n人が関わるプレイヤーの集合をNとします。N=n1,n2,n3,n4,....。各プレイヤーはn1,n2,であらわします。
2015-08-09 20:41:12「結託」は集合Nの部分集合なのでS。この場合に可能なSの数は2nとなります。この2n個の「結託」はどれも等しく可能であり、その「結託」によって各結託の利得を検討するわけです。ノイマンとモルゲンシュテルンの理論によれば、いまここで「結託S」が形成された場合、
2015-08-09 20:42:41残りのプレイヤー達は全員でそれに反する「結託N-S」を形成して、SとN-Sはある利得一定値cの取り分をめぐって「ゼロ和2人ゲーム」をプレイするとしています。このモデルのために必要な仮定がふたつありますが、 1.各プレイヤーの利得は足し合わせることができる。(利得の譲渡可能性」)
2015-08-09 20:43:372.各結託は一人のプレイヤーとして行動する。(結託内部での合意の拘束性) この結託Sがミニ・マックス定理によって得られる値がv(S)であり、このvを結託Sの特性関数と呼びます。
2015-08-09 20:44:55この「協力n人ゲーム」において、各プレイヤーはどのように行動することになるでしょうか、このゲームの解はなにか、ということについてノイマン、モルゲンシュテルンは、「安定集合」という「利得の集合」を定義して「協力n人ゲームの解」としています。 ここから、ちょっとややこしくなりますが、
2015-08-09 20:46:04まず各プレイヤー全員が協力して得られる利得v(N)が、各プレイヤーにどのように分配されるかという「利得配分」というものがあり、この配分される利得の値はプレイヤー独自で得る利得v({ni})以上でなければ協力は起きません。(個人合理性の条件) 要は自分勝手にやるのが得なら結託はない
2015-08-09 20:53:46各プレイヤーへの分配額の総和はv(N)です。(全体合理性の条件) ここで結託Sにおいて、各プレイヤーへの配分Aと配分Bがあるとして、配分Aよりも配分Bの方が各プレーヤーへの分配が大きいとします。その場合を配分Aは配分Bに「支配されている」といい、配分Aは魅力のないものになります。
2015-08-09 20:55:59この配分の集合をKとすると Kが安定するための定義とは、KはKに属する配分によっては支配されない配分の全体となります。つまりは、Kの中の任意の二つの配分は互いに支配されておらず(内部安定性)、K外の配分は必ずK内の配分によって支配されている(外部安定性)ということです。
2015-08-09 20:57:16「解」の「安定集合」とは、内部安定性も外部安定性もともに満たす配分の集合です。 ここでいかなる配分にも支配されない配分の集合のことをCとしこれを「コア」呼んで経済の市場均衡理論に用いられるようになりました。
2015-08-09 20:59:14上記のややこしいとこは読み流していただくとして、 ここからです。 3人のプレイヤーを仮定したとき、そのうちの2人が結託Sしてそれぞれ取り分を1/2づつとし、残る1人は0である場合、この配分の集合は「安定集合」でもあります。これは「客観解」と呼ばれています。
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