黄昏町(九板)プロローグ

プロローグ。短い。 初日/一日目→http://togetter.com/li/883761
0
@hiiragi_r_t_d

「はぁー……つまらない」 わたしは深い溜息をつきながら立ち読みしていたマンガ雑誌を棚に戻し、迷惑そうに足元を掃除してくる店員を無視して隣のゴシップ誌を手にした。 適当なページを開き、ペラペラとめくる。名前も知らない雑誌だが、怪奇現象も取り扱っているらしい。 01 #hollytk

2015-10-06 21:55:07
@hiiragi_r_t_d

見開きには「神隠しか!?各地で頻発する謎の失踪者!!」との大見出しが踊り、品性の欠片もない煽り文句が並ぶ。 「頻発する神隠し、若手投資家も行方不明も二ヶ月後に発見の謎、ねえ……はぁー」 わたしは雑誌を棚に戻し、店員の舌打ちを聞きながらコンビニを後にした。 02 #hollytk

2015-10-06 21:57:31
@hiiragi_r_t_d

…神隠しだなんてばかばかしい。投資家とやらも、人間関係が嫌で雲隠れしたのだろう。 非日常は、起きないから非日常なのだ。 私にそんな劇的は訪れない。全ては日々の積み重ね。板の木目が突然変わったりはしないように、日々も少しづつの変化が積み重なって変わっていく。 03 #hollytk

2015-10-06 21:59:14
@hiiragi_r_t_d

詩的に修飾したところで、やはり日常は憂鬱だ。わたしは溜息を吐き出す。肺から追い出された熱気は冷たい風に触れ、白い霧になって吹き飛ばされた。 「あ、まひっちゃんじゃん!どうしたのー?」 「コンビニで立ち読みしてました」 「ええーナニソレーヤバくなーい」 04 #hollytk

2015-10-06 22:01:05
@hiiragi_r_t_d

「あはは、そうですね」 名前も知らない同級生(同じセーラー服に同じ色のスカーフだから、多分そうだ)の中身の薄い言葉に空虚な言葉を返しながら私は心中で溜息をつく。 嫌いだ。何も起きない日常も、空虚な友達も、それを拒めない自分自身、即ち九板 真筆という学生も。 05 #hollytk

2015-10-06 22:03:36
@hiiragi_r_t_d

「まひっちゃん今日これからヒマー?」 「すいません、買いたい本が……」 「好きだよねー」「くいちゃんいっつも本読んでるよねー」「「ねー」」 「ごめんなさい。それじゃ」 私は軽く手を振って彼女達から離れる。買いたい本があるというのは、口からでまかせだ。 06 #hollytk

2015-10-06 22:06:02
@hiiragi_r_t_d

「はぁー……」 俯いて路面を見ながら溜息をついた私は、家路につくことにした。帰ってお気に入りの本でも読もう。 「……もしも」 もしも神隠しが本当だったらなあ……なんて下らない事を考えて、すぐにやめた。 07 #hollytk

2015-10-06 22:08:26
@hiiragi_r_t_d

【診断名:九板】 【キャラクター名:九板 真筆(くいた まひつ)】 【「黄昏町の怪物」スタート】 08 #hollytk

2015-10-06 22:08:41