【LANCER】The Crimson Millage - 紅蓮の蜃気楼
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倒す。倒す。一心不乱に敵を倒す。仮面ランサーは連日ひたすらに戦いを続けていた。こうして戦うのが龍玉の力を馴染ませるのに一番であり、新たなフォームを覚醒させる切っ掛けにもなりやすいからだ。とにかく今必要なのは力だった……あの蛇王龍を打ちのめす程の力が。1
2015-10-13 23:31:06今回対峙するのはティガレックス亜種。その大咆哮はランスの防御力を以ってしても完全には防ぎきれない程の威力を誇る。敵の猛攻を凌ぎ続け、防御に徹していると至近距離からの大咆哮を許してしまう。このままでは劣勢になるだろう。だがその寸前からランサーのデュアルライザーが光り輝いていた。2
2015-10-13 23:32:05辺りの空間を揺るがすほどの大咆哮が轟く。だがティガレックス亜種は息を吐き切る前に突然尻尾を斬り裂かれて泡を食ったように前方に転げた。 「防ぎきれないなら避けるまで……と言ったところか」 ティガレックス亜種の背後には直前まで目の前にいたはずのランサーが立っていた。3
2015-10-13 23:33:04ランサーはじっくりと自身の変化した装備を眺めている。 「ようやくか……これが第4のフォーム、仮面ランサーミラージュフォーム。……!?」 新たなフォーム名を名乗ったところで突如反発し合う磁石のようにランサーともう一つ何かの影がそれぞれ真逆の方向に勢いよく弾き飛ばされた。4
2015-10-13 23:34:04「っ! 何だ!?」 「お前もとうとうここまで来てしまったか……」 謎の影が語りかけてくる。ランサーは片膝ついた姿勢から影の方を見上げる。そこにいたのは、紅いリベリオンヘルムを被った人物だった。5
2015-10-13 23:35:04その装備の全貌からして、先程見ていた自分の装備……つまりミラージュフォームと一致しているようだ。 しかも自分の装備を見てみるとリベリオンフォームに戻っていた。 ……一体これがどういう状況なのかまるで理解できない。6
2015-10-13 23:36:04「貴様は何者だ……?」 「俺はお前だ」 ランサーの問いかけに紅いランサーが即答した。 だがどういう原理で生み出されたのか、何が目的なのかその一切が不明の相手に却って不信感が強まる一方だ。7
2015-10-13 23:37:05「さてはダラ・アマデュラの刺客だな?」 現状で最も妥当な結論を出したランサーは得物を構える。 理由は分からないが、こいつが現れてから身体に妙な不快感を覚えていたこともあり、敵意を剥き出しにしていた。8
2015-10-13 23:38:07「待て。俺はお前の味方だ。まずは武器を納めろ」 紅いランサーはすかさず宥めようとする。だがランサーは武器を構えたままだ。 「言い残す事があるならさっさとしろ。これ以上振り回されるのはうんざりだ」 相手がダラ・アマデュラの手の者である前提の発言だった。9
2015-10-13 23:39:04かつてダラ・アマデュラによってこの世界に引き込まれ、危うく洗脳されかけたところを仮面ランサーとして覚醒したことで免れたのがこの因縁の始まりだった。 ところがその後も奴自身は一向に姿を見せず分け身ばかり嗾け、更には本体かと思えば強化を施しただけの分け身と戦わされた。10
2015-10-13 23:40:06それを倒してみせると奴自ら天剣の龍神玉をこちらに差し出してきた。わざわざこちらの強化を促すように。 仮面ランサーに変身する為のデュアルライザーすら向こうが用意していたものらしく何を企んでいるのか知れたものじゃない。 。これ以上相手の思惑に踊らされるのは癪でしかなかった。11
2015-10-13 23:41:05言ったはずだ。俺はお前だ。俺とお前は完全な同一存在。気付いているだろう?」 紅いランサーに言われてランサーは確信した。先程から始まったこの奇妙な感覚の正体を。自分の意識の中に確かに在るあの「紅いランサー」としての意識なのだろう。12
2015-10-13 23:42:05一つの意識をランサーと紅いランサーの両者が共有している。だが、少なくとも自分からは紅いランサーの認識している世界が隔離されており、相手の思考は分からない。 まるで自分の視界の半分が覆い隠されているような、或いは見えているのにそれが何か識別できないようなもどかしさがあった。13
2015-10-13 23:43:04「……確かに、お前は俺のようだな。しかし何の用があって出てきた? 仮面ランサーは俺一人で十分だ」 正直この状態は自分の中の不自由な要素が増えただけで単純に不愉快だった。 「ほぅ、お前は仮面ランサーというのか」 紅いランサーの発言にランサーは一瞬眉をしかめる。14
2015-10-13 23:44:03「ふん? 俺なのにそんなことも知らなかったのか?」 「シンキ、ではなくか?」 ランサーの疑問に紅いランサーは即座に返した。それに対しランサーは無言だが、相手の言いだしたこと自体はただの揚げ足取りとしか思っていない。15
2015-10-13 23:45:07自分はシンキであり、仮面ランサーである。その事はわざわざ意識するまでもない、当然の事実だ。 言葉に窮したのは何故そんなことを言いだしたのか、相手の意図を汲み取ろうと考えているためだった。16
2015-10-13 23:46:03「……どうにも察しが悪いようだが」 紅いランサーはどこか呆れた様に話の続きを始めた。 「元々お前の中には2つの認識がある。それが俺とお前だ」 「なるほどな。少し話が読めてきた」 ランサーは武器の構えを解き、確信を持って語り始める。17
2015-10-13 23:46:05「つまり俺は自分の事を仮面ランサーとして認識している部分ってことだな。そしてお前は差し詰め自分をシンキとして認識している部分というわけだ」 「その通りだ。そして……」 その時、先程尻尾を切断されてのたうち回っていたティガレックス亜種がランサー目がけて跳びかかってくる。18
2015-10-13 23:48:06「空気の読めない奴め!」 それを迎え撃とうとしたランサーは突如横から強い衝撃を受け、吹っ飛ばされる。 即座に受け身を取り顔を上げると、紅いランサーが既にティガレックス亜種の息の根を止めていた。19
2015-10-13 23:49:03「仮面ランサー、お前はもうその力で戦うな」 紅いランサーはティガレックス亜種の死骸を足蹴にしながらランサーにそう言った。 「何の真似だ……?」 「今言った通りだ。戦いを止めろ、お前はこれ以上蛇王龍の力に飲まれてはならない」20
2015-10-13 23:50:05ランサーはそれを鼻で笑う。 「蛇王龍の力に飲まれるだと? 違うな。俺は蛇王龍の力を制御できる。奴に俺を支配することなどできん」 仮面ランサーは「自由」の性質を持つマスクドエナジーにより、蛇王龍の洗脳に打ち克つことができる。21
2015-10-13 23:51:06王の束縛を拒み、逆に相手の力を取り込む。それが反逆の戦士たる仮面ランサーの所以なのだ。だが紅いランサーは首を横に振る。 「それこそ違う。お前は今、奴の思い描いた通りのシナリオに踊らされている」 「何……?」22
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