本日は渋谷イメージフォーラムで映画「アンブロークン」を見てきました。以下はネタバレを含む感想です。 pic.twitter.com/KDPRdyxaU8
2016-02-07 20:57:45高卒。3月28日に初めての書籍『線上に架ける橋』が出版されました!amazon.co.jp/dp/484602122X/… 好きな本と映画について書きます。のんきな雑談アカウント。note『七紙草子』はこちら note.com/774notes
まず「日本軍を残虐非道に誇張した映画」という前評判に対する実際見た感想として、「日本軍の捕虜虐待、予想に反してすげえヌルかった」というのがあります。基本的に映画の中で、日本兵が捕虜を殺害するシーンはほぼ皆無です。セリフの中で「XX基地の捕虜は斬首した」みたいな言及があるのみ。
2016-02-07 21:01:53映画「アンブロークン」で描かれる日本軍がどれくらいヌルいのかというと、「軍事情報を集めてひそかに地図を作成していた捕虜に対する懲罰」が「竹刀で殴る。終わり」というレベルのヌルさです。何だよそれ。そんなもんそのへんの相撲部屋でもそれくらいやられるっつうんだよ。むしろ史実より甘いです
2016-02-07 21:05:55日本軍収容所の暴力がヌルく感じるのにはもう一つ理由があって、実は捕虜になる前に主人公らは爆撃機の墜落で海上を一ヶ月漂流するのですが、ここの餓死者1名の印象が強烈で、日本軍の捕虜虐待は「ブラック企業だけど、まあ無職よりいいかな。ここメシ出るしな」といった印象になってしまっています。
2016-02-07 21:11:30そもそも監督アンジェリーナ・ジョリーに「日本軍の暴力を描こう」という気迫が今イチ感じられない。捕虜になった主人公と親友が全裸でひざまずかされて、すわ斬首か!!と緊迫したらバケツの水を頭からぶっかけられて「実はお風呂でした」。何がしたいのでしょうかアンジー。史実なのかもしれんけど。
2016-02-07 21:17:41その代わりにアンジェリーナ・ジョリー監督が何に注力するかというと、主人公を虐待する収容所の所長、渡辺所長の人物描写です。ビジュアル系ロッカーのMIYAVIを配役し、「実際のところ渡辺は知的で教養のある人物でした。『美しく作られた怪物』だったのです」(パンフ)という力の入れよう。
2016-02-07 21:31:34この演出によって、この映画のテーマは「戦争」という主題が外れ、「渡辺くんは名家の御曹司だけど、親の愛情を受けずに育った美少年なので、本当はルイと友達になりたいのに暴力を振るってしまうんだ」という青春ギムナジウム暗黒パワハラBL物語に展開していきます。何してくれてんですかアンジー。
2016-02-07 21:38:09しかし実際とのところ、この「渡辺くんとルイくんの愛憎と許しの物語」がアンジェリーナ・ジョリー監督が描きたかったキモであることはおそらく疑いがない。特に渡辺に関してはアメリカの観客が「なんで俺たちは延々このビジュアル日本兵を見せられているの?」と訝しむのではないかと心配になるレベル
2016-02-07 21:44:08映画の最後に至るまでアンジェリーナ・ジョリー監督は「心の闇を背負った孤独な渡辺くん」についての描写に心血をそそぎます。「いやでもエンドロールで実際の渡辺の写真出たけどゴリラみたいなおっさんでしたよ?」というツッコミにも耳を貸さない状態です。実際、これは渡辺くんとルイの映画なのです
2016-02-07 21:49:57そんなわけで映画の感想としては、「アンジェリーナ・ジョリー姐さん、意外にも発酵している」という感想でした。でもこう言ってはなんですが、映画としては非常に面白いと思います。映像的にもストーリー的にも見るべき所は多く、興行収入も日本以外では上々だったと聞きますがむべなるかな。良作です
2016-02-07 21:53:33ただ一点付記するなら「この太平洋戦争暗黒BL映画に対して『日本軍の暴力を不当に描いている』という難癖つけてシネコン公開をさせずに単館上映に追い込んだ2015年の日本って完全に頭いかれてたんだな」という歴史的エビデンスが残ってしまいましたので、みんなで背負っていきましょう。ファイ!
2016-02-07 21:56:39