茂木健一郎氏 @kenichiromogi 第1591回【オリンピックの精神性はどこに】連続ツイート

茂木健一郎 @kenichiromogi

連続ツイート１５９１回をお届けします。文章はその場で即興で書いています。本日は、改めて、「あの問題」を。

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昨日、仕事の会食の席で、前回の東京オリンピックを体験したという先輩たちのお話を伺っていた。そうしたら、自衛隊の飛行機が五輪を空に描いたのを見ていた、という方がいらした。テレビ中継で五輪が描かれていて、外に出たら、ちょうど、それを描いているところが見えたというのである。

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その方のお話によると、１９６４年１０月９日までは、雨が降っていて、１０月１０日はきれいに晴れて、しかも、その空に五輪を描くという練習が、一回もうまくいかず、本番で一発で成功したのだという。

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「いやあ、学校の先生が、君たち、もしオリンピックのチケット持っていたら、学校休んでもいいから、行きなさい、とおっしゃっていたのが、忘れなくて。普段は真面目な、厳しい先生だったんだけど、こんなことはもう一生ないかもしれないから、行きなさいとおっしゃって。」時代の空気が伝わってくる。

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前回のオリンピックは、私が１歳から２歳に移る頃だから記憶がないが、日本人にとって戦後の復興の中、忘れがたい意義のある大会だったことは間違いない。では、今回の大会において、私たちはどんな価値を大切にするのか。エンブレム問題は、結局、その根っこの部分にかかわってくるように思う。

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エンブレムについては、その展開の構想を示した写真に盗用の疑いが出ているようだが headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20150829-… 私は、最初から、本質は盗用疑惑だとは思っていない。そもそも、エンブレムや、五輪に対する態度が、掛け違えているのではないかと感じている。

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今回「決定」されたエンブレムに、前回の東京オリンピックのエンブレムや、招致に使われたエンブレムのような強い印象がないことはすでに述べた。私が強い違和感を抱くのは、採用理由として、さまざまなグッズなどに「展開」できるという、商業的視点が最初から重視されている点だ。

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おそらく、これは、日本のクリエイティヴの病根にかかわることだと感じる。表層的な意味での「商業主義」につかっていて、より深い精神性がない。たとえば、AppleのThink Differentのようなコマーシャルをつくれない。カンヌのCMコンペでは、日本はどう見られているのだろう？

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前回のオリンピックから、５６年ぶりに訪れた、大切な祭典。それを象徴するエンブレムが、「展開しやすい」などの理由で選ばれることに、失望と憤りを感じる。それが「プロの判断」だと言うのならば、そのようなプロの根性は腐っている。それが本人たちには見えないことが、最大の悲劇だろう。

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以上、連続ツイート１５９１回「オリンピックの精神性はどこに」をテーマに、８つのツイートをお届けしました。