満たされない想いを抱えて[満潮] #見つめる時雨

満潮
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【壱】姉妹の温もり

荒潮

とある舞鎮の艦娘たち @S_side_story

大規模作戦が終わった。連合艦隊も一旦解隊され、艦娘は其々の鎮守府へと戻っていった。この作戦で普段会えないコ達と再会できるのはいいけれど、大規模作戦はそれなりの危険を伴うから、ゆっくりと会話に花を咲かせている余裕がないのよね。そこが残念。

2015-08-26 23:00:39
とある舞鎮の艦娘たち @S_side_story

毎月購読しているファッション誌をぱらぱらと捲りながら、夏にしては珍しい涼しい空気の中で冷えた身体を、温かい紅茶とカーディガンで温める。まさか今の時期に冷房以外で「寒い」なんて感じるとは思わなかったわ。

2015-08-26 23:09:49
とある舞鎮の艦娘たち @S_side_story

…同室の朝潮は今はいない。提督の出張の付き添いに行ってしまった。でも提督も大変よねぇ。大規模作戦が終わった直後だっていうのに、1泊2日とはいえ出張だなんて。あのひと、いつか倒れちゃうんじゃないかしら。休んでるの殆ど見たことないのよねぇ。

2015-08-26 23:12:28
とある舞鎮の艦娘たち @S_side_story

ドアをノックする音。就寝時間も近いのに、誰かしら。まぁ、何となく予想はついているのだけれど。きっと就寝時間が近いからこそ、このノックの主は来た。私の部屋に。私のパートナーである朝潮が今はいないことも知っていて。

2015-08-26 23:15:33
とある舞鎮の艦娘たち @S_side_story

「どうぞ」 ドアノブが回転し、ゆっくりと扉が開く。入ってきた少女は赤と茶色の中間くらいの髪色で、普段二箇所でまとめている髪はお風呂上がりということもあり、下ろしていた。こうして見ると、どことなく朝潮に似ている。やっぱり姉妹ね。

2015-08-26 23:20:15
とある舞鎮の艦娘たち @S_side_story

「…いい?」 「ダメだったら、どうぞなんて言わないわよ」 「…私だってわかってたの?」 「何となく。満潮だって思った」 ゆるめのTシャツにショートパンツ。満潮の寝間着なのだけど、ちょっと色気がない。私みたいなネグリジェ、きっと似合うのに。

2015-08-26 23:26:03
とある舞鎮の艦娘たち @S_side_story

ベッドにある大きめのクッションをもう一つ私の横に置いて、満潮に視線を送る。満潮は意図を察したようで、そのクッションに腰を下ろした。ふんわりした嫌味のないシャンプーの香りが舞う。…いい匂い。 「ありがと、荒潮」 「いえいえ」

2015-08-26 23:30:30
とある舞鎮の艦娘たち @S_side_story

「ポットにお湯あるわよ?」 「じゃあ、紅茶貰うわ」 「どうぞ」 勝手知ったるなんとやら。満潮は私の部屋にある籠からティーバッグとミルクを二つ、そしてシュガースティックを取り出し、紙コップに入れてそこにポットのお湯を注いだ。

2015-08-26 23:35:27
とある舞鎮の艦娘たち @S_side_story

紅茶を啜り、満潮がほっと一息つく。 「…終わったわね、大規模作戦」 「そうね。お疲れさま。私も、満潮も」 「…ちょっと今回は欲張り過ぎだったんじゃないの?まさかFS作戦まで展開させるなんて」 「そうねぇ…千載一遇のチャンスだったと、そう考えましょう」

2015-08-26 23:40:20
とある舞鎮の艦娘たち @S_side_story

「…久しぶりに本気で疲れたわ」 満潮が私の肩に寄り掛かってきた。私は彼女が楽になるように、もう少し満潮に身体を寄せる。すると、満潮が大きく息を吸っているのを感じた。満潮って私の匂い、好きよね。…でも、彼女にとっては二番目くらいかしら?

2015-08-26 23:45:52
とある舞鎮の艦娘たち @S_side_story

私はマグカップをテーブルに置いた。そして満潮が手に持っている紙コップも取り上げ、同じくテーブルの上に。零れちゃうといけないから。 「…荒潮」 「ふふ、何?」 ゆっくりと、私の腰に満潮の手が回ってくる。私はそのまま満潮を抱いて、背中からクッションへと身体を沈めた。

2015-08-26 23:50:16
とある舞鎮の艦娘たち @S_side_story

私の首元で大きく繰り返される満潮の深呼吸がくすぐったい。満潮の鼻先が私の肌をなぞるように動き、思わず身体がぴくりと反応する。私達の素脚は密着し、満潮のすべらかな太ももの感触がそこから伝わってきた。

2015-08-26 23:55:27
とある舞鎮の艦娘たち @S_side_story

「あっ…」 私の首筋に柔かなものが触れ、吐息の温もりが肌に広がる。それが一回、二回と繰り返されながら、少しずつ上に昇って来た。やがてそれは頬に辿り着き、私の視界には満潮の瞳が映った。…綺麗。

2015-08-27 00:00:59
とある舞鎮の艦娘たち @S_side_story

私達は特に言葉を交わすことなく、そのまま唇を重ねた。驚きはしない。何度もしてきたことだから。 「ふ…」 満潮の口の中の温度が、私を温める。きっと満潮も私の温度を感じているんだろう。

2015-08-27 00:05:44
とある舞鎮の艦娘たち @S_side_story

暫く重ねるだけのキスをしていたけれど、どちらからともなく舌が触れ、口の中での交じり合いへと変わっていった。満潮の口の中は紅茶の味がした。とても、濃い。…満潮にがっつく様子はなく、じっくりと私の口の中を堪能しているような、そんな感じだった。

2015-08-27 00:10:27
とある舞鎮の艦娘たち @S_side_story

私と満潮は恋仲というわけじゃない。私にそういう意識はないし、それは満潮も同じ。でも時々こうして、私達は身体を重ねた。決まって私の部屋で。普段朝潮といいことをするこの場所で、私達は肌を溶け合わせた。

2015-08-27 00:15:26
とある舞鎮の艦娘たち @S_side_story

私と満潮の間に、唾液の橋がかかる。それは自らの重みで切れ、私の胸元へと落ちた。…潤んだ満潮の瞳は、とても切なそうだった。 「…おいで、満潮」 手を伸ばし、静かに私へと身体を沈めてくる満潮を受け止める。幼子を抱く、母のように。

2015-08-27 00:20:20
とある舞鎮の艦娘たち @S_side_story

私の身体にキスマークが増えていく。わざわざ満潮は朝潮がつけたところを避けていくものだから、私の身体には二人分の痕があった。…あんまりつけられちゃうと困るのだけれど。 「んっ…ぁ…」 ネグリジェの上から胸の先端を吸われる。唾液が染み込み、湿った感触がそれに伝わってきた。

2015-08-27 00:25:30
とある舞鎮の艦娘たち @S_side_story

「…ねぇ、荒潮」 「ん…なぁに…?」 …満潮が私の乳頭を吸うのを止めて、胸の上に頭を乗せる。私は身体の火照りをゆっくりと吐き出し、彼女の下ろしてある髪に手を伸ばした。さらさらしたそれを流れに沿って撫でながら、言葉に耳を傾ける。

2015-08-27 00:30:22
とある舞鎮の艦娘たち @S_side_story

「…ごめん、こんなことして…」 「…いいわよ、気にしないで」 いつもの満潮を知る人が耳にしたら、きっと心配になるくらい弱々しく零れた言葉。でも、私はこれが本来の満潮であることを十分に理解していた。

2015-08-27 00:35:36
とある舞鎮の艦娘たち @S_side_story

あのひとの戦う姿を、間近で見たのよね。同じ隊で出撃して、あのひとの活躍をその目に焼き付けてきたのよね。いつものしっとりとして透き通るような声が、勇ましさを帯びるのを間近で聞いたのよね。…たまらなくなっちゃったのよね。

2015-08-27 00:40:55
とある舞鎮の艦娘たち @S_side_story

…満潮には満たされない想いがある。でもそれを充足してあげられるのは、私ではない。私ができるのは、その報われない気持ちを少しでも和らげることだけ。…もっと自分のために生きることができたらいいのにね。本当に不器用で…優しいコ。

2015-08-27 00:45:31
とある舞鎮の艦娘たち @S_side_story

「ぁ…」 また、胸に甘い刺激が走る。最初の頃は甘えたいのかなって思ってたけど、それは半分違っていた。歯を立てたり、もう片方も指でこねたり。それをされて、満潮は私に愛撫してるんだって気づいた。…私の身体も反応した。どんどん、熱くなっていった。

2015-08-27 00:50:21