韓国の甲状腺がんスクリーニングガイドライン2015年版と産科医ゼンメルワイスの物語
- parasite2006
- 1685
- 0
- 0
- 0
第1部
韓国の、特に甲状腺がん検診やら診療やらを行ってきた人たちが、「慣性」によって、過剰診断論に消極的ということはありうる。だって、これまでバンバン甲状腺がんを早期発見して手術してきたのに、突然に手のひら返しなんてできんでしょ。
2015-10-03 08:49:442015年韓国の甲状腺がんスクリーニングのガイドライン"ultrasonography is not routinely recommended for healthy subjects."( synapse.koreamed.org/DOIx.php?id=10… )「韓国の専門家の多く」は何してるん?
2015-10-03 08:50:41外部の専門家(NEJMやLancetに載ったような)なら、「明らかに過剰診断やん。止めろ、いますぐ甲状腺がん検診止めろ」って言えるけど、韓国内ではなかなかそこまで言えんでしょう。いろいろと政治的な配慮が必要。そういう観点からガイドラインの文章を見直すと興味深い。
2015-10-03 08:51:27第2部
それまでの標準的、慣行的に行われてきた医療が、実は有害であるという新しい事実が判明したときに、医療者はその新しい事実に抵抗する傾向がある、という問題がある。仮に「ゼンメルワイス問題」と名付けよう。
2015-10-03 09:20:46ゼンメルワイスは産褥熱の原因が、死体解剖後に手を洗わないことが原因と突き止めた。しかし、他の医師から猛烈な反発を受けたいう。まあ「お前の汚い手が妊婦を殺した」と言っているようなものだしね。
2015-10-03 09:21:00いまだに風邪に抗菌薬を処方する医師がいるけれども、これもきわめてマイルドな形ではあるが、「ゼンメルワイス問題」の一例だと思う。「これまで30年間の臨床でずっと風邪に抗菌薬を出してきたのに、いまさら風邪に抗菌薬は不要などという事実は受け入れがたい」という気持ちがある。
2015-10-03 09:21:47「ゼンメルワイス問題」を取り上げる理由の一つは、医師の自戒である。今現在、自分が行っている医療は、本当に患者の利益になっているのか?もしかしたら、意味がなかったり、むしろ有害ではないのか?臨床医は常に、自問自答していなければならない。
2015-10-03 09:22:14別の理由は説得・周知の方法論に関する。「お前の汚い手が妊婦を殺す。手を洗え」ではなく、「あれ?もしかしたら手を洗ったら妊婦の死亡が減るかもしれません。この仮説が本当かどうか、みなさんも検証してみてくれませんか?」とゼンメルワイスが言っていれば、少しは受け入れられたかもしれない。
2015-10-03 09:22:44あと、前にも述べたけど、「それまでの標準的な考え方に基づいて検診や治療をしてきたことは別に批判の対象にはならない」。「お前の汚い手が妊婦を殺したんだあ」とか批判したって、しょうがないじゃん。わからなかったんだから。反省は必要だけど、必要以上の批判はむしろ態度を頑なにさせるだけ。
2015-10-03 09:23:42ゼンメルワイスは「俺の汚い手が妊婦を殺したんだあ」という自責の念で精神を病んだそうだ(正確な史実ではどうかは知らないが通説によれば)。自己批判もほどほどにしたほうがよろしい。
2015-10-03 09:25:12ゼンメルワイスについて詳しく知りたい方は、[ゼンメルワイスの物語 - とらねこ日誌 d.hatena.ne.jp/doramao/201108… ]。『管理栄養士パパの 親子の食育BOOK』[ amazon.co.jp/dp/4895958825 ]を書いた方のブログです。
2015-10-03 09:38:52参考:イグナーツ・ゼンメルワイス(1818-1865年)が産科医として活動した時代(1846-1865年)は、日本史で言えば黒船来航(1853年)から明治維新(1968年)までの幕末の時代、蘭学者緒方洪庵(1810-1863年)が大阪で適塾を開いていた時代(1838-1862年)と一部重なっています。また遺伝の法則で知られるグレゴール・ヨハン・メンデル(1822-1884年)がウィーン大学で数学と物理学を学んだ2年間(1851-1853年)を含んでいます。余談ながら作曲家シューマン(1810-1856年)の後半生、ブラームス(1833-1897年)の青年期とも重なります。
最後に、上のブログ記事の結びの部分を再録します:
ゼンメルワイスの闘いは、それが正しいモノであったにも拘わらず、当時の常識や権威からは顧みられる事のないものでした。彼はその正しさを訴え続け、迫害されてきました。その状況を自身になぞらえて、私は正しいことをいっているにも関わらず、主流の医師や現代医療は私の説に耳を傾けようともしない・・・重大な事実が黙殺されている、そんな代替療法の提唱者、実践者の言を見かけたことがあります。
彼等の主張はゼンメルワイスの行為を貶めるような全く妥当性の無いものであると、どらねこは思っております。
ゼンメルワイスは疫学手法を駆使し、病気の発生要因を推測し、適切な予防策を考案しました。更に、その予防策自体の効果を、誰が見てもわかる形で提示し、証明を行ったのです。なんだかんだで、実証データを出せない根拠のない代替療法などと根本的に違うのはこの点です。