ストレイトロード:ルート140(16周目)
- Rista_Bakeya
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まずは、この企画の簡単な説明から。
最近フォローした方向けのルート140説明 1.短編「ストレイトロード」の世界観で毎日 2.ある法則に従ってお題決めて140文字一本勝負 3.フォロワー様からお題を頂く週もある 4.まとめは50話ごとに作成 5.毎回一場面、前後の繋がりや時系列順等の整列はほぼない 6.あくまで練習
2015-10-11 20:14:52本編
藍に雇われた初日の夜、私は購入した中古車の中で待機していた。前職に慣れた思考は日給を用意していると決めつけていたが、藍は箱を一つ持って車に乗り込んだ。「開けて」箱を渡された。頑丈そうな携帯端末が入っていた。「あなたに預けるものよ。仕事の連絡には出て」貴重な品と次の仕事を託された。
2015-10-11 20:13:19140文字で描く練習、751。預ける。 最初は一度きりの契約のはずで、端末も返されるはずだったんだ。どちらも。
2015-10-11 20:13:26助手席の窓ガラスが開くと車内の気温は急激に下がった。秋深まる山の息吹を顔全体で感じながら、藍は遠くを見つめている。私は慎重にハンドルを切る。山道を囲む落葉樹の赤色は遠巻きに見る分には美しいが、風に乗った葉の集団は視界を妨げる雨となるだろう。警戒する私の片目に早速一枚が貼り付いた。
2015-10-12 19:12:21地鳴りのような唸り声に、同行していた若い警官達が怯んだ。この路地裏は既に怪物達の庭で、その中に人間の群れが飛び込んだと知った仲間が集ったのだろう。強気な作戦は裏目に出た。「行動開始!止まったら撃って!」誤算に気づいた藍はすぐ号令を発した。この動きが想定内であるかのように、堂々と。
2015-10-13 19:09:30山頂への道は整備も幅も足らず、私達は仕方なく車を置いて徒歩で上った。私が急な坂に苦戦しながら進んでいると、先を行っていた藍が戻ってきた。早くも用事を終えたのかと思いきや、太い枝を差し出された。「これでも使ったら?」意図はおよそ理解できた。彼女に休憩をとる気がまだないことも察した。
2015-10-14 19:02:22なお、十分な準備ができてない人をノリや過信や圧力で無理に山登りへ連れて行く行為は大変危険です。という話を後で藍ちゃんは身を持って知る。と思う。
2015-10-14 19:10:28荒れた庭の奥でようやく見つけた井戸は、何枚もの板と釘で塞がれ、重しらしき石まで載せられていた。水を汲むどころではない。「これ全部外すの!?」早速藍が石を押してみたが、両手を赤くしただけに終わった。私は枯木の向こうの屋敷を見た。窓辺に佇む老婦人が求めたのは水ではないのかもしれない。
2015-10-15 19:25:08ある怪物のCGモデルが画面の中を歩いている。作成者が幾つかキーを叩くと、怪物は無数の曲線を吐き出した。藍が口に手を添えた。「紙テープみたい」私達が先日遭遇した実物は火炎を吐いていた。「体内のガスを燃やしてるのは判ってる。けど着火方法が不明だから」それで魔女に捕獲を頼みたいようだ。
2015-10-16 19:25:15140文字で描く練習、756。火炎。 これが例えば10年後なら、専門のハンターが組織から寄越される案件になるのかも。
2015-10-16 19:25:23「今度は絶対負けられないの」藍は明日の夜のパーティに着ていくドレスを求め、両親と私を一日中連れ回した。強く意識するライバルが同じ場所に招かれたらしい。彼女は迷った末に黒を基調とした装いをまとめ、親と店員の激賞を得た。自信を得た青い右目が、髪留めにあしらわれた宝石より輝いて見える。
2015-10-17 20:22:38親戚への贈り物を探す藍に、露店商が渋い色彩の敷物を薦めた。植物の茎を乾燥させて編んだものだと私が説明すると、藍は疑う顔で商品の表面を撫でた。「ただの茎?」天然素材と手作業での生産が謳い文句というが、私には機械の手も多少は入っているように見えた。藍は完全に信じていない目をしている。
2015-10-18 20:17:05私は藍に急かされながら、素知らぬ顔で車を減速させた。窓の外を気にしていた藍はやがて速度計の表示に気づいたのか、私の腕を執拗に叩いた。「遅い!何をしてるの!」私は背後に急接近していた赤い車に道を譲った。「安全運転をしています」しばらく進むと、先程の車が警察の検問で足止めされていた。
2015-10-19 20:03:55こういうネタは過去にも何度か書いているけど、似たような行動でも藍の場合は独自情報と直感を軸にして動くから、驚きを誘う一方で大人の怒りも誘う。ゼファールは知識と常識と理屈を土台にしてひらめきを掴むので、それを読み解けない藍の怒りを買いやすい。
2015-10-19 20:10:03藍はボートの舳先に座り、水面を覗き込んでいる。この湖は以前から知られているが、水中の落とし物を目で探せる程の透明度とは初耳だった。周辺の市街や工場の壊滅が水質向上の原因と聞いた私は素直に景観を楽しめない。「向こうに行って」藍が斜め前方を指した。私は黙ってボートを漕ぐことに徹した。
2015-10-20 20:17:20