電力会社が適正な利益を出せないということの、私たちの社会にとっての意味
九州電力や関西電力がこの冬もボーナスを支給しないことについて、いい気味、と思う人は以前ほど多くはないと思うけど、仕方ない、くらいは多くの人が思っているのではないだろうか。その帰結というか、影響範囲がどこまで及ぶのかについて、一般の人が想像するのは難しいかもしれない。
2015-11-11 19:29:58私たちが当たり前のように享受している快適で安全な暮らしは、電力を含めた社会インフラが高いレベルで維持されて初めて実現できるもので、世界の多くの人々にとっては当たり前ではない。豊かさや便利さが必ずしも幸せと直結するわけではないが、「安全」とは直接的に結びつく。
2015-11-11 19:30:51電力について言えば、発電部門はもちろん送配電部門や事務方など多くの人々が関わって安定供給を支えている。局地的な豪雨や雷などの自然災害でも停電が極めて少なく、停電しても短時間で復旧しているのは、災害の中を出動して対応している人がいるからだ。
2015-11-11 19:32:10ちなみに、事故原因のトップは雷事故で、関西電力管内の例では架空送電線で年間約400件、高圧配電線で約200件、低圧で約1100件程度発生している。現場を支えているのは高い技量とプライドを備えたプロ達だが、彼らにも家族がいて、生活がかかっている。電力会社は今、深刻な人手不足だ。
2015-11-11 19:35:13自分自身や会社に何ら落ち度があるわけでもないのに、安全な運転に支障のない発電設備を活用することを阻まれ、その結果コストが上昇しても価格に正しく転嫁することも許されず、電気料金にはほとんど影響のない人件費カットを社会への見せしめのためだけに強要される。それが今の電力会社だ。
2015-11-11 19:36:49将来を見通せず、とても希望が持てる状態ではないため、若い人ほど辞めていく。その結果、技術伝承が危ぶまれるようになってきている。人件費だけではなくあらゆる費用がカットされているため、保守作業そのものも減り、協力会社への発注も減らさざるを得ない。
2015-11-11 19:38:32他では真似のできないような高い技術を持った協力会社の多くが既にいくつも廃業している。当然の帰結として、以前と同じ品質で電力インフラを維持することはすでにできなくなっている。私たち電気利用者が電力の質の低下を意識するのはまだ当分先だろうが、インフラの劣化は既に始まっているのだ。
2015-11-11 19:39:15発電設備にしても、現在原子力の抜けた穴を懸命に埋めている火力発電設備の多くは本来想定されていない長時間の連続運転など、無理な運用を強いられている。ある程度の期間発電を止めて行う大規模整備の時期もとっくに過ぎているのだが、予備率が不足しているため必要な整備もできていない。
2015-11-11 19:40:57現在の運用は原子力発電所が再稼働するまでの一時凌ぎであり、そもそも何年も続けられるものではない。限界を超えた運用は、当然ながら設備の寿命を縮める。発電設備は私企業の資産だが、社会にとっての公共財でもある。私たちは今、その公共財の将来の分を食い潰しているのだ。
2015-11-11 19:42:27少しかみ砕いて説明しよう。保守がいいかげんになったり、技術伝承が途絶えて一部の技術が失われても、これまでの蓄積があるためすぐに設備の劣化が顕在化するわけではない。だから今の現役世代は、実は直接的にそれほど困るわけではない。
2015-11-11 19:43:25設備の劣化が電力インフラ全体の劣化として顕在化し、社会のあらゆる方面に影響を与えるのは10年後くらいだろうか。そこから慌てて立て直そうとしても、一度失われた技術やサプライチェーンの再構築には仮にできたとしても何十年もかかる。
2015-11-11 19:44:32私たちの世代が間違えた選択をしても、その尻拭いをするのは私たち自身ではなく、10~50年先あたりの世代、ちょうど今の子供たちの世代ということになる。社会資本の維持に必要な費用をケチるというのは、つまりは将来の世代から資本を拝借しているということなのだ。収奪、と言う方が正確か。
2015-11-11 19:45:36電力会社の経営が安定せず、人材を確保、維持する人件費や設備の維持に必要な保守費用まで削って公共財たる電力インフラの劣化が進んでいるのは、原子力発電所が稼働していないからだ。多くの人は早期の再稼働に慎重な意見なので、社会がそれを望んでいると言っていいだろう。
2015-11-11 19:52:21ではその社会の構成員たる私たちは、自分たちが「安心」のために望み、支持している原子炉の稼働阻止がもたらす帰結をどの程度理解しているのだろうか。理解しようと努めているだろうか。子供たちの世代やその先の世代に何をもたらすことになるのか、真面目に考えているだろうか。
2015-11-11 19:53:20判断の材料となる情報が分かりやすい形で十分に提供されているとは言えず、政治やマスメディアを責めるのはたやすい。しかしだからといって将来の世代に大きな影響を与える選択をしようとしている私たちの責任が免除されるわけではなかろう。しっかりと学び、考えることを怠っては責任を果たせない。
2015-11-11 19:54:49@f_zebra 脱原発の賛成できないところのひとつは臭いものに蓋をしておけばあとは大丈夫とばかりに、原発を止めたことによって起こる副作用に見向きもしないところがあります。副作用があることを説明しそれでも対策を話し実行すべきなのですが、蓋をしろと四年間叫んだだけでした。ダメです。
2015-11-11 19:57:57@ryotada 原子力にリスクがあるのは事実です。一方、原子力を排除してそれを別の手段で補えばそれにもリスクがあります。目的はリスクの総量を減らすことのはずで、そのためにはリスクをあるなしではなく量で捉えて比較する冷静な議論が不可欠ですね。
2015-11-11 20:02:32