【ミイラレ!第十八話:町の神様たちのこと】(実況付き)
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一日ぶりの登校、そして昼休み。四季は怜とともにオカルト研究会の部室へと向かっていた。「都月先輩と会う前に聞いておきたいんだけどさ」横を歩く幼馴染に話題を振る。「その……先輩の退魔師内での扱いってどうなってるの?」「ほとんど不問扱いだね」怜が端的に答える。1 #4215tk
2015-10-05 19:48:14四季は怪訝な顔を向けた。怜も眉をひそめている。「もちろん厳重注意は受けてるみたいだし、ブラックリストにも載せられてる。けど、それ以上の処罰は受けてないみたい」「そうなんだ?」意外な話だ。やりたい放題やっていたように見えて、その実被害が出ていなかったのだろうか。2 #4215tk
2015-10-05 19:51:35そうこうしているうちに部室へ到着。四季がノックを「開いてるよー」する前に暢気な声が返ってくる。彼は怜と顔を見合わせてから、静かにドアを開けた。中にいたのは研究会の面々……すなわち都月薫に外藤紅子、そして鹿島かいな。なんらかの事故で人間を辞めた生徒たち。3 #4215tk
2015-10-05 19:54:10「こんにちは、四季くん。一日ぶりだね」全く変わらぬ人懐こい笑顔で薫が言う。「トリルがお邪魔してたみたいだけど、大丈夫だった?腰とか」「はい?」突飛な質問に四季は首を傾げる。刹那「みぎゃ」ごん、という鈍い音。突如宙に現れた手が薫の頭を叩いたのだ。4 #4215tk
2015-10-05 19:57:09「……そういうセクハラしないの」たしなめるように言ったのはかいな。長い前髪のせいでその表情は伺えないものの、やや赤くなっているように見えた。紅子が苦笑している。「悪いね、下級生くん。好きなとこ座ってくれ」「は、はあ」四季は曖昧な返事とともに適当な椅子へ。5 #4215tk
2015-10-05 20:00:05今の質問はどういう意味だったのか。怜にはなんとなく聞くのが憚られるような気がするので、彼は疑問を頭の片隅にしまうことにした。「……それで、本日はどのようなご用件で」怜がどこか冷たい口調で問い質す。そう、彼らがここに来たのは薫からの呼び出しがあったためだ。6 #4215tk
2015-10-05 20:03:20「やだなー、そんな他人行儀にならなくていいって!もっと気楽にいこうよ怜ちゃん。あ、名前で呼んでいい?」手を振りながら薫が言った。……紅子からとてつもなく申し訳なさそうな視線が向けられる。「え、えと、都月先輩」「薫でいいよ、四季くん。もう家族みたいなもんなんだし」7 #4215tk
2015-10-05 20:06:09「家族?」四季は眉をひそめた。心なし隣に座る怜の目つきが険しくなった気がする。「そ。四季くん、トリルと結婚するんでしょ?だとするとあたしのお兄さんみたいなものだし。あ、むしろお兄ちゃんって呼んだ方がいい?」「はい!?あの、すいません!全然意味がわからないです!」8 #4215tk
2015-10-05 20:09:21慌てる四季。薫はけらけらと笑う。「あはは!ごめんごめん。うん、そのへんを説明しとかないとね。今日呼んだのはそのためだよ」「……どういうことですか?」「あたしがどうして魔女になって、どうして紅子やかいなを怪異にしたか。そういう事情を説明するってこと」9 #4215tk
2015-10-05 20:12:10相変わらず軽い薫の言葉に、しかし二人は居住まいを正した。実際のところ、いかにして彼女が今回の騒ぎを起こせる力を手に入れたかを、彼らはまるで知らない。「そうかしこまらなくてもいいんだけど……ま、いいや。まずはあたしとトリルの馴れ初めから話そっか」10 #4215tk
2015-10-05 20:15:25言って薫が取り出したのは、一冊の黒い本。「ことの始まりは、この本を手に入れたとこから。中二の夏くらいかな?古本屋で見つけてねー。なんか惹かれるものがあったから思わず衝動買いしちゃって。で、中の手順通りにやったらトリルが出てきた」「軽ッ!?」思わず四季は叫ぶ。11 #4215tk
2015-10-05 20:18:20薫がくすくすと笑みを漏らす。「ねー。あたしもびっくりしちゃったよ。あとで聞いてみたら、なんかこの本があたしに巡ってくるのを待ってたみたいでね」「待ってた?」「この本ね、魔道具なんだって。持ち主と相性のいい悪魔を呼び出す、その補助をするための」12 #4215tk
2015-10-05 20:24:09本をひらひらと振りながら薫は続ける。「トリルの友達のなんかすごい悪魔が作ったものらしくて、『偶然』この世界に出回っちゃったんだってさ。で、トリルと相性のいい人間の手に渡るまで、ずっと他の人の手を転々としてたみたい」何気ない言葉に、四季は溜息をつく。13 #4215tk
2015-10-05 20:27:46なんという気の長い話か。成る程、道理で十年もかかったわけだ。「本来、悪魔が正式にこの世界に来るためには天使相手の手続きが必要みたいでさ。それが面倒だからこういう手段を取ったみたい。大変だよね〜」魔女が楽しげに笑う。「じゃあ次は、私が魔女になったときの話だよ」14 #4215tk
2015-10-05 20:30:5610年掛かるこっちの方が楽だと思うとは…どれだけ天使の手続きは時間掛かるというのか…。 あるいは10年掛かっても良いと思うレベルで本当に面倒なんだろうなぁ…天使って融通効かなそうだし…。 #4215tk
2015-10-05 20:34:33