艦隊これくしょん二次創作小説「艦隊これくしょん－艦これ－風がはこぶもの」第1話Part1

二んベん @ninben_r

それは突如、海の底から現れた。 それは突如、人類を襲い始めた。01 #nnbntx

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生物なのか、はたまた悪霊の類なのか、人々はそんなことすら分からないまま戦う選択を余儀なくされる。しかし、人とさほど変わらない大きさでありながら、軍艦と同等の火力と装甲を備えるそれに既存の兵器がどれほど有効であったろうか。02 #nnbntx

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それは海路という海路を蹂躙し、人類から海を瞬く間に奪った。 結果として、人類はその版図を大きく後退することになる。 何時しか人々は深海に棲み、深海より出でし『それ』をこう呼ぶようになった。03 #nnbntx

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—————『深海棲艦』と。04 #nnbntx

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「艦隊これくしょん －艦これー風がはこぶもの」第1話 #nnbntx

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少女は車より降り立ち、息をついた。年の頃は10代前半であろうか。銀髪は短く切りそろえられており、片目はわずかに前髪で隠れている。年相応の幼さを感じさせつつも凛々しさをあわせ持つ端整な顔立ちの少女である。05 #nnbntx

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真新しいセーラー服にその身を包み、少女は目の前に広がる建物へと思いを馳せる。 （ここが鎮守府、私がこれから生活する場所……） ほんの一時、少女が物思いにふけていると車の中から声がかかる。06 #nnbntx

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「では、私はここまでで。連絡はすでにしてありますので、まずはあなたが着任した旨をここの提督に報告してください」 「わかりました。ここまでお送りいただき、本当にありがとうございました。」 少女は深々と一礼し車内の男性に感謝の言葉を述べた。07 #nnbntx

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男性はその初々しい仕草に微笑みながらも敬礼を返すと、車を走らせ去って行く。少女は走り去る車に向けて、覚えたての敬礼をした。やがて車が見えなくなると、建物の方へと歩を進める。08 #nnbntx

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どうやら鎮守府の敷地は広大なようだ。体育館と思われる建物やプールといった施設がここから確認できる。正門の前方に広がるグラウンドでは何人かの少女たちがトレーニングに励んでいる様子が見えた。程なくして正面に聳える建物の入口に着くと、そこには一人の少女が立っていた。09 #nnbntx

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黒いセーラー服を着て、ポニーテールを緑のリボンでまとめた快活な印象を受ける少女である。 「あなたが今日着任することになっていた駆逐艦・浜風ね？」 「はい、私が浜風です。あなたは……？」 浜風はおずおずと目の前の少女に訊く。10 #nnbntx

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「ごめんなさい、自己紹介が遅れました。私は軽巡洋艦・夕張。この艦隊で秘書艦の任についています。よろしくね」 秘書艦、提督の業務の補佐や艦隊の管理等を主に担当する艦娘のことだ。艦娘に階級という概念は特にないが、秘書艦は特殊な立ち位置と言えるだろう。11 #nnbntx

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「はい、こちらこそよろしくお願いします！」 「そんなに緊張しなくて大丈夫だから、ね？」 夕張は笑顔を浮かべ浜風に優しく語りかける。 「では、これから提督のもとに案内しますので付いて来てください」 そう言うと夕張は背を向けて歩き出した。浜風はそれに付いていく。12 #nnbntx

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提督の執務室は1階にあるらしい。階段を過ぎ廊下へと入っていく。 すれ違う艦娘たちにあいさつをしつつ夕張は進む。浜風もそれに倣って軽く会釈をする。 夕張はある部屋の前で立ち止まり、振り返った。 「ここが提督の執務室になります」13 #nnbntx

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浜風はセーラー服に皺がないことを確かめ、タイを締め直すと黙って頷く。夕張はその姿を確認してから扉を開ける。「失礼します、夕張です。駆逐艦浜風をお連れしました」執務室は華美な装飾が施されていない簡素な部屋だ。隅々まで整理整頓が行き届き、部屋の主の性格が伺える。14 #nnbntx

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「ご苦労様、夕張ちゃん。君が浜風だね。私がここの艦隊を預かっている提督だ」提督は凡庸という言葉が一番似合う容姿をした年若い男性であった。特徴という特徴はないが、強いて言うならば人の良さそうな顔立ちは彼の魅力なのかもしれない。浜風は少しの安心感を覚え名乗る。15 #nnbntx

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「あー、そんなに堅くならないでもいいよ。うちの艦隊は緩いしね」提督は手をひらひらと振って言う。気さくな人柄なのだろう。あまり規律などにはうるさくない人物のようだ。そのような提督の姿を見て秘書艦である夕張はため息をついた。16 #nnbntx

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「提督、少しは取り繕ってください。最低限の節度は守っていただかないと士気に関わります」 「えーいいじゃん。うちの艦隊に所属する以上、普段通りの姿を見てもらったほうが良いって」提督は不貞腐れたように言った。だからその普段通りが問題なんです、と夕張は言い返す。17 #nnbntx

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夕張の提督に対する態度を見て、浜風は表情をやわらげる。ここに来る前は上下関係に厳しく、生真面目な軍人気質の性格という人物像を提督に対して漠然と抱いていたが、ここの提督はその人物像とは無縁らしい。18 #nnbntx

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軍人気質な性格が嫌というわけではなかったが、緊張しなくて済むというのは正直ありがたかった。浜風がそんなことを考えているうちに、夕張の説教に提督が折れたようだ。 「わかったわかったよ！以後気をつけるよ。それでいいだろ？」19 #nnbntx

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「以前も同じことを言っていた気がしますけど……まあ、今日のところはこのぐらいで」夕張の言葉を聞き、提督はほっと一息つく。ところで、と前置きし夕張は言う。「これより浜風に鎮守府内を案内しようと思うのですが、よろしいでしょうか？」提督は書類の束を一瞥して言う。20 #nnbntx

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「うん、大丈夫だよ。今日の仕事は一人でもこなせる量だと思うし」 「なるべく早く戻ってきますね。では、失礼します」夕張は提督に敬礼すると扉へ向かう。「失礼します」浜風も続いて敬礼し夕張と一緒に部屋を出た。夕張は大きく肩を落とし、申し訳無さそうに浜風へ話しかける。21 #nnbntx

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「ごめんね、あんな提督で。それなりに頼れるところもあるんだけど……」 「いえ、そのようなことは。むしろ、気さくな方で安心しました」 それは本心からの言葉だった。夕張はその言葉を聞き安堵する。「そう言ってもらえると助かるわ。じゃあ敷地内を案内するわね」22 #nnbntx

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「風がはこぶもの」第1話part1終わり #nnbntx