(3) 紛争の一回的解決 このほか,裁判所全体にとって紛争の一回的解決の要請に資すること,すなわち,訴訟物を2個と考えると一部請求が可能となるところ,実質的には全部の審理をすることになるので,重複審理による訴訟不経済となるが,これを回避することの利点もある。
2015-08-29 18:05:06当事者が主張しなければならない損害の額は,①及び②の合計金額である180万円なので,内訳である①及び②のそれぞれの金額は,弁論主義の第1テーゼの問題ではなく,真実発見を趣旨とする自由心証主義(民事訴訟法247条)の問題として,裁判所の裁量に委ねられていると考えることができる。
2015-08-29 18:03:58(2) 弁論主義の第1テーゼとの関係 上記(1)の判決において,裁判所は,①80万円,②100万円と認定しており,②について,原告が主張していない損害の額を判決の基礎にしているところ,判例のように考えると,
2015-08-29 18:03:36裁判所による心証が,①80万円,②100万円のとき,原告請求の合計額180万円を上回ないので,裁判所は,180万円の請求認容判決をすることができる。つまり,処分権主義(民事訴訟法第246条)に反しない。
2015-08-29 18:03:052 本件において判例のように考えることによる利点 (1) 処分権主義との関係 判例のように考えると,たとえば,原告による損害項目について,①身体傷害を理由とする財産上の損害賠償請求の額が100万円,②非財産上の損害賠償請求の額が80万円の場合であって,
2015-08-29 18:02:52何れの請求も,原因事実を共通にしていること(同一交通事故)に加え,被侵害利益は,財産(普通自動二輪車)ではなく,身体(X)なので,被侵害利益も共通にしているから,同一の「実体法上の請求権」として訴訟物も同一である。
2015-08-29 18:02:28(2) これを本件についてみるに,人的損害のうち,①身体傷害を理由とする財産上の損害賠償請求は,民法709条を根拠とする権利であるのに対して,②非財産上の損害賠償請求は,民法710条を根拠とする権利であるので,条文は異なるが,
2015-08-29 18:02:14ここで,「実体法上の請求権」の範囲は,原則として,各条文によって画されるが,原因事実と被侵害利益を共通にする場合,これによって発生した権利について,私人は,実体私法上,別個に処分できないので,条文を跨いで1つの訴訟物になると考える。
2015-08-29 18:01:47第1 〔設問1〕 1 判例の考え方の理論的な理由 (1) 訴訟物とは,訴え提起に当たって,原告が主張する一定の権利をいうところ,その範囲については,「実体法上の請求権」を訴訟物とする考え方(旧訴訟物理論)が妥当である。
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