【心理学】Twitterの投票機能でブーバ/キキ効果を検証してみた

図形の視覚的な印象と言語音の間に関係性があることを示唆する「ブーバ/キキ効果」を,Twitterの投票機能で検証してみました。11月29日にコントロール実験の結果も追記しました。心理学実験の論理が伝われば幸いです。
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投票機能を用いた実験

きそしんくん@9年目突入! @kisopsy_kun

こちらの画像に描かれている図形A・Bは,一方が「ケコル」,もう一方が「ムプマ」という名前です。 pic.twitter.com/IuJ66QdTiM

2015-11-16 10:39:35
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きそしんくん@9年目突入! @kisopsy_kun

@kisopsy_kun さて,どっちがケコルでどっちがムプマでしょうか?

2015-11-16 10:40:57

解説

きそしんくん@9年目突入! @kisopsy_kun

昨日,投票機能を使って実施してみた実験の結果が出ましたのでご報告します。QT: こちらの画像に描かれている図形A・Bは,一方が「ケコル」,もう一方が「ムプマ」という名前です。さて,どっちがケコルでどっちがムプマでしょうか?pic.twitter.com/IuJ66QdTiM

2015-11-17 17:09:18
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きそしんくん@9年目突入! @kisopsy_kun

171の投票があり,結果は25%対75%で,「Aがムプマ,Bがケコル」 派が多数となりました。 pic.twitter.com/HhgEkIqeRv

2015-11-17 17:34:15
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きそしんくん@9年目突入! @kisopsy_kun

もし,図形と名前(音韻)との間に何ら関係性がないのであれば,投票数はおよそ半々になると考えられます(※後述するように,厳密に言えばちょっと違うけれども)。171票の投票に対し25%対75%という割合の偏りは,偶然生じただけでしょうか。それとも,何か必然性があるのでしょうか。

2015-11-17 17:39:56
きそしんくん@9年目突入! @kisopsy_kun

コイントスを考えてみましょう。もし表と裏の出る割合が50%対50%であれば,例えば171回投げれば,表85回・裏86回とか表80回・裏91回とか,だいたい半々になると予想できます。一方で,表6回・裏165回という結果になれば,何か仕掛けがあるんじゃないかと疑いたくなります。

2015-11-17 17:45:30
きそしんくん@9年目突入! @kisopsy_kun

実際に,コインを171回投げて表と裏の割合が25%対75%の割合よりも大きく偏る確率を計算すると,0.000000001%以下となります。偶然この確率を引いたと考えるよりは,そもそもコインに何か仕掛けがあって,表(または裏)が出やすくなっていたと考えるのが自然でしょう。

2015-11-17 17:50:46

↑訂正。
 「0.000000001%以下」と書きましたが,正しくは「0.00000001%以下(より厳密には未満)」です。手計算でうっかり片側検定をしてしまいましたが,この場合は両側検定するべきなのでp値を2倍にする必要がありました。
 ちなみに,Twitterの投票機能では投票率が1の位までしか表示されないため,171票に占める75%が128票なのか129票なのかはおそらく特定できません。ここでは厳しめに128票とみて二項検定をしています(どっちで見ても結果は同じですが)。
 なお,正確に書けば p = .00000000174092.... となります。

きそしんくん@9年目突入! @kisopsy_kun

心理学では(正確には,統計学の帰無仮説検定の枠組みでは)通例,ある事象の生起確率が5%未満である場合に,「偶然ではない」という判断を下します。コイントスの例と同様に,今回の投票結果における25%対75%という票の偏りは,偶然生じたものであるとは考えにくいでしょう。

2015-11-17 17:53:31
きそしんくん@9年目突入! @kisopsy_kun

さて,今回の実験の元になったのは,「ブーバ/キキ効果」と呼ばれる現象です。Wikipediaにも項目がありますね。ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%96…

2015-11-17 17:55:49
きそしんくん@9年目突入! @kisopsy_kun

元の研究は,丸い曲線から成る図形とギザギザの線分から成る図形を使って「どっちがブーバでどっちがキキか」を問うというものでした。この実験を実施すると,母語や文化に関係なく,9割以上もの人がギザギザの図形をキキと答えるそうです。

2015-11-17 17:58:26
きそしんくん@9年目突入! @kisopsy_kun

このことは,ヒトが図形の視覚的な印象と言語音との間に何らかの共通性(あるいは特異性)を見い出せる,という可能性を示唆しています。言語学の祖とも呼ばれるソシュールは,言語と指示対象(物体)との関係性は恣意的であると主張していますが,こういうケースもあるのですね。

2015-11-17 18:03:22
きそしんくん@9年目突入! @kisopsy_kun

今回は,原著と同じ「ブーバ/キキ」を使うのではあんまり面白くなかったので,「ムプマ/ケコル」という別の語を当てて,図形もなんとなーく変えてみました(動物っぽく見えるかな?)。予想通り,ギザギザしたほうをケコルと回答する人が多かったのですが,その割合はブーバ/キキより少ないですね。

2015-11-17 18:06:47
きそしんくん@9年目突入! @kisopsy_kun

ブーバ/キキよりも割合が下がった原因を考えてみるのもなかなか楽しいです。例えば「ケコル」の「ル」の母音がなんとなく丸っこい印象を与えたので「ケ」のトゲトゲした感じを少し相殺した,とか。(僕はこの現象については素人なのでただの直観ですが。)

2015-11-17 18:10:02
きそしんくん@9年目突入! @kisopsy_kun

ところで,こんなご指摘を頂きました。とても鋭いご意見です。 QT: @kisopsy_kun 音韻もあると思いますが順番もあると思います(大きな要因ではない気がしますが)。どうでしょうか?

2015-11-17 18:12:02
きそしんくん@9年目突入! @kisopsy_kun

図形を提示する順や選択肢の順番等は,本当はきちんと考慮しなければなりません。例えば,半分の被験者には丸っこい画像を左側,トゲトゲの画像を右側に提示し,もう半分の被験者には逆の位置に見せるとか。選択肢の順番も同様です。カウンターバランスやランダム化といった「統制」は不可欠です。

2015-11-17 18:14:51
きそしんくん@9年目突入! @kisopsy_kun

今回は厳密な結果を得ることには拘らなかったので,そういった統制を十分には行いませんでした。投票ツイートを複数に分けたら複数回答できちゃいますし,現実的にも厳しかったです。したがって,投票結果にそういった順序の効果やその他の要因が乗っている可能性も否定はできません。

2015-11-17 18:18:04
きそしんくん@9年目突入! @kisopsy_kun

あるいは,「このツイートはトゲトゲしてる方をケコルと思わせたいんだな,だが俺は逆を選ぶ!」という天邪鬼な人がいらしたかもしれません。もともとブーバ/キキ効果を知っている方もおられたでしょう。通常,研究者はこういった要因を可能な限り考慮して実験を計画します。

2015-11-17 18:21:41
きそしんくん@9年目突入! @kisopsy_kun

今回の企画は,ホリィ・センさんの以下のツイートを拝見して思いついたものです。 twitter.com/holysen/status… ブーバ/キキ効果に関心のある方は,ぜひネットや文献で勉強してみてください。

2015-11-17 18:23:54
ホリィ・セン @holysen

ふぁぼが星からハートになって鋭利なのから丸いのになったし、「ブーバ/キキ効果」の話してください @kisopsy_kun

2015-11-04 00:57:45
きそしんくん@9年目突入! @kisopsy_kun

また,今回の企画を通じて心理学実験の基本的な論理が伝われば僕としては嬉しいです。Twitterの投票機能は厳密な実験を行うのには不向きかもしれませんが,簡単な実験ならお手軽に試せるということを示すことができたと思います。シンプルですが,ロジック自体は複雑な実験とだいたい同じです。

2015-11-17 18:27:11
きそしんくん@9年目突入! @kisopsy_kun

とりあえずこんなところで締めようかと思います!投票してくださった皆様,ご覧になってくださった皆様,本当にありがとうございました!

2015-11-17 18:29:27
きそしんくん@9年目突入! @kisopsy_kun

.@keiryo_tan 「読み間違い」も考慮するべき要因のひとつですね。文字ではなく口頭で提示した場合には結果が変わるかもしれません(もしかしたらそれを比較した論文が既にあるかも?)

2015-11-17 18:30:50