“マカロニウエスタン生誕50周年”『荒野の用心棒』解説コラム「棺桶を三つ、用意いたしました。」蔵臼 金助
- klaus_kinske
- 12565
- 77
- 1
- 0
1964年に作られたイタリア製西部劇『荒野の用心棒』は世界的にヒットとなり、“マカロニウエスタン”ブームの火付け役となりました。 黒澤明の『用心棒』盗作問題も引き起こし、翌年1965年には日本でも東宝東和配給で公開されます。 pic.twitter.com/cczhTLD70w
2015-11-22 09:50:07ちょうど50年前の12月25日。 この日から、日本でも“マカロニウエスタン”ブームはスタートしたのでした。 今日はこの映画史に残るモニュメント、『荒野の用心棒』について解説いたしましょう。 pic.twitter.com/lT7pgp9s8k
2015-11-22 09:53:10まずは、「荒野の用心棒 完全版 製作50周年Blu-rayコレクターズ・エディション」掲載時のコラムを再掲します。 このBlu-rayは仕様、中身共に素晴らしいですよ。 pic.twitter.com/Ck8Of81vIh
2015-11-22 09:57:50“マカロニウエスタン生誕50周年” 『荒野の用心棒』Blu-rayコレクターズ・エディション付属リーフレット解説コラム。 「棺桶を三つ、用意いたしました。」蔵臼 金助(マカロニ銃器研究家) pic.twitter.com/36LD67SGyI
2015-11-22 10:08:26GIULA TESTA(頭を下げてろ) ゴーストタウンに轟き渡るダイナマイトの炸裂音。悪党面したメキシコ人どもは驚いて振り返ります。そして、たなびく硝煙の中からゆっくりと現われる、一人の男のシルエット。 pic.twitter.com/DZ3z0wIk96
2015-11-22 10:11:57『荒野の用心棒』のクライマックスシーンに象徴されるように、マカロニウエスタンという爆発物は突如、本作の公開によって誕生し、ボブ(セルジオ・レオーネ)によって点火され、その後類似物を増やしながら拡散、その硝煙は世界中へ拡がっていきました。
2015-11-22 10:12:28当時、娯楽映画の主流でもあった“正統派”西部劇の作り手たちは驚愕しましたよ。自分たちのフィールドでよそ者から異なる価値観を突き付けられ、それが世界中の映画館で喝采を浴びたのですから。爆発にひれ伏しながら、メキシコ人悪党どものように憎悪をこめた視線を送るのも当然というものです。
2015-11-22 10:13:29そこで次のシーンはお待ちかね、血で血を洗うLA RESA DEI CONTI(報復)です。互いの得物を用いて行うDUELLO(決斗)です。
2015-11-22 10:14:26燃えますねえ。 硝煙の匂いに混じり、「闘争か逃走か(fight or flight)」のホルモンとも呼ばれる神経伝達物質、アドレナリンの匂いもしてきました。 火に油を注げるよう、決闘に用いる得物を仕込んだ棺桶を三つ、用意いたしました。ひとつずつ開いていきましょうか♪
2015-11-22 10:15:07ラバに乗って国境近い町に現れたガンマンは、ポンチョの陰に6連発のリボルバーを隠し持っていました。コルト シングルアクション・アーミー .45口径 5.5インチ銃身 アーティラリー・モデル。
2015-11-22 10:18:00通称“ピースメーカー”…と言いたいところですが、予算の制約のせいでしょうか。拳銃本体はコルト社純正のものではなく、ヨーロッパ製のイミテーション・コルトです。 pic.twitter.com/9Xl3p2Pu4e
2015-11-22 10:18:46何の変哲もないこの銃に個性を与えているのは、銀色のとぐろを巻いたガラガラヘビのインレイ(象嵌)を施した木製グリップ。 pic.twitter.com/R0aw5k3ZWA
2015-11-22 10:22:55『ローハイド』第1シーズンの2話『神の裁き』に既にそのグリップは登場しておりますが、イーストウッドはこの蛇のグリップとガンベルト、ポンチョ、カウボーイハットに黒のジーンズ、そしてシガーを持参し、イタリアへと渡ったのです。
2015-11-22 10:23:04蛇のグリップをデザインしたのは、ガンリグ(ガンベルト)製作者のアンディ・アンダーソンです。 pic.twitter.com/xoK2xvqU6R
2015-11-22 10:30:19彼は独特のスマートなデザインのガンベルトを数多く設計、イーストウッドを始め、スティーヴ・マックィーン、チャールズ・ブロンソン、ヘンリー・フォンダ、ジョン・ウェイン…ハリウッドの名だたる西部劇スター達から愛用されました。 pic.twitter.com/7tCyOtvceN
2015-11-22 10:34:20アンディ・アンダーソンは自身のために銀でラトル・スネイクのインレイを制作し、コルトS.A.A.用の木製グリップに埋め込んでいたのですが、それに目を留めたのがクリント・イーストウッドです。
2015-11-22 10:36:18その蛇の飾りに惹きつけられたイーストウッドは、ガンベルトと同時に、同じものをアンディ・アンダーソンに発注したのです。当初、かっと口を開き、威嚇していた蛇のデザインは、口を閉ざし、舌を出しているものに改められました。
2015-11-22 10:36:51私は以前、あるコレクターの方から、イーストウッドがアンディ・アンダーソンに発注した時のS.A.A.用グリップ発注書コピーを見せて貰ったことがありますが、そこにはイーストウッドのサインと共に、「ウォルナット製2ピース」「シルバー・インレイ」などの仕様詳細が記述されていました。
2015-11-22 10:37:27銀の蛇の飾りが付いた木製グリップは欧州製のレプリカ・コルトに装着され、同じくアンディ・アンダーソンがデザインした“ウォーク・アンド・ドロウ”タイプの改良品、“ガンファイター・ステッチ”が施されたラフアウト仕上げのガンベルトに収められて、『荒野の用心棒』で使用されます。
2015-11-22 10:39:03“ウォーク・アンド・ドロウ”タイプのガンリグ(ガンベルト)と、イーストウッドのオーダーで改良された、“スパゲッティウエスタン・リグ” pic.twitter.com/6l1MGF3vRc
2015-11-22 10:50:43その後、“ラトルスネイク・インレイド・グリップ”は、『夕陽のガンマン』でコルト社純正のアーティラリーに、『続・夕陽のガンマン/地獄の決斗』ではイタリア製コルトM1851ネービーに換装されて、「名無しの男」の右腕となります。 pic.twitter.com/LGKTvpVM8H
2015-11-22 10:59:21ガンベルトはイーストウッドのハリウッド凱旋後も、『奴らを高く吊るせ!』『真昼の死闘』『シノーラ』『荒野のストレンジャー』で使い続けられました。 pic.twitter.com/13QJDJ2Kk8
2015-11-22 11:04:36「拳銃とライフルが戦えば、必ずライフルを持った者が勝つ」と豪語するのは、頭も切れて腕も立つ敵役のメキシコ人ラモンです。扮するのは、イタリアの名優ジャン・マリア・ヴォロンテ。 pic.twitter.com/3U0zNvLViz
2015-11-22 11:07:00