川本梅花（サッカーライター）のツイッターコラム「第１回　トラップした瞬間に勝負は決まっていた　浅野拓磨」

川本梅花＠「フットボールタクティクス」運営 @kawamoto_baika

【ツイッターコラム】「第１回　トラップした瞬間に勝負は決まっていた　浅野拓磨】（１−１）U-23アジア選手権の決勝戦、日本対韓国戦を見終わって、U-20ホンジュラス代表のゴールキーパーコーチをしていた山野陽嗣（@yoji_yamano）とGKについての話をしていた。

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（１−２）山野と話したのは、U-23日本代表の正GKとなった櫛引政敏の実力についてだった。僕は、GK経験がないので、基礎的な動きなど理論でしか分かっていなかったので、山野の話はとても参考になった。僕と山野の意見が一致したのは、大会における櫛引の一般的な評価が過剰なのでは、だった。

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（１−３）Jリーグで見ていた櫛引とアジア選手権で見た彼のプレーは、そんなに違いがないのではないのか。Jリーグに比べてレベルが低い大会だったので、櫛引のプレーがものすごくよく人の目に映ったのではないのか、という僕の疑問すべてに、明確に山野は答えてくれた。山野の指摘は明快だった。

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（１−４）２人の話が盛り上がってきたときに、FW浅野拓磨の話題になった。この試合で浅野は１点目と決勝点をゴールに叩き込んだ。「浅野ってシュートうまいよね」と僕が言うと山野は「そうなんですよ、１点目はGKキム・ドンジュンの左肩上を狙ってシュートしている。あれは止められない」と話す。

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（１−５）「それも矢島（慎也）のパスをダイレクトで打っているんだよね」と僕が述べる。僕たち２人の話はいろんな方向に飛び散って、時間がすぐに過ぎていった。僕は山野が指摘した「左肩上を狙った」ということと「あれは止められない」という言葉が頭の中の記憶庫に残った。山野は上野駅で降りる。

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（１−６）僕は山野を見送った。家に戻ったらもう一度試合の録画を見てみることにした。じっくり試合を見ていると、あることに気づいた。浅野がもたらした決勝点は、彼の最初のトラップした位置でもう勝負がついていたことに気がついたのだ。中島（翔哉）から韓国のDFの裏にボールが出される。

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（１−７）浅野は相手DFの前に体を入れてボールをトラップできる態勢にもっていく。浅野の動きを見たGKキム・ドンジュンは、ボールの動きを予想して左足に体重をかける。浅野はキムの動きとは逆方向の位置にトラップする。態勢を崩されたキムは、足を滑らせる。慌てて右に重心を移動しようと動く。

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（１−８）しかし、一度、左右に振られた態勢ではしっかと静止して浅野のシュートを防げる姿勢にはなれない。浅野は、キムの動きを見てゴール右にボールを流し込む。おそらく、キムは浅野の１点目が強烈に脳裏に焼き付いていたのだろう。だから、１点目と同じように左側にトラップする予測したのだ。

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（１−９）だが、浅野はキムが考えた方向とは逆の方向にトラップする。後手に回ったキムには浅野のシュートを止める姿勢に入る余裕さえ持てなかった。浅野がトラップした瞬間にキムとの勝負は決まっていたのである。伏線になっているのは、１点目にダイレクトでGKの左肩上を狙ったシュートにある。

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（１−１０）韓国の２人のDFの間を斜めに走り込んで、矢島のパスをダイレクトにシュートした浅野のこのプレーが、GKのキムの頭の中に住み着いて、キムの思考回路を破壊した。浅野が、トラップした瞬間に勝負は決まっていた。浅野のシュートのうまさは、ずば抜けていたのだ。　（了）