【模型工作小説】「少女工作事情 マテリアライズ・ファンタズマ」パーツ1「もし模型がVRで具現化できたら?」
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【口上】「やっぱり模型にはストーリィがなくちゃだよ!」「その趣味にのめるこんでる人は、WWWなんかしてる暇が惜しいもんね、と反省しつつ」――森博嗣(「日記シリーズ」より)
2015-12-09 11:21:10【口上】燃え上がれ、燃え上がれ、燃え上がれ!!!ガンプラーッ!!!!――ユウキ・タツヤ(「ガンダムビルドファイターズ」より)
2015-12-09 11:22:11【口上】あとからヤスリで修正すればよいといった安易な気持ちでは、正確な組み立ては期待できません。――菅原道雄「鉄道模型工作技法」
2015-12-09 11:24:02twitter詩小説――「少女工作事情 マテリアライズ・ファンタズマ」 パーツ1、「もし模型がVRで具現化できたら?」
2015-12-09 11:25:35あ、もう着いてる。「ごめん、待った?」「なんかデェトみたいですなぁ、ひゅーひゅぅ」メガネの底でニヤリング瞳。カーディガンを基調とした地味だがかわいらしい女子力75%を、少々待たせたのは事実だ。私こと竜胆水(リンドウ・ミズ)の不覚 1
2015-12-09 11:28:58空青し。心も青し。工作をしてればいつだって心は青し。人間(じんかん)の付き合いなどバグにすぎない……とは目の前の友人には言うまい。「なんか考えてる?」なぜばれるし。「まあいいや、行こう、ミズちゃん」このメガネ女子力は、藤堂という。私の工作友達だ。2
2015-12-09 11:31:07「しかしほんまかいな」私は走ってくる最中でざんざにバラけた長い髪を、軽くゆわく。ゆわきながらトーク。 「【マテリアライズ・スキャナ】のこと? 何をいまさら」「いやまあ今更はいまさらだし、VR技術の普及に唾つけることでもない。でも、いちクラフツマンとしては思うとこがね」3
2015-12-09 11:33:34藤堂は言う。「まあわかるよ。なんてったって、【ヴァーチャル空間上で、自分が作った模型が実物大化する】んだからね」 ……そう、それが、近未来になって発展したヴァーチャルリアリティ技術のたまもの、「マテリアライズ・スキャナ」のこと。4
2015-12-09 11:35:26ヴァーチャル・リアル関連……VR技術は、当然ながら工学分野であり、とにかくすごくなった。ついには、現実の物質(マテリアル)をそのままそっくりスキャンし、VR空間で自由自在に動かせるようになった。ようは「現実とVRの区別ナッシング」な時代である。そうなのだよベイブ。5
2015-12-09 11:38:00従来、超大型だった現実物質スキャナ……通称「マテリアライズ・スキャナ」は、技術発達の末に、片手で持てるくらいの大きさになった。サランラップの箱のようなモンと考えればよい。それをこう、びゃーっと魔法をかけるように、工作物を照らせば、スキャン完了、VRでご自由に。6
2015-12-09 11:40:28「ミズちゃんは何を持ってきたん?」「とりあえずタミヤの35(t)」「えーと、確か戦車だったよね」「正確にはドイツ軽戦車35(t)。1/35スケール」「そんな型番言われても」「ドイツ戦車の中ではセンター張らないものの、味がある戦車だというに」「出たよ模型マニアミズちゃん」7
2015-12-09 11:43:43……そう、私、竜胆水は、模型マニアである。模型ならばフルカバー。陸海空……戦車、戦艦、戦闘機。だけでなく、民間機も、カーモデルも、バイクもガンプラは主食だし、ほかのキャラクターメカモデルもいける。ただし……美少女フィギュアはあんま得手じゃなく。そんな感じ。8
2015-12-09 11:46:07都内の大学の工学部に籍をおいて、授業で機械を作って、趣味で模型をつくる。とてもシンプルな人生で、大変よろしい。で、このマテリアライズ・スキャナ。略してマテスキャ。当然ながら講義で取り扱ったことはあるのだけど、趣味ではまだ。というのも……今から行くのは……9
2015-12-09 11:47:49「やー、最近ログインしてなかったかんね。みんな元気かなー」藤堂がのびをしながら遠望していう。そう、これから行くマテスキャ貸し出しサービスでは、作者に支給されるVRギアもある……すなわち。工作物をスキャンするだけでなく、実際に人間がVR空間で巨大工作物を愛でられるのだ!10
2015-12-09 11:50:21貸し出されるヘッドマウントVRギアは、規約により、1模型につき2台まで借りられる。ということで、私と藤堂は、VR空間で、私作のタミヤの35tに乗るということになる。 ……今まで授業で触れてても、やってない、というのは、単にこのVRギアを使ったVRソーシャル空間に私が……11
2015-12-09 11:53:32そんなに興味を示してこなかったから、ということだ。単に、私が古い人間だ、ということもある。モノを作っていれば、模型はただそれだけでいい、と考えるような。もちろん、「VR具現化…そうなったらいいな」とは考えるけど、いざ実際になって、周りの熱狂にちょいアテられちゃってね。引いた。12
2015-12-09 11:54:56まあ私のそんなグダグダもそれなりに時間がたって、「まあいいか」と思えるようにもなった。時間は薬だ。そんで、このソーシャルサービス黎明期から熱をあげてた藤堂が、私をくどいくらい誘うもんだから、私はとうとう手をあげた、って具合。13
2015-12-09 11:56:13というわけで、秋葉原のワーキングスペースにやってきて、ルームに二人で入る。もう結構ひといるよ。私は工作テーブルの上で、スキャンをして、藤堂にOKサインをかます。ぐっ、と藤堂は親指を立てる。んで、私もVRギアをかぶり……電脳空間、ダイヴ・イン。さて……どうなりますことやら 14
2015-12-09 11:57:47twitter詩小説――「少女工作事情 マテリアライズ・ファンタズマ」 パーツ1、「もし模型がVRで具現化できたら?」 了 次回、パーツ2「作った模型戦車に乗ってみる、戦場を駆けてみる」に続く……
2015-12-09 11:58:43