北条 久奈さんの突然政治学講義│政治哲学 - 社会契約論→功利主義→ロールズの正義論

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@Hisana_Houjou

久奈の突然政治学っ!前に参議院についてだらだらしゃべったと思うけど、第二回の今回はがらっと趣向を変えて、今話題の政治哲学について話をしてみたいと思うわ。なんか、去年急に出てきて、哲学書なのにすっごいベストセラーになったもんねぇ。

2011-01-16 21:06:22
@Hisana_Houjou

さて、政治哲学の流れとしては、社会契約論→功利主義→ロールズの正義論という感じで流れていくと考えるとわかりやすいと思うわ。社会契約論は高校の現代社会や倫理で習ったんじゃないかしら?ここが、まぁ、基礎よね。

2011-01-16 21:07:03
@Hisana_Houjou

学校の授業では社会契約論への批判を習わないから、社会契約論が現在の実定法における人権の基底にあると考えるのは当然なんだけど、実際のところ「現実に存在しない社会契約」を基礎にする社会契約論は批判され、政治哲学的には影響力を失うわ。

2011-01-16 21:07:27
@Hisana_Houjou

これは自然法理論が法実証主義によって批判され、とってかわられていった法哲学の分野でも似たような感じではあると思うわ。ここで、自然法理論にしても社会契約にしてもそうだけど、それが影響力を失うことにより、「人権」というのは哲学的に依って立つ基盤を失うのよね。

2011-01-16 21:08:10
@Hisana_Houjou

社会契約論の衰退後に現れたのがベンサムの功利主義よ。彼は「快楽が一番いいこと」と考え、さらに「快楽は数値化できる」とした。つまり、数値化した快楽を社会全体で最大まで持っていくことが最もいいことであるという考え方ね。

2011-01-16 21:08:46
@Hisana_Houjou

要は「最大多数の最大幸福」という考え方が功利主義なの。近代経済学はこの考え方を基礎にしているわ。ホモ・エコノミクス(経済人)という考え方もこの功利主義が下地にある。

2011-01-16 21:09:10
@Hisana_Houjou

ホモ・エコノミクスとはある与えられた条件のもとで、最大限自らの利益を得ようとする合理的な存在よ。近代経済学のミクロ経済学はこのホモ・エコノミクスによって支えられてきたと言っていい。

2011-01-16 21:09:26
@Hisana_Houjou

ベンサムの功利主義のもとで近代の社会科学は進んできたわ。功利主義の出現以後、それにとってかわるような理論は政治哲学から生まれてこなかったのね。いずれも功利主義の修正にとどまるレベルでしかなかった。

2011-01-16 21:09:52
@Hisana_Houjou

この状況はベンサムの死から約140年後に登場した、ロールズによる正義論で打破されるわ。彼によって死んだ学問と思われていた政治哲学は再び動き出したと言える。

2011-01-16 21:10:11
@Hisana_Houjou

ロールズの正義論は社会契約論を基礎としているわ。もちろん、社会契約は現実には存在しないものだから、それをそのまま持ってくることはできない。しかし、ロールズは「無知のベール」という概念を提唱したの。

2011-01-16 21:10:35
@Hisana_Houjou

無知のベールは単純に言うと、今のあなたの境遇や才能、社会の状況…こういうのを全部「知らない」状況下において望ましい政治政策を論じた場合、どのような政策が採用されるだろうかという思考実験よ。

2011-01-16 21:10:57
@Hisana_Houjou

あなたは何も知らない。もしかしたらあなたはとてつもない大金持ちでとっても有能かもしれない。でも、もしかしたらとてつもなく貧乏な家庭で能力も全くと言っていいほどない人間かもしれない。あなたにはあなたが社会で成功できる人物か否かがわからない。

2011-01-16 21:11:27
@Hisana_Houjou

さて、この場合普通の人はどんな政策を望ましいと考えるかしら?とっても有能かもしれない以上、みんながみんな同じ利益しか得られない共産主義にはなりえないと思われるわ。みんなは自由な社会を望むはずだ。そんな風にロールズは考えた。

2011-01-16 21:12:03
@Hisana_Houjou

一方で、社会福祉政策の存在しない夜警国家も望ましいと思わないのではないか、とした。だって、そうでしょ?もしかしたらあなたはお金も何もない能力もない人かもしれないもの。そんな人が社会福祉の存在しない社会を望むかしら?

2011-01-16 21:12:57
@Hisana_Houjou

この二つから導かれる結論はこうよ。まず第一に、自由主義が導かれる。身体的自由権や精神的自由権、経済的自由権が肯定される。ただし、これは他の人との自由と対立しない限りにおいて最大限の自由が保証されるという意味になる。

2011-01-16 21:14:16
@Hisana_Houjou

第二に、不平等の存在は容認されるが二つの条件を満たすものでなければならない。一つ目の条件は、その不平等が最も不遇な(つまり能力も資産もない)人の利益が最大化されるものであること。つまり、一番能力も資産も何もない人でもきちんと最低限の生活を送れる程度の不平等ということね。

2011-01-16 21:14:47
@Hisana_Houjou

もう一つの条件は、公正に均等な機会が確保されていること。つまり誰でもなろうと思えば一番上まで到達できる機会が与えられるべきだと、そういう意味ね。

2011-01-16 21:15:11
@Hisana_Houjou

ロールズの正義論は、社会契約の衰退以後哲学的な裏付けを失っていた「人権」に再び哲学的な裏付けを与えたわ。なぜ人権は尊重されるべきか、というね。

2011-01-16 21:16:19
@Hisana_Houjou

そして、この正義論の登場により、政治哲学は復活したわ。今話題のマイケル・サンデルはこのロールズの正義論を批判したことで有名になったの。だからロールズの正義論は今後の政治を考える上で非常に重要になるわ。

2011-01-16 21:16:40
@Hisana_Houjou

とりあえず、今日のところはこの辺で。あんまり長いと読む気しないもんね。あくまで簡単な解説ってことで、興味があればいろいろ政治哲学書を読んでみるといいと思うわ

2011-01-16 21:17:33