シャンタル・アケルマン『オルメイヤーの阿房宮』について

2011年、ベルギー製作、原作ジョゼフ・コンラッド、出演スタニスラス・メラール他
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ロラン @malgre_nuit

シャンタル・アケルマン『オルメイヤーの阿房宮』途方もない傑作。静寂とも不穏とも異なる、あるいは両者が共存した、言語化し難い異様な空気感。遂に嵐が通り過ぎた後、娘は自身を溺愛する父の元から去って行く。異国での停滞の時間。終幕の逆光が、黒い海と対極の男の「白さ」を皮肉に照りつける。

2015-07-10 03:10:09
ロラン @malgre_nuit

『オルメイヤーの阿房宮』冒頭、夜店のステージへと歩む男のバックショット。壇上で歌う男が刺された後、他の踊り子が逃げ去る中、一人踊り続ける少女。画面外の男の呼び声に彼女は、カメラ目線で歌い出す。この幕開けが既に本作の異様さを決定づける。

2015-07-10 03:11:41
ロラン @malgre_nuit

『オルメイヤーの阿房宮』前述した少女の父親である男は、娘を溺愛するが、本作には彼らが同時に映るショットが極めて少ない。基本的には家に留まる父に対し、娘は学校や市街、青年と忍び合うジャングルなど様々な場所へと移動する。一方向の愛に加え、この移動性の差異が、父娘の距離を決定的にする。

2015-07-10 03:21:49
ロラン @malgre_nuit

『オルメイヤーの阿房宮』ジャングルを移動する人物を草越しに映す横移動、建物の暗い廊下の縦構図の反復が印象的。ファーストショットから幾度か挿入される夜の黒い海、娘が歩く市街や波止場などの青の鮮烈さもまた。父娘の別れ際に広がる海に、本作のロケーションの素晴らしさを一望できる。

2015-07-10 03:24:07
ロラン @malgre_nuit

『オルメイヤーの阿房宮』ジャングルの草木だけでなく、川や海、あるいは豪雨として画面に現出する「水」が特徴的な映画だが、水浸しの室内にベッドが浮かぶショットには目を奪われた。 pic.twitter.com/0UYRvzGr9S

2015-07-10 03:26:19
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ロラン @malgre_nuit

『オルメイヤーの阿房宮』は、父が最愛の娘から徹底的に引き離される映画だが、同時に会話が独白のように響く対話不全の映画でもある。この一方向性が、母娘が二人きりでいるショットに父が現れた後に止む遠景の花火に凝縮される。また、『囚われの女』と同様に、画面内外の歌が挑発的に多用される。

2015-07-10 10:41:24
ロラン @malgre_nuit

シャンタル・アケルマンは、一般的に『ブリュッセル1080、コルメス3番街のジャンヌ・ディエルマン』のイメージが強いと思うが、ゼロ年代以降の『囚われの女』と『オルメイヤーの阿房宮』からは、ミニマリズムに留まらない演出への才覚が見出だせる。「男に抑圧される女性」という主題も然り。

2015-07-10 04:17:41
ロラン @malgre_nuit

シャンタル・アケルマン『オルメイヤーの阿房宮』について - Togetterまとめ togetter.com/li/866321 pic.twitter.com/6ikXjVAmkF

2015-08-28 02:28:40
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