koh0516さんの「毛利甚八氏の訃報に、再び遺作の『「家栽の人」から君への遺言』に触れる。」

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毛利甚八氏の訃報に、再び遺作の『「家栽の人」から君への遺言』に触れる。少年の犯罪について原因究明の重要性を指摘する氏が「佐世保高一同級生殺害事件」について「逆送ではなく家裁での調査を」と申し入れた際、大きなバッシングに遭ったという。 pic.twitter.com/d9zFHzGS0A

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少し検索しただけで「偽善」とか「犯罪者擁護団体」「プロ市民」等々、おぞましい言葉の礫を投げつけられていたようだが、毛利甚八氏はひるまず一冊の本として思いを書き遺した。その原動力は、少年法の「非行少年を権威的に裁くのではなく、非行を科学的に解決する」という理念にあったように思う。

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毛利甚八氏は「家栽の人」の連載を終えてから、神戸での事件を始め様々な少年事件の取材を重ねるとともに、大分県の少年院で『篤志面接委員』として収容されている少年との対話にも関わるようになった。この時期、大分に勤務していた私も、酒食をともにさせて頂きながら話を聞かせてもらったのだった。

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こうした経験から、毛利甚八氏は少年法の厳罰化に否定的だった。それは、ただ単に“性善説”や“少年の心の可塑性”を信じるだけではなく、触法少年の問題の過程を細やかに調べる事で、同人による犯罪、そして同様の犯罪が繰り返される事のないように『科学的に解決』すべき、ということだったと思う。

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少年の厳罰化を求める人々の慣用句は「被害者・遺族より加害者の人権が守られている」と言うが、そうなのだろうか。加害者の名前は法により明らかに出来ないのに、被害者がどのような状況にあったか詳細に報じられていくことについて、責められるは無思慮なマスコミやネット上の野次馬ではなかろうか。

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例えば、殺人を犯した少年を「死ぬまで外に出さない」ことや「縛り首」にする事で世間が溜飲を下げる、というのでは、世の中は安全にならないと思うのだ。内閣府が９月に「少年非行に関する世論調査」で「少年の非行が増えていると感じている人が78.6％」と発表したが現実とは大きく乖離している。

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舞田敏彦先生のデータについてリンクを貼るが、 tmaita77.blogspot.jp/2014/08/blog-p… 「少年犯罪は減っている」のに、肝心のお上が印象に頼った調査などをしているから、少年の犯罪がより印象づけられ、そして過剰に報道されるという悪循環を生んでいるのは明らかだ。

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この本の中で毛利甚八氏は、こんな無知がまかり通る世の中について、『彼らが罵倒する「サヨクが守ろうとする人権」は、どちらかと言えば彼らを守る権利に他ならない。それなのに、なぜか彼らは保守政治家や検察のかたわらに座り、自分が犯罪者を断罪できる立場にいると、勘違いしている」と嘆息した。

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少年の犯罪の多くには、背景に生育時の問題が見られ、それは貧困や低学力の再生産が大きな原因になっているし、その原因に手を付けなければ、少年院や少年刑務所から社会に戻ってもまた犯罪に関わるという悪循環に陥ってしまう。だからといって、彼らをずっと社会から隔離することにすれば良いのか…。

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神戸の「元少年A」の現状を考えると難しい問題ではあるが、触法少年を隔離し続ける膨大なコストはかけられないだろう。すると「社会の中で更正させる」ことと「過去の知見から非行を防ぐ」ことは避けて通れない。抑止力と言って単に厳罰化しても、この２点を失えば世の中の安全度は高まらないと思う。

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「佐世保高一同級生殺害事件」についてだって「加害者が許せないから死刑にするかそれができないならば無期懲役だ、更正なんて関係ない、刑事裁判で厳罰を」という声が大きいが、加害少年には小学校時代から問題とされる行動がいくつか指摘されていた訳で、これはそもそも防ぐ事が出来た犯罪なのだ。

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刑事裁判がまるで駄目とは思わないが、こうした犯罪が繰り返されないようにするためには（＝世の中の多くの人々の人権を守る為には）、丁寧に原因を究明し「どうしてここまでの事態になったのか、止めるとしたらどこで止められたのか」を探るのに「家庭裁判所」が適しているという論には説得力がある。

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毛利甚八氏の遺作 bookclub.kodansha.co.jp/product?isbn=9… は、後半に「佐世保高一同級生殺害事件」の加害少年への手紙という体裁をとっているが、ぜひ、少年によるセンセーショナルな犯罪（の報道）によって怒りを抱いたり、不安になった人に是非読んで欲しいと思っている。

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「家栽の人」はベストセラーになり、ドラマにもなり、約２０年経った現在も原作者・毛利甚八氏の訃報の見出しになる、多くの人達に愛された作品だった。作品が愛された背景や読んだ人々の心の中には、触法少年に対するあたたかなまなざしがあったはずだ。そんな思いと、今回の遺作が結ばれればと願う。

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あらためて毛利甚八氏の逝去に心からお悔やみを申し上げます。 初めて出会った時、毛利さんは４４歳、私は２５歳でした。 今は２人の子どもや職場の若手など、人を育てる難しさに直面する年齢になりましたが、遺言を自分なりに噛み締めて「人」と向き合って行きます。 ありがとうございました。