熊谷徹「日本とドイツ ふたつの戦後」(集英社新書)。最近出たばかりの本。とりあえず、歴史問題を扱った2章と3章を読む。うーむ、いくつか新しく知った事実もあるが、私のこれまでの見解を修正するほどではない。
2015-08-21 14:36:02ドイツは、ナチスの不正については真摯に謝罪と補償してきたが、戦争被害一般についてはあまり進んでいない。この点で、日本と大した違いはないと思う。もちろん著者が繰り返し断るように、日本とドイツの歴史は100%同じではないから、全てが参考になるわけではない。
2015-08-21 14:36:30ナチ・ドイツのソ連軍捕虜虐待は、ホロコーストに比べると知名度が低いが、規模も深刻さも組織的虐殺といえるものである。ナチスによって劣等民族と規定されたスラブ人は、意図的に満足な食事や環境が与えられなかった。ある研究では、捕虜の6割が死亡したという。
2015-08-21 14:38:06日本とドイツの侵略戦争が、歴史的に同じかといえば、そうでもない気がする。17世紀の三十年戦争では、まだ強力な統一国家が出来ていなかったドイツの地を、スウェーデン軍やフランス軍が荒らしまわった。
2015-08-21 14:38:25ナポレオン戦争でもドイツが占領されたし、普仏戦争や第一次世界大戦では、ドイツとフランスが互いに領土を分捕り、賠償金を吹っかけあった。近代に限ってもヨーロッパの歴史は戦争の繰り返しで、それもある程度お互い様だった。
2015-08-21 14:38:44それに対して東アジアで戦争は、数百年に一度起こるようなことであり、しかも中国と朝鮮の侵略というようなものは、「元寇」以来途絶えていた。日本は加害者で中国・朝鮮は被害者、という図式が、きれいにできるのである。
2015-08-21 14:39:56保守派によってよく持ち出されるのが、通州事件といった中国人の残虐行為であるが、「あいつらも残虐だった」といった言い訳は、フランスがアルジェリア戦争での残虐行為をごまかす為に、「原住民達もやっていた」というのとそっくりである。
2015-08-21 14:41:55ナチスのホロコーストの場合、ユダヤ人の抵抗はほとんどなかった。研究者の間では、「なぜユダヤ人は大規模な反乱を起こさなかったのか」というテーマもあるほどだ。
2015-08-21 14:50:27無抵抗のユダヤ人を次々と殺していったからこそ、ナチスの冷酷さが一層際立つし、この数十年フランスなどヨーロッパ各地で、ユダヤ人迫害に協力したことの謝罪が進んでいる。一方で、植民地のことはまだ難しいようだ。
2015-08-21 14:51:16関連記事。 戦後ドイツの補償を、日本と比較して考える - 新・犬沼のブログ sangokushiinu2.hatenadiary.jp/entry/2015/08/…
2015-08-21 18:21:59追加
@rekihiko2 揚げ足のように聞こえたら申し訳ありませんが、東アジアというより日本の対外戦争、ではありませんか?清は朝鮮半島や欧米を含む周辺諸国と散発的に戦争してましたし、内戦も考えると太平天国の乱などは第二次大戦よりも多くの死者を出したとも言われます。
2015-08-21 18:39:17@DayBeeToe そうですね。中国の色々な戦争のことは、忘れていたわけではありませんが、抜け落ちていました。東アジア三国を巻き込んだ戦争、ということでいえば問題ないですが。
2015-08-21 18:56:26