「イラストレーション締め切り探偵ザザ」第44わ「ザザ対8月31日の締め切り」
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時代が変わっても、俺らときたら、かわらない。俺は擦りきれたフォーノグラフ・レコードで、宇宙の中でもポルノグラフィを口を開けて摂取し、ピザを宇宙デリバリーするだけだ。SLAM!ドアを壊して入って来た円筒型ドロイドのキングダムボーイががなる。「ご主人、間に合わせろよ」「わかってる」1
2015-08-29 21:44:08キングダムボーイは22万円の48回ローンで購入したドロイド。進捗管理が主な役目だ。無駄飯ぐらいのカスだが、俺が顔を突き合わせて話す相手ときたら、こいつと、大家と、ピザのデリバリー高校生と、近所のハープーン・ドーナツの店主と、警官だ。そこそこ人数がいるな。俺は明るくなってきた。2
2015-08-29 21:46:19「ご主人、何を間に合わせるか、わかってるか」「知らんよ」俺は答えた。「いつだって何かに追い立てられて生きる、それが人生だ。ドロイドのお前にはわからんよ。いいか、地獄ってのはこの世だ。だけど、そんな中で目の覚めるようなハニーバニーねえちゃんとかが」「ザザピー」故障した。クソッ。 3
2015-08-29 21:49:17ピピンピュワピュワ……居間のモニタがアラームを鳴らした。無限ループしていたスペース・ダイアナシンディのポルノが玄関の監視カメラ映像に置き換わった。俺は目を見張った。ダイアナシンディよりもオッパイが大きくて、ダイアナシンディよりも美人の女(しかも自然的)が立っていたのだ。4
2015-08-29 21:51:35「やばい」俺は自分を見下ろした。あわててパンツ(下着的な)を履いて、パンツ(トラウザー的な)を履いた。まさかこんな役得チャンスがあるだなんてな。いや、勿論なにかの間違いかも知れない。でも、まさかっていう事があるだろう。人は1パーセントの可能性の為に全力で戦う。俺もその一人だ。 5
2015-08-29 21:56:43「ザザピー、やったのか」キングダムボーイはスリープモードから自己復帰した。「いや、まだやってない。これからだ」「そのやったのかじゃない。締め切りのやつをやったのかと聞いてるんだ、カラルド四世」「四世はつけんでいい!」「いいか、カラルド。延ばせば延ばすほど、次の締め切りは近づく」6
2015-08-29 21:58:20(途中ですが、皆さん、手を動かしながら読んでいますか?8月31日の23:59までに ebssl.jp/hobby/ninjasla… にイラストレーションを投稿する事ができます)
2015-08-29 21:59:22「延ばせば延ばすほど?どういうことだ」俺はキングダムボーイの言葉が気になった。キングダムボーイは答えた。「いいか、カラルド。まず、すぐの締め切りが、当然すぐだ。それを、滑り込んだとする。そうすると、その次の締め切りの日にちも、その分近づいているんだぞ」「エッ」「返済に似ている」7
2015-08-29 22:00:46「ちょ……ちょっと待ってくれよ?俺は2日後の締め切りについて……」「ザザピー」故障だ。困った奴だ。俺は我に返りインタフォンに応えた。「ハイ、どなた?」「わたくし新しい担当編集者ですの」「エッ!?どちらの!?宇宙ブレイン社ですか?」「たしかそうですわ」「たしか?で、今日は何の用」8
2015-08-29 22:04:53「ですから原稿をいただくための、打ち合わせがしたくって」「打ち合わせですって!?何の原稿ですか?」「ウフーン、わかっていらっしゃるでしょ?」「え……ええ、勿論です」わからんが、相手はスペース・ダイアナシンディより凄い。ここですげなく帰してしまうようでは、今までの俺と変わらない。9
2015-08-29 22:07:19「そのう……貴方は、僕の原稿がほしいんですか?」「アーン、そうなの」ダイアナシンディの息が荒い。「原稿を通して、人類と人類の間に横たわる、熱い流動性を取り沙汰したいんですわ」「学がありますな」こいつはいよいよだぜ。俺はキングダムボーイを振り返った。故障している。チャンスだ。10
2015-08-29 22:10:29「どうぞ。お入りになって」俺は亜鉛サプリメントを食べ、二重に隔てられた宇宙ドアを正しい手順で開けた。そして美女を迎え入れた。なんてこった!こいつはモニタ映像以上に凄いぜ。「熱い流動性については、私もそこそこ興味が……無いといえば嘘になります」「よかったですわ」 11
2015-08-29 22:16:38「つまり、その……」美女はソファにしなやかに座った。谷間がすごい!俺はしっかり目に焼き付けながら、平静を装って続けた。「キーボードを打ったり、文字データを入力する時、送り手と受け手の間に関係性が生まれて……それは命の営みと言えなくもない」「営みたいですわ」「待って!今何と?」12
2015-08-29 22:19:29「そういう学術的なお話はもうたくさん!」ダイアナシンディは言い、いきなり上着をはだけた。アーッ!これは本当に!「さあ、行きましょう!」ダイアナシンディは俺の手を引き、寝室へ!「いきなりすぎませんか!」「いいのよ!」「いいんですか!」「いいのッ!早く!早く……早く書けェェ!」 13
2015-08-29 22:20:41「書……エッ?なんですって?」「早くSHHHHHHHHHHH」ダイアナシンディの顔面がバックりと割れ、中から不定形の流動的な触角を無数に生やした極彩色の生き物がまろび出て来た!「カケエエ!カケエエエ!」「アーッ!」俺は生き物のヌラヌラする尾に捉えられ、寝室に引きずられていく!14
2015-08-29 22:23:58「かっ、か、描きますとも!8月31日の日付が変わるまでには完成するように、その……」「知ッタコトカソンナモノ!オマエハ俺様ノタメニ不眠不休デ俺様ノ自伝ヲ書キツヅケルサービス作家トシテ余生ヲ送ルサダメナノダ!来イッ!寝室ニ、ワームホールヲ開ケルゾ!」「アーッ!いや、ヤアアー!」15
2015-08-29 22:27:25「SHHHH!」化け物は酸で寝室のドアを溶かした!俺は有無を言わさず引きずられながら、全てに謝った。人々に……宇宙に、自然法則に。お願いです。だからこんな運命だけはごめんだ。どうか、だれか助けてほしい。「本当か?」「本当です、ちゃんとやる」「その言葉を待っていたのだ」「誰?」16
2015-08-29 22:29:31ZZZZAP!熱線が放たれ、ヌラヌラする尾が焼き切れた。「ギャーッ!」極彩色の化け物が身悶えし、熱線を放射したドロイドを睨んだ。キングダムボーイがそこにいた!「エッお前、そんな事ができたのか!?キングダムボーイ!」「ご主人、お前は、やるといったな?8月31日!」「やる」17
2015-08-29 22:31:17「よかろう……ザザピー……ザザザ……ザザ」俺が涙目で見つめる中、キングダムボーイの円筒形のボディは変形を始めた。すさまじく複雑なプロセスの可変を経て、そこにはダイヤモンドの両目を輝かせ、宇宙じみたマントをなびかせる、超自然のメタリックな存在が立っていた!「お、お前は一体!」18
2015-08-29 22:33:53「私はお前のような人間に締め切りを守らせる為、並行宇宙に同時に存在し、備えている」「待ってくれ。キングダムボーイは大昔の、」「超次元的な年数に比すれば、人の子の年月などまばたきの時間ですらない」「何てこッた」「キ、貴様ハ」怪物は呻いた。「イラストレーション締メ切リ探偵ザザ!」19
2015-08-29 22:36:32なんてこった。俺は夢を見ているのか?イラストレーション締め切り探偵ザザはダイヤモンドの両目義眼を光らせた。恐ろしい!「ギョママーッ!」怪物が襲いかかる!SMASH!「ギャーッ!」カウンターパンチで怪物は吹き飛んだ。「トドメだ!義眼光線!」ダイヤモンドの目から光線が放たれる!20
2015-08-29 22:38:08「ギョママママーッ!」怪物は一瞬で蒸発して死んだ。「この世には科学で解明できない謎がたくさんある。それを解決し、人々の締切を滞りなくするのが私の使命だ」なんてこった。寝室のドアを新調しなきゃならんし、このクソッたれな臭いが染みついたカーペットも……「机に向かえ!」「アーッ!」21
2015-08-29 22:40:46「締め切りは8月31日だ!」ザザは叫んだ。「描けッ!描くのだッ!」「ハイッ!」「わかったか!描け!」「ハイッ!」「もうすぐだぞ!」「ハイッ!」……宇宙時代。それは昔より少しだけ便利かもしれない。でも魂は同じさ。俺は今、机に向かい、ペンタブ、スキャナと格闘している。宇宙だが。 22
2015-08-29 22:45:18