五味先生のひとりごと ~プロがプロであるということ~

「プロ」とはなにか。 私たちは、何かの「プロ」であり、そして、それ以外のことに関しては「素人」であるのだ。
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五味馨 @keigomi29

素人が理解できないプロに文句を言い、プロは素人の理解できなさに付き合いきれないという状況は、ものすごく色んな分野で日常的に繰り返し起きています。地震、放射能汚染、火山、法律、教育、経済、などなど、枚挙にいとまはありません。困ったことですね。

2015-09-01 23:32:44
五味馨 @keigomi29

で、それがいまはどうやらデザインのターンに来たようで。ご関係の皆様の苦労が思いやられます。

2015-09-01 23:33:55
五味馨 @keigomi29

温暖化対策研究をする私たちは、科学と社会の接点のところで科学寄りにいるものですから、日常的にそういう場面に遭遇します。「分かりづらい」「難しい」「ちがうっていってる科学者もいる」などなど、よく言われます。

2015-09-01 23:36:41
五味馨 @keigomi29

私たちが理解されたいと思うなら、相手を変えることは出来ませんから、相手の言葉で伝えなければ通じませんし、いる場所が違うなら通じるところまでこちらから動かなければいけません。見てるところが違うなら視点の設定から話を始めなければいけません。

2015-09-01 23:38:22
五味馨 @keigomi29

プロがプロであるのは、体系化された大量の知識と情報、一朝一夕には見につかない技能、経験のストックに由来する判断の速さ、事象が与えられたときの問題構成能力、解決方法を見つけるための思考パターン、最新の情報・状況の入手ルート、良し悪しの判断基準、禁じ手のリストなどを持っているから。

2015-09-01 23:42:52
五味馨 @keigomi29

専門分化した社会では、あるコトのプロはそのコトに取組続けることでよりよくそのコトが出来るようになり、それを実現します。ということは、そうではない人にはそのコトは出来ないし、分からない。専門を持つということは、その専門以外の人々とは異なる何かになるということです。

2015-09-01 23:45:47
五味馨 @keigomi29

それが社会の中のいち機能である以上、当然ですが、ソトの人々とのかかわりが発生します。日常的に存在する接点では、異なる専門の機能間をつなぐためのインタフェイスが必要ですから、構築され運用されています。なかみはブラックボックスでも、ともあれ、必要なことは通じるようにする。

2015-09-01 23:49:24
五味馨 @keigomi29

ところが、それが、突然大勢の(例えば数千万人の)人々がそれに関心を向けたとき。普段全く接点がなく、知識や常識、行動基準の共通部分さえ小さいような人々が相当(例えば半分とか8割とか)いたりもします。そのような人々から見れば、「プロ」のいうことはさっぱり分からない、かもしれません。

2015-09-01 23:53:53
五味馨 @keigomi29

しかし「分かりやすく」「噛み砕いた」説明は必ず不正確になります。詳細、条件、例外、複合効果等を省き、専門用語を使わないことで、受け手の知識、認知負荷、思考能力等への要求を下げると「分かりやすい」と言われますが、専門家同士は正確な記述・理解・議論に必要で上記モロモロをしますから。

2015-09-01 23:56:18
五味馨 @keigomi29

ある問題をプロはこう考える。素人の多くは別のように考える。もしそうだとして、プロが多くのプロでない人にもプロと同じ結論に至って欲しいのであるとしたら、道は二つに分かれます。結論だけを受け入れさせるか、その結論に至る道をスタート地点から辿らせるか。

2015-09-01 23:58:07
五味馨 @keigomi29

結論だけを受け入れさせるために使われる主な方策の一つは、印象をよくすることです。この人は信頼できそう、この人のこういうところは好感が持てる、こういう風にする人なら嘘はつかないに違いない、私はほにゃららする人のいうことを信じる、等々ですね。

2015-09-02 00:01:07
五味馨 @keigomi29

日常的な多くの問題については上記のような人の印象によって判断することで、たいていの場合はうまくいきます。無論私もそういうことはよくあります。そこでこの文脈でも、受け入れさせたい側が、そういう態度を演出するよう努力することで、一定の効果はありそうです。

2015-09-02 00:03:36
五味馨 @keigomi29

そこに至るみちをいちから辿らせるのは大変で、プロとは何かということから考えても、ほとんど不可能と思われます。そこで、その論理や知識基盤のうち、とりわけ関係の深いところや、典型的な事例を示すことで、なんとか、辿るとまで言えなくても幹線道路をなぞるくらいは、という取組になります。

2015-09-02 00:07:37
五味馨 @keigomi29

プロとそうでない人、と二つに分けましたが、プロの間で分かれてることもあります。よくあります。そして、もしも(仮に二つに分かれているとして)両陣営が広く支持されたいと思うなら、人気取り合戦をしなければいけません。そこで印象改善合戦と説得説明合戦を、これも、よく見かけますね。

2015-09-02 00:10:56
五味馨 @keigomi29

なお私はデザイン一般についてはノーマンの著書を二冊読んだだけですので、ドアの引く側には取っ手、押す側には板をつけてほしいですし「高機能」なチューナー・レコーダー等の操作方法は恣意的過ぎて覚えられないので何とかしてほしいのですが、基本的には素朴な印象と思いつきだけです。

2015-09-02 00:17:24
五味馨 @keigomi29

本気で大勢(例えば5千万人)を説得する気なら、業界上げてチーム組んで本腰入れてPR(パブリック・リレーション)に取り組まないといけませんよ。2008年頃からの温暖化騒ぎ(覚えてます?)で先輩方がそれをやってるのを院生だった私は斜め下から見ていて大変そうだなぁと思っていました。

2015-09-02 00:19:45

五味先生は、プロの方が素人より「正しい」って言っているの・・?(そういうコメントが来た)

五味馨 @keigomi29

予想通りのコメントが来ましたが、そういう話はしていません。まあそこまでちゃんと読んでもらえることをtwitterでは期待していませんから「予想通り」なのですけどね。

2015-09-02 00:21:30
五味馨 @keigomi29

プロの側にやりたいことがあり、プロがそれ以外を説得したいという前提で、そのための方法を書いているのです。プロのほうがそれに関して大量の知識・経験・技能を持っているとは書きましたが、それがどのような場合も「正しい」とは、書いていませんよ。

2015-09-02 00:26:26
五味馨 @keigomi29

それ以外の問題設定をすべきことは沢山あって、例えば昨日私は福島県の自治体で役所の方と総合計画について議論しましたが、外部委員でさえない私は参考になる情報を提供しただけです。どう活用するかはそこの人達が決めることですが、問題の技術的内容の理解を手伝うことは出来ます。

2015-09-02 00:30:39
五味馨 @keigomi29

修士の院生の頃から国内自治体や諸外国の政府関係者と温暖化対策づくりに取り組んでいますから、温暖化とシミュレーションの「プロ」である私たちと、政策の「プロ」である彼ら、それに本当の当事者である住民・国民・事業者等々が色々やりあいながらよりよいものに、というのが私にとっての日常です。

2015-09-02 00:33:20
五味馨 @keigomi29

そこでは事前にプロが用意できる「正しい」答えなどありません。そもそも何が取り組むべき問題であるのかを共同作業で見つけることから始めます。ですからこの場合は「プロがプロ以外を説得する」という、先の連続ツイートで書いた問題設定は登場しません。

2015-09-02 00:35:00
五味馨 @keigomi29

ひとつレイヤを上にずらしてこの方法論そのものについて良し悪しを議論するという世界もありますが、それはまた別の話。

2015-09-02 00:37:43
五味馨 @keigomi29

というわけで、プロはより「正しい」のではなくて「異なる何か」と、あらかじめ書いておきました。 twitter.com/keigomi29/stat…

2015-09-02 00:38:39
五味馨 @keigomi29

さて寝ます。明日から夏休み。近畿をふらふらします。ではおやすみなさい。ウサギアイコンの方も、そうでない方も、よい夢を。

2015-09-02 00:39:35