竹熊健太郎のつぶやく、「あしたのジョー」の担当編集者

少年マガジンの編集者・宮原照夫さんについて。梶原一騎とちばてつやとの関係性や、あの最終回が決まった経緯など
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竹熊健太郎《Aタイプ》 @kentaro666

@tanamach 原作付きマンガの成功作は、概ね担当編集が優秀です。「あしたのジョー」の担当編集者、宮原照夫氏の作品への貢献は伝説ですね。少なくとも宮原氏が「真っ白に燃え尽きたい」とい作者すら忘れていたジョーの台詞を「発見」しなかったら、あのラストシーンは誕生しませんでした。

2011-01-15 07:46:52
竹熊健太郎《Aタイプ》 @kentaro666

「少年マガジン」四代目編集長の宮原照夫氏は私の尊敬する編集者の1人。宮原さんは高卒で講談社に入り、マガジンの創刊から関わってちばちつや、梶原一騎を担当した。野球が好きで、ちばの「ちかいの魔球」や梶原の「巨人の星」 は宮原の野球知識が大いに貢献したと言われる。

2011-01-15 08:06:44
竹熊健太郎《Aタイプ》 @kentaro666

戦後しばらくまで、講談社には中卒•高卒者の採用枠があり、彼らは野間社長の屋敷に住み込みで庭掃除から廊下の雑巾掛けまでやらされたという。そこからマガジン編集長を経て取締役まで登りつめた宮原照夫氏は、真の意味での「叩き上げ」だ。だから、強面の梶原一騎とも渡りあえた。

2011-01-15 08:17:40
竹熊健太郎《Aタイプ》 @kentaro666

だいたい「巨人の星」を一本最初から担当しただけでも編集者として大変な実績なのに、同時に「あしたのジョー」もやっていたのだからすごい。両方とも梶原一騎原作で、あの気難しい原作者の代表作2本とも、連載立ち上げが同じ担当編集者だと言うことはあまり知られていないが、重要だと思う。

2011-01-15 08:21:47
竹熊健太郎《Aタイプ》 @kentaro666

「あしたのジョー」に関しては、第一回の冒頭から、梶原原作(ジョーは高森朝雄名義)とは違う導入部になっている。一文字たりともげんさくの変更を許さなかった梶原一騎としては異例だった。もし宮原氏が担当者でなかったら、ちばてつや氏といえどもただでは済まなかったと思う。

2011-01-15 08:25:24
竹熊健太郎《Aタイプ》 @kentaro666

聞いた話だと、「あしたのジョー」の冒頭はボクシングの試合シーンだったという。梶原原作は冒頭シーンの「つかみ」のうまさに定評がある。読者に作品のジャンルを分からせるために試合から始めるのは、原作者として合理的な判断だが、ちばてつやはキャラクターと舞台説明を優先させた。これもアリだ。

2011-01-15 08:29:18
竹熊健太郎《Aタイプ》 @kentaro666

しかし、冒頭から原作を変更された梶原は激怒したという。梶原が怒ったらどういうことになるか、業界人なら誰でも知っている。まだ梶原が存命の頃、講談社のパーティに梶原と弟の真樹日佐夫が現れると、混み合ったパーティ会場はモーゼの十戒のように人が退いて2人の周囲に空間が空いたという。

2011-01-15 08:32:57
竹熊健太郎《Aタイプ》 @kentaro666

「ジョー」の最終回は、梶原の原作ではホセに敗れたジョーに「よくやった。おめえは試合には負けたが、ケンカにゃ勝ったんだ!」という丹下段平のセリフで終わったという。これにちばてつやが「ここまで盛り上げておいて、ケンカに勝ったはないでしょう!」と猛抗議した。

2011-01-15 08:37:44
竹熊健太郎《Aタイプ》 @kentaro666

ちばの抗議に梶原が折れ「ラストは任せるよ」との言質を宮原が引き出した。そこから徹夜で最終回のネーム作業に入ったが、なかなかいいラストシーンが浮かばない。そのとき、過去の原稿をすべて読み返していた宮原が、隅田川の川辺でジョーとガールフレンドの紀ちゃんが会話しているシーンを見つける。

2011-01-15 08:41:41
竹熊健太郎《Aタイプ》 @kentaro666

その場面は、紀ちゃんが「なぜ矢吹くんは、同世代の若者のように青春を楽しまないのか?」と疑問を口にする。そのときのジョんの答えが「俺はまだ真っ白に燃え尽きてないんだ」というものだった。宮原は、「ちばさん、ラストはこれですよ!」と叫んだという。

2011-01-15 08:45:26
竹熊健太郎《Aタイプ》 @kentaro666

こうしてあの名ラストが生まれたが、あそこまで個性の強いマンガ家と原作者をまとめて、完成に漕ぎ着けた背景にはちばとも梶原とも強い信頼関係を築いていた編集者・宮原照夫の力が働いていたことは確かだ。

2011-01-15 08:48:02
浦嶋嶺至|憂恋の花@AmazonPrime配信中 @urashima41

.@kentaro666 ふくしま政美先生によれば、梶原一騎は無名の頃から無記名でちばてつや先生のシナリオを書いており云わば梶原氏のほうが弟子の関係だったためちば先生には文句が言えなかった、と述べています。ならば今伝わる逸話はひょっとしたら後の書き換えによる「梶原伝説」なのかも。

2011-01-15 08:43:39
竹熊健太郎《Aタイプ》 @kentaro666

@urashima41 その話は僕もふくしま先生から聞いたことがあります。ただ審議のほどは別情報が入るまで保留にしています(笑)。

2011-01-15 08:50:44
コンバットREC @combat_rec

梶原原作だとエピローグがあったんですよね。 RT @kentaro666 「ジョー」の最終回は、梶原の原作ではホセに敗れたジョーに「よくやった。おめえは試合には負けたが、ケンカにゃ勝ったんだ!」という丹下段平のセリフで終わったという。これにちばてつやが「ここまで盛り上げておいて

2011-01-15 08:50:55
竹熊健太郎《Aタイプ》 @kentaro666

@combat_rec 原作のエピローグは、白木邸の庭の陽だまりで、パンチドランカーで廃人となったジョーの車椅子の傍らに白木葉子が佇んでいるシーンだったそうです。ちば先生本人から「あれはあれでいいシーンだったけどね」と聞きました。

2011-01-15 09:08:17
漫棚通信:「遠くから遠くまでを遠くから想う」公開中 @mandanatsusin

@kentaro666 一部が発見された「あしたのジョー」原作原稿を見ると、ジョー対力石戦あたりになると、ちばてつやは原作はあらすじ程度にしか使用してなくて、セリフや状況などもおもいっきり改変してますね。そのあたりになると梶原も納得してたのでしょう。

2011-01-15 09:13:08
竹熊健太郎《Aタイプ》 @kentaro666

@mandanatsusin 「愛と誠」は梶原原作が直筆を写真製版して出版されてますが、あれを読むとながやす巧氏は、一言一句ほとんど違えずマンガにしています。ちば先生は本当に例外だったんでしょうね。

2011-01-15 09:26:32
千葉 洋嗣 @putayaroh

@kentaro666 エピソードご紹介ありがとうございます!ラストシーンのヒントとなった紀子とのエピソードをお持ち頂いたのは、編集長である宮原さんではなく、当時の担当編集者さんだそうです。一応、補足というか訂正させてください。ちばプロ関係者より

2011-01-15 10:57:51
竹熊健太郎《Aタイプ》 @kentaro666

@putayaroh あ。そうだったんですか? 私はちば先生から直接伺ったんですが、その時ちば先生が「担当者が」と言っていたのをこちらが勝手に宮原さんと勘違いしていたのかもしれません。ご指摘ありがとうございました。

2011-01-15 11:00:39
竹熊健太郎《Aタイプ》 @kentaro666

ちばてつや先生の関係の方からご指摘があり、「あしたのジョー」の最終回のヒントは宮原さんではなく別の担当編集者によるものだったそうです。ちば先生から直接伺った話だったのですが、先生が「担当編集者が持ってきたアイデアだ」と言ったのを僕が初代担当の宮原さんのだと勘違いしていたようです。

2011-01-15 11:05:20