アンエクスペクテッド・ゲスト #1

日本語版公式ファンサイト「ネオサイタマ電脳IRC空間」 http://d.hatena.ne.jp/NinjaHeads/ 書籍版公式サイト http://ninjaslayer.jp/ ニンジャスレイヤー「はじめての皆さんへ」 http://togetter.com/li/73867
2
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

ピークタイムよりやや早いが、カフェテリアは既にごった返している。「リゾート、リゾート、あなたを、癒して」遠い歌声と、緩んだ弦楽器の音。水牛にまたがった黄色いビキニ水着オイラン4人が、燦々と降り注ぐ太陽の下、砂浜の上でフラめいた軽快な踊りを踊る。その青いセンスの動きは刺激的だ。 1

2015-11-03 22:53:50
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

空席を探す二人組。瘦せぎすの男が横並びの良い席を見つけ、指差した。彼の右手指は2本のケジメ痕。間違いなくヤクザだ。一緒に歩く傷跡とタトゥーらだけのいかつい男も、間違いなくヤクザだろう。二人はどっかと席に座り、正面の相席ガイジンに声をかけた。「ニイちゃん。ここ、空いてるよな?」 2

2015-11-03 23:00:41
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「どうぞ」ガイジンが顔も上げずに返事をした。爽やかな白Tシャツ、髪は短い金髪、ナチョビーンズを美味そうに頬張り、口元へ運んだ。いかつい男は彼を睨み、黒シャツの袖をまくる。「フウー……いい汗かいたぜ」そこには「悪い」「意味する」「破壊」などと書かれた凶悪なイレズミ。危険な男だ。 3

2015-11-03 23:08:34
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

だがこの獣じみた示威行動を前にしても、ガイジンはまだ顔を上げず、無言でビーンズを口に運んでいる。二人組は顔を見合わせ、片眉を吊り上げて、おどけたような顔を作った。それからいかついヤクザは、ガイジンに和かに話しかけた。「なあニイちゃん、俺たちゃ退屈してんだよ。話でもしようぜ」 4

2015-11-03 23:16:38
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「まだここに来て日が浅いんだろ?顔を見りゃわかるぜ、ニイちゃん。どうだい、ここの感想は?」「最高だね」ガイジンがようやく顔を上げ、スマイルを作った。「知らなかったけど、ここはまるで悪党の楽園さ」陽気でスピリチュアルなシャミセンの音が聞こえていた。「俺や、あんたたちみたいな」 5

2015-11-03 23:22:29
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「ああ、そうさ。で、ニイちゃんは、いつまで滞在するんだい?」「ほとぼりが冷めるまでだろ?でももう、ヒマでヒマで……」ガイジンは肩をすくめ、舌打ちしてから続けた。「それは退屈です、前後の時です」短い沈黙。「「「HAHAHAHAHAHA!」」」3人は顔を見合わせて笑った。 6

2015-11-03 23:35:07
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

PHEW……!その重サイバネガイジン、ラッキー・ジェイクは、心の中で汗を拭った。ジャパニーズ・リアルヤクザとの揉め事は、何としても避けたかったからだ。当然である。ようやく賞金稼ぎから逃げ続ける日々を脱し、束の間の安息を手に入れたというのに、敢えて面倒事を起こしたい者などいない。7

2015-11-03 23:42:52
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

ネオサイタマから帰国しようと悪戦苦闘する中で、ジェイクは数々の厄介ごとに巻き込まれ、リアルヤクザの執念深さを学んだ。「で、ナチョ・ビーンズの味はどうだい?」瘦せぎすのヤクザが満面の笑みを浮かべ、ジェイクに話しかけてくる。何か悪いプランに誘おうとする聖書の蛇めいた狡猾な声で。 8

2015-11-03 23:51:24
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

ジェイクは心の中で舌打ちした。ここにいる限り、こいつらとは何度も顔を合わせるだろう。フレンドリーに振舞いすぎてもダメだ。ナメられず、かつ敵意がないことを示し、ほどほどで手を引く。……ジョーク交じりの会話でもう少し様子見し、いざとなれば日本語が解らないフリだ。俺の得意分野だな。 9

2015-11-04 00:00:31
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「最高さ、上の上」ジェイクは両手をサムズアップし微笑んだ。「ここにケモ・ビールがあればさらに最高だ」「ビールだってよ……!」「HAHAHA……!」ヤクザたちが顔を見合わせ苦笑した。「ラッキー・ジェイク=サン、じゃあ何でミルクなんか注文したんだ?」「そりゃママのミルクかい?」 10

2015-11-04 00:09:00
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「ママの?おいおいこれは…」ジェイクは顔をしかめ、目を細めながら、水色のミルクパックの側面にある製造バーコードをサイバネ・アイでスキャンした。何故、右の瘦せぎすヤクザが自分の名前を知っているのか訝しみながら。「…タマチャン乳業製だぜ」「ならお前のママがそこで働いてんだろ?」 11

2015-11-04 00:17:31
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

ジェイクは眉をひそめた。まだ確信は持てぬが、相手のジョークは度を越している。(((こいつら、最初から俺にケンカを吹っかけるつもりで対面に座ったってのか……?クソッタレめ、少々ナメられちまったか?)))嫌な汗が滲んだ。「あんたら、相当なワルだと思うが、俺に関わらない方がいい」 12

2015-11-04 00:25:42
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「「HAHAHAHAHA……!」」ヤクザ2人はまた顔を見合わせて笑った。そして瘦せぎすヤクザが言った。「なら、何をしでかしてここに来たんだよ、ママをファック&サヨナラでもしたのか?」「いいや」ジェイクはにこやかに言った。「3億円を強奪して、ジャンボジェットをハイジャックさ」 13

2015-11-04 00:29:50
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「ファック!3億円!」逞しいヤクザが驚き目を丸くした。もう一人のヤクザは鼻で笑うように言った。「へえ?3億はどこにあるんだよ?」「没収されちまったからここに居るんだろ」とジェイク。「そりゃ全くラッキーじゃなかったな、ジェイク=サン。3億持ってたらお前を許してやってたんだが」 14

2015-11-04 00:39:47
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「YEEEART!」ジェイクは突如、配給プレートを痩せヤクザに投げつけテーブルに立ち、カラテキックで顎を蹴り上げる!「グワーッ!」SMAAASH!直後、ジェイクが座っていた椅子をフォークが貫通!テーブルの下では、凶悪な囚人武器フォーク・ガンが、彼の腹を狙い続けていたのだ! 15

2015-11-04 00:57:26
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

ナムアミダブツ!果たして何が起こったのか!?食堂内は騒然となる!「貴方!」「グワーッ!」「庶子!」「グワーッ!」ラッキー・ジェイクは痩せヤクザを殴り続ける!この男はデスシャドウ・ヤクザクランの執念深い殺し屋、ヤナギ!付け加えるならば、彼はジェイクのせいで無期懲役を食った男! 16

2015-11-04 01:00:18
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「助けてエーッ!」ヤナギは両手を上げ監視マッポにアピールする!既にフォーク・ガンは投げ捨てられ、周囲で囃し立てる囚人たちの間に転がり、証拠隠滅されている!相棒の逞ましい刺青ヤクザが、目にかかったナチョ・ビーンズを払いのけ、ジェイクに殴りかかる!「イヤーッ!」「グワーッ!?」 17

2015-11-04 01:05:05
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「イヤーッ!」「グワーッ!」「イヤーッ!」「ゴボーッ!」丸太めいた太い腕が、ジェイクを殴りつける!圧倒的なカラテの差だ!「「ホウ!ホウ!ホウ!ホウ!」」「「キル!キル!キル!キル!」」熱狂した囚人達が拳を振り上げ彼らを囲む!テーブルの上に乗って囃し立てる者も!コワイ! 18

2015-11-04 01:11:30
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「イヤーッ!」「ゴボーッ!」痛烈!大男はジェイクを殺す気だ!間合いを離そうとするも、背後から何者かに押し返される!「「ホウ!ホウ!ホウ!」」「死ね!ジェイク、死ね!」「「キル!キル!キル!」」「今度こそ死ねーッ!」囚人たちの声の中には、明らかにジェイクを恨む者たちの罵声が! 19

2015-11-04 01:17:39
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

ネオ・ロポンギの殺人カラテ・ドージョーで受けた1ヶ月間の集中トレーニングが全身に蘇る!「イヤーッ!」「YEEEART!」ジェイクは大男の連続パンチを凌ぎながら配膳台まで後退。そして熱々に煮えたポークビーンズ鍋をぶちまけた!「YEEEEEART!」「グワーーーッ!?」賢い! 20

2015-11-04 01:25:15
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「YEARRRT!」「グワーッ!」「YEARRRT!」「グワーッ!」形勢逆転!ジェイクが大男に馬乗りになり、左右のカラテパンチを叩き込む!だが背後からヤナギ!「イヤーッ!」「グワーッ!」さらに、興奮した別の囚人が加勢!彼は相当恨みを買っている!「イヤーッ!」「グワーッ!」 21

2015-11-04 01:27:38
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「死ね!ジェイク!」「ア……ア……」馬乗りで首をしめられるジェイク!ブガー!ブガー!ブガー!食堂内に暴動レッドアラート!「「「ケンカやめなさい!」」」鎮圧銃を持ったマッポ部隊が廊下を走ってくる!「リゾート、リゾ……ザザザ、あなたを……ザリザリ」天井のブラウン菅TVにノイズ! 22

2015-11-04 01:34:09
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「庶子……」ジェイクは声をあげた。マッポ部隊はまだ遠い。(((あんたの魂にも救いあれ……あんたはまだ、このマッポーの荒野をさまよい続けるんだな。でも大丈夫だ、あんたは正しい判断をしたんだ。いつだって、また戻れるよ))))友人の声が、薄れゆく意識の中でソーマト・リコールした。 23

2015-11-04 01:40:46
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「あれは何だ?」くだらないIRC賭けショーギに興じていた監視塔の狙撃マッポが、何かに気づき、相方に言った。「アアッ?」相方はレッドアラートの方向を見た。「食堂で騒ぎか?クソッ!ついてねえ。運動場なら俺たちの出番なのによ」「いや、あれだって」彼は相方の肩を叩き、上空を指差した。24

2015-11-04 01:46:05
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「ヨロシサン?」夕暮れ時の空を、ヨロシサン製薬の大型輸送機が、おかしな角度で飛行していた。問題は、何故それが、飛行禁止区域であるスガモ重犯罪刑務所の上を飛んでいるのかという事だ。さらなる問題は、その下腹部に吊られていた巨大輸送コンテナが、火花を散らしながら降ってきた事だ。 25

2015-11-04 01:52:21