フォロウ・ザ・コールド・ヒート・シマーズ #4

日本語版公式ファンサイト「ネオサイタマ電脳IRC空間」 http://d.hatena.ne.jp/NinjaHeads/ 書籍版公式サイト http://ninjaslayer.jp/ ニンジャスレイヤー「はじめての皆さんへ」 http://togetter.com/li/73867
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ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

【フォロウ・ザ・コールド・ヒート・シマーズ】#4

2015-09-14 23:01:35
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「丘陵地帯!」ビッグユージがマイクに向かって煽り立てる。「もはや舗装道路なんてェ贅沢なものはありゃしない!ここからはまさに魔境!道なき道を進むしかないって寸法だ。レーサーが知るのはフジサン麓のチェックポイント座標のみ!麓は樹海!丘以上に危険。ルートを切り開き、生き残れ!」 1

2015-09-14 23:05:17
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「こいつはホットだ!」キンキー・コウイチがベンチプレスしながら白い歯を見せた。「ビジネスも未踏の原野を歩む。その勇気が無い奴は負け犬。僕について来い!」「冒険家精神だ」ユージはヘリのIRCモニタに頷き、続けた。「当然、お行儀のいいタイヤなんかじゃ、無理難題!皆うまくやれよ!」2

2015-09-14 23:09:20
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

まさにその時、ネズミハヤイの前で舗装道路が唐突に終わった。崖をジャンプすると、その先はヒースやイラクサで覆われた不穏な丘々。ジャンプ中にデッドムーンは「悪」のボタンを押す。するとホイール・タイヤが可変機構を働かせ、無数のスパイクを飛び出させた。着地時には完全オフロード仕様だ。3

2015-09-14 23:14:05
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「3時方向、竜巻だ」ニンジャスレイヤーが伝えた。デッドムーンは頷き、針路を修正する。前方遥か先にフジサン。車両の現在位置を伝えるマーカーの表示タイムはまだだ。「さあ皆さん、ルートはご自由にどうぞ!」ヘリからビッグユージがアナウンスする。 4

2015-09-14 23:19:42
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「オープンワールドこそ二日目の醍醐味。一方で、三日目はコースガイドが設置され、一日目・二日目のコースを最短距離で取って返す爆走レースだ。三日とも趣向を凝らしスタジアムの皆さんを飽きさせない、それがハシリ・モノだ!……んんッ?この広いフィールドで、エンカウントが発生!見てくれ!」5

2015-09-14 23:24:45
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

ビッグユージが注目したポイント、UAV(無人機)カメラのIRC映像がコロシアム・モニタに大写しになった。トマホークバンパー、羽根飾りの雄々しき車両は精霊信仰者ファストウインド。加速し、向かって行く先には、サンライザーのプラチナ。叩きつけるような雨の中にあってもその車体は美しい。6

2015-09-14 23:27:41
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「当然、キリング・マキ=サンはこのイクサを放置しない!」ビッグユージがカメラに向かってウインクし、キリング・マキは組んだ脚の膝の上で、いかつい宝石指輪を十個はめた指を合わせた。「ワオオオーッ!」観衆が湧いた。ファストウインドはサンライザーを一直線にめがける! 7

2015-09-14 23:33:15
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

ピュイイイイ!ピュイイイイ!バッファローの白骨を加工した笛状スタビライザが速度を受けて奇怪な高音を発する。ルーフが開き、雨の中に身をさらしたファストウインドの一人は、両腕を左右にまっすぐ突き出し、嵐に向かって咆哮した。「アロロロロロ!ハヤブサよ!我がハヤブサよ、来たれ!」8

2015-09-14 23:35:26
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「アロロロロロロ!」ドライバーは特殊ギアを引いた。するとトマホーク・バンパーが前へせり出し、より戦闘的なフォルムをあらわにする。サンライザーに肉薄する!「これは大変だ!当然、追う側がアサルト行為においては大有利だ!地の利があるぞ、ファストウインド!どうなる!殺すのか!」 9

2015-09-14 23:39:59
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「ハヤブサ!ハヤブサ!我がトーテムよ!アロロロロロ!」ルーフの祈祷係はもはやトランス状態となり、霊的存在と同一化する。セイシンテキ!「アーッ!これは!」ビッグユージが手に汗握る!しかしその時、サンライザーはジャックナイフめいた切れ味鋭いドリフトでファストウインドの前から消失!10

2015-09-14 23:42:34
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「そんな馬鹿な!」ドライバーが泡を食った。「消えただと!悪いエネルギーの持ち主!」「アロロロロ!左後ろ!左後ろ!ハヤブサの目は見通す!」祈祷係が素早く伝えた。ドライバーはハンドルと格闘する。だが時すでに遅し!斜め後方からサンライザーの輝く車体が体当たりをかける!KRAASH!11

2015-09-14 23:48:50
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「それは優しく愛撫して去るがごとき流麗な体当たり!」ビッグユージが興奮する。ファストウインドの車体が横倒しになり、サンライザーはもはや数十メートル先に去る!「トドメオサセー!」キリング・マキは第三の接近車両に向かって青筋を立てた。ナムサン!もう一台来ている!ヘルトリイ999!12

2015-09-14 23:54:43
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

恐るべき冒涜的車両に乱れ乗る白塗りのブラックメタリスト達は、先端部にスパナ状の凹みをつけて工具に偽装した両刃剣を振り上げ、往生したファストウインドに食らいついた。それは地獄の番犬が亡者を餌食にするがごとし!「アアアダブ(註:ブッダの逆読み)」「ヴォイド」「アバババババーッ!」13

2015-09-14 23:59:01
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「ウワーッ!やった!」ビッグユージは目を背ける仕草をした。スタジアムではキリング・マキがしかめ面で頷いた。KABOOOM!ファストウインドの車体はガソリンで描かれた魔法陣に囲まれ、放火されて、陰惨な破滅に呑まれた。「ヴォイド……」ブラックメタリスト達は半裸で雨の中に並び立つ。14

2015-09-15 00:07:07
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「こうなっては、形無しさ」キンキー・コウイチが肩をすくめた。「転んだら最後、跡形も残さない。でも、それがファンドの現実。それがレースさ」「彼ら、良く鍛えた身体をしている」フラストミチ・マレナが吟味するように囁いた。「悪魔崇拝も経済も体が資本」キンキー・コウイチは頷いた。15

2015-09-15 00:11:10
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「実際これは激しいレース。命が幾つあっても足りないところだが……?おっと、あっちを見てくれ!ナムサン!ネズミハヤイDⅢとホット19がドッグファイトを開始した!こうしちゃいられない。ハシリ・モノは一応、殺人ショーではなくレースなんだからな!」映像が切り替わる。 16

2015-09-15 00:17:23
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

KRAAASH!KRAAASH!ネズミハヤイを右に、ホット19を左に。衝突を繰り返す車両の体格差は殆ど無い。「ファック……負け犬が!」ホット・チックの美しい唇が怒りに歪んだ。一方のデッドムーンはゼンめいた無表情でハンドルをさばき、アクセルを踏む。17

2015-09-15 00:28:32
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

ぶつかり合う彼らの前方、巨大な木々が出迎える。丘陵地帯から、フジサンを取り囲む自然牢獄、すなわち樹海に差し掛かったのだ。「森の中に入ってしまうと、UAVで追う事は難しい!」ビッグユージは溜息をついた。「非常にノイジーなのが玉に瑕だが、車載IRCカメラの映像を受信していこう」 18

2015-09-15 00:29:56
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

樹海。それはフジサンを取り囲む闇の森だ。樹齢数千年の古木が群れ集い、湿った土の下には砕けた隕鉄が隠れているという。節くれだったマングローブの根や沼地、激流、バイオ鶏などの危険で知られ、探検隊TV番組のクルーもそう頻繁には訪れない魔境である。 19

2015-09-15 00:38:37
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

当然、自動車のドライブにははなから向かない土地であり、このハシリ・モノというレースがいかに過酷なものか、誰の目にも明らかであろう。しかし今、互いにぶつかり合う二車両にとって、最大の関心事は危険な自然ではなく、目の前の敵に勝つこと、ただそれだけだ! 20

2015-09-15 00:42:24
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「道を譲りな、武装霊柩車!」短距離無線を通し、ホット19のナビであるサンダリイ・ライラの罵り声が聴こえて来た。デッドムーンは車載マイクを使って答えた。「譲るも何も、どこが道なんだい……」ゴバババ!機体の尾を振り、泥土をホット19に跳ねかけながら、ネズミハヤイが先行する。 21

2015-09-15 00:46:35
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

そして、ゴウ、ゴウ、ゴウ!音を立ててすり抜けるのは大木の幹!このような障害物多数のロケーションでドッグファイトをすれば、クラッシュの危険は通常の数百倍にも跳ね上がる。いわばこれはどちらが先に音をあげるかのチキンレースだ!22

2015-09-15 00:49:20
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「昨日の態度はブラフかね!くだらない真似しやがって!」サンダリイ・ライラが罵った。「人捜しでもなんでもするがいいさ!」「盗み聞きは誇るもんじゃないぜ。誰もレースを捨てるとは言ってない……」「やる気のないフリを!」「こっちの心情を勝手に推測し、勝手にキレてりゃ世話は無い」23

2015-09-15 00:55:20
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

KRASH!KRASH!軽い衝突を数度繰り返し、二車両は立て続けに細い川を飛び越えた。「ギョアアア!」バイオ鶏が驚き、バサバサと音たてて、木々のウロから飛び出した。二車両が目指すのは、ただ、ナビゲーション電子マップ上の座標マーカー。詳細はネット経由で得た樹海情報が頼りだ。24

2015-09-15 00:58:41
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